北京2008
見どころ
1.今大会の目標、チームの特徴
今回は馬場馬術(団体)、総合馬術(個人)、障害馬術(個人)と3種目すべての出場権を得ることができた。これは、1992年バルセロナ大会以来16年ぶりのこと。
【障害馬術】
残念ながら団体での参加は叶わなかったが、32歳にしてオリンピック出場4回目となる杉谷泰造選手と初参加の佐藤英賢選手の2選手が個人戦に参加することになった。2選手ともヨーロッパを拠点に国際競技会にも積極的に参加、結果も残しているので期待度は高い。具体的な目標は入賞。
個人戦への参加であるが、2人で組んでいる《日本チーム》という気持ちで臨みたい。経験豊富な杉谷選手が佐藤選手をリードし、2選手とその騎乗馬がもつすべての力を発揮することを期待している。
【馬場馬術】
悲願だった団体出場枠を獲得し8位までの入賞が目標。代表3人馬は国際競技会に出場しながらコンディションを整えてきた。なかでも法華津寛選手は今年に入ってから国際競技で優勝するなど安定して結果を出している。八木三枝子選手、北井裕子選手も馬とのコンビネーションが良くなってきている。地域予選審査会においても、1位通過のオーストラリアとは僅差の2位であり、3人馬が実力を発揮すれば入賞の可能性は充分にあると考える。また、個人戦では団体戦を兼ねている第1次予選を通過し、第2次予選(セミファイナル)出場への期待がかかる。
【総合馬術】
今回は個人1枠だが、出場する大岩義明選手はこれまでにも数々の国際競技会で、過去の日本選手を超える成績を出している。2001年からイギリスを拠点にトレーニングを積み、日本の選手が苦手とするクロスカントリーの走行を見事にグレードアップさせた。特筆すべきは、2006年にドイツで開催された馬術世界選手権のクロスカントリーで障害減点0、ジャストオンタイムでゴールして特別表彰を受けたことである。騎乗馬のコンディションも良くなっており、初出場ながら個人での入賞が期待できる。
2.日本チームの特徴、有力選手
大岩義明(おおいわよしあき)選手:総合馬術 日東光学株式会社所属
学生馬術の最高峰、明治大学馬術部出身。卒業後は馬から離れていたが、2000年のシドニーオリンピックをテレビで観て、自らもオリンピックを目指すことを決意、イギリスに渡ってトレーニングを開始した。2006年世界選手権(ドイツ・アーヘン)18位、同年アジア大会(カタール・ドーハ)では個人金メダル。オリンピックには初出場となる。
法華津寛(ほけつひろし)選手:馬場馬術 アバロン・ヒルサイドファーム所属
67歳でオリンピックに出場することで一気に注目を集めた。1964年東京オリンピックには障害飛越選手として出場、成績は個人40位であった。その後、スピード感覚を求められる障害飛越から馬場馬術に転向。ソウルオリンピックでは出場権を得たが、検疫上の問題で馬を連れて行くことができず、出場を断念した経緯がある。
八木三枝子(やぎみえこ)選手:馬場馬術 新大宗ドレッサージュチーム所属
オリンピック初出場。1994年〜2003年にかけて全日本選手権を10連覇した実績を持つ。また2007年の全日本選手権でも優勝している。これまで世界選手権、ワールドカップファイナル、アジア大会に出場した経験もある“日本の馬場馬術の女王”。
北井裕子(きたいゆうこ)選手:馬場馬術 ミキハウス所属
オリンピック初出場。実家の乗馬倶楽部で小学校6年生から馬に乗り始めた。小さい頃にはバレエを習っていたこともあり、美しい騎乗姿勢には定評がある。2007年全日本選手権2位。
杉谷泰造(すぎたにたいぞう)選手:障害馬術 杉谷乗馬クラブ所属
20歳で1996年アトランタオリンピックに出場してから、今回が4回連続出場となる。過去最高成績は2004年アテネ大会の個人15位(当時の騎乗馬はラマルーシ)。
また、祖父である川口宏一氏、父である杉谷昌保氏もオリンピックに出場した経験をもつ。川口氏は1956年メルボルン大会(馬術競技のみストックホルムで開催)、杉谷氏は1968年メキシコ大会、1972年ミュンヘン大会、1976年モントリオール大会に出場。
佐藤英賢(さとうえいけん)選手:障害馬術 明松寺馬事公苑所属
長野にある明松寺というお寺の次男。兄(賢希/けんき)、妹(泰/たえ)とともに明松寺馬事公苑の3兄弟として、小さい頃から競技会で活躍、注目されていたが、3年ほど前からベルギーに拠点を移し、国際競技に参加している。寺の住職を務める父(正道/しょうどう)は1980年モスクワ大会に向けて総合馬術の候補選手になっていた。
その他特筆すべき事項
〜 馬場馬術団体出場権獲得までの道のり 〜
当初は2007年10月にシドニー(AUS)でアフリカ・中東・東南アジア・オセアニア地域の予選競技が行われるはずだったが、現地における馬インフルエンザ発生の影響を受けて、日程が延期、場所も変更された。参加国である日本、オーストラリア、ニュージーランドがそれぞれの地域で審査会を行い、同じ審判員が巡回して審査を行うという方式。日本の人馬がいずれもドイツを拠点に活動していることもあり、日本人馬のための審査会は2008年1月にフランスのニースで行われた(ドイツでは寒さが厳しいため、少しでも気候の良いところを選択)。この地域予選審査会の結果、オーストラリア1位、日本2位、ニュージーランド3位となり、上位2ヵ国に与えられる団体出場権を獲得した。
なお、日本の馬場馬術競技団体出場は、(実際に出場すれば)東京大会以来44年ぶりとなるが、団体出場権を獲得したという意味では、1988年ソウル大会以来となる(ソウルは最終的に団体を組めず)。