長野1998
採れたて長野通信
開会式から一夜明け、各会場では本格的に競技がスタートしました。飯綱高原で行われた男女モーグル予選には日本選手が続々と登場。女子モーグルでは里谷多英選手が11位で予選突破。テレビCMで人気を集めた上村愛子選手は13位で、まずは目標としていた予選突破を果たしました。男子モーグルは二度目のオリンピックとなる三浦豪太選手が15位、原大虎選手選手が16位でともに予選突破です。
現地直送!観戦レポート アルペンスキー・男子滑降(八方尾根)
急に降り出した雪で競技は順延
取材班が男子滑降の行われる八方尾根に着いたのは8時30分ごろでした。長野市内を出発したとき、空は気持ちよく晴れていました。競技会場に到着したときは、少し曇ってはいたものの、まだ空は明るく、冬季オリンピックの中でもっとも見ごたえのある競技、ダウンヒルへの期待感にわくわくしていたのです。
ところが、午前10時ごろ。開始時間が間近に迫り、最初の前走者がスタートを切ったころから、急に雪がちらつき始めました。もちろん、すでに観客席は超満員。日の丸を振る日本人はもちろん、ワールドカップで今季絶好調のオーストリア勢を応援する旗や声援が盛り上がっていました。ちらつき始めた雪にも熱気は少しも冷めることなく競技の開始を待ちわびていたのですが…。残念ながら、午前11時30分ごろ、順延が決定してしまいました。雪の中で数時間、寒さを我慢して待ち続けた応援の人々は、落胆を隠し切れない様子で会場をあとにしていました。
海和俊宏さんも待っていました!
競技開始を待つ間、マスコミの取材者が集まる観戦場所で、海和俊宏さんとお会いしました。海和さんは、かつてワールドカップの第1シード選手として活躍した日本アルペンスキー界の功労者。次第に暗さを増していく空を心配そうに見上げながら、日本チームへの期待などを語ってくださいました。
−今日の滑降はどんなレースになるでしょう?
「先日、競技が行われるコースを滑ってみたんだけど、かなりのハイスピードコースだし、テクニカルで難しい印象でした。選手にとってはスタートからゴールまで一息つけるところがまったくないので、ハードな戦いになるでしょうね」
−日本の富井選手にはどんな期待を?
「昨日の練習で転倒しちゃったけど、さっき会って話しを聞いたらそんなプレッシャーは感じていない様子だったので安心しています。順位はより好成績が残せるといいに決まってますが、それよりも母国でのレースを楽しんで、力を発揮してほしいですね」
−海和さんも活躍した回転では木村公宣選手が好調ですが?
「そうですね。ワールドカップのポイントでも今季は4位ですから、世界中の誰が見ても文句なくメダルの有力候補です。日本のアルペン界は、猪谷千春さん以来、オリンピックでのメダルがありません。そろそろ、歴史を変える選手に出てきてほしいという期待をしています」
突然のインタビューにもかかわらず、快くお話に応じてくださった海和さん、ありがとうございました。
沢木耕太郎さんをプレス席で発見!
海和さんへのインタビューを終えても、雪は激しくなるばかり、競技が無事に開かれるかどうか、ますます心配な状況になってきました。プレス席に陣取った世界各国のカメラマンや取材者たちの表情も、だんだん厳しくなっていきます。そんな中、こころなしか微笑みを浮かべているかのような優しい表情でバーンを見つめる男性を発見。ノンフィクション作家の沢木耕太郎さんです。
独特の視点でスポーツを語る作品も多い沢木さん。今回のオリンピックにはどんな期待を抱いているのでしょうか。さっそく直撃インタビューを試みました。
−男子滑降に注目していらっしゃるのですか?
「そうですね。今回のオリンピックでは、とくに先入観をもたずに、前の夜、明日はどの競技を観戦に行こうか考えて出かけるようにしているんですが、長野に来る前からダウンヒルだけは見ようと決めていました。なんといってもダウンヒルは冬のオリンピックを象徴する種目だと思います。夏のオリンピックでいうと、陸上の100mのような」
−冬のオリンピックは何度か観戦したことがありますか?
「いえ、初めてです。(アルペンの世界でも)ぼくがちょっと知ってるような選手はみんな引退してしまっていて、本当に真っ白な気持ちで競技を見るのが楽しみなんです」
−個人的に応援している日本選手は?
「これはJOCのホームページの取材でしたよね。(はい、日本代表選手団を応援するホームページです)じゃあ、少し趣旨に合わないかも知れませんが、ぼくはとくに日本選手がどうのこうのということにはこだわっていません。ことにアルペンスキーの世界は、スポーツの中でも特殊ですよね。今日の滑降のスタートリストを見ても、トップ15の選手は5カ国だけに集中している。日本選手への期待感はありますが、それよりも世界トップレベルのレースを観戦することが楽しみなんです」
大粒の雪が顔に降りかかるのも気にせず、とても快く取材に応じてくださった沢木さん。ありがとうございました。日本選手の活躍だけにはこだわらないといいつつ、「開会式の前日、エムウエーブでスピードスケートの練習を見てきたんですが、インタビューに答える堀井選手がとてもいい表情をしていたのが印象的だった」とのこと。
この言葉、きっと活躍が期待されるスピードスケート男子の短距離陣、そして日本選手団へ、沢木さん流の温かいエールのように感じました。
現地直送! 観戦レポートスピードスケート男子5000m(エムウエーブ)
白幡圭史選手、惜しくもメダルには届かず
スピードスケート5000mでは日本期待の白幡圭史選手が7位。長野オリンピックでの日本人初の入賞を果たしました。メダルが期待されていただけに残念な気もしますが、上位3位までがこれまでの世界新記録を更新するハイレベルな戦いの中での見事なレースでした。32人中26番目に白幡選手が走り終わった時点での順位は3位。その後にオランダのジャンニ・ロメ選手が世界新記録を更新したり、それに並ぶ好タイムを出す選手が続出して結果的には7位になりました。取材班の目の前で、世界新記録や数カ国のナショナルレコードが続出した感動的なレースでした。
世界記録続出!エムウエーブの実力を証明
試合結果からも分かるように、エムウェーブは新記録を次々に生み出しています。試合開始前にタイムトライアル(前走者として)でリンクを滑った小沢晴樹くん(17歳)と関喜治くん(17歳)にエムウェーブについて聞いてみました。2人は「長野県オリンピック対策強化選手」に選ばれているスピードスケートの選手です。
エムウェーブは、彼らがこれまで体験したリンクのなかでも「氷の質が格段にいい」ということ。理由は「スピードスケートのリンクは軟らかいとスピードが出ないし、硬いと足に負担が来てすべりづらい。そのバランスがとても良くて、普通に滑るだけでも数秒はタイムが短縮できるんです。今まで滑った中で最高のリンクですよ!」。大会前から世界有数のハイスピードリンクとして注目されていたエムウエーブ。精魂こめて氷の管理をしていらっしゃる担当者の方々の努力の成果といえるでしょう。5000mの結果でリンクの優秀さを実証したエムウエーブ。これからレースが開催される500mや1000mに、ますます期待が高まります。
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