北京2008
概要・説明
8月15日(金)から8月24日(日)まで、10日間の日程で行われる。
2004年アテネオリンピック金メダリストの室伏広治が出場する男子ハンマー投は15日(金)に予選、17日(日)に決勝が、同じくアテネオリンピック金メダリスト、野口みずきが出場する女子マラソンも17日(日)に行われる。
ルール解説
陸上競技ルールの運用は、国際陸連(IAAF)と日本とで若干の違いがある。以下、オリンピックで適用されるルールなどを解説する。
(1)日本と世界で異なるトラックのマーク
トラックには、スタートやフィニッシュ用のラインだけでなく、ハードルを置く場所やリレーのゾーンなどを示すための様々なマークがペイントされている。日本と世界とではマークが違う。特にリレーのテークオーバーゾーンは、日本は緑の三角、世界はカギ形になっている。
(2)審判はほとんど地元の人たち
陸上競技の国際大会では、審判員のほとんどは、ホスト国の陸上連盟が選抜した地元の関係者。競技ルールに則って正しく運営が行われているかを監督するためにIAAFから役員が派遣されている。競技全般に関しては責任者として「Technical Delegate(技術代表)」、その下に各種目に立ち会う役員として「ITO(国際技術委員)」がいる。北京オリンピックには日本から派遣された役員はいない。
(3)トラックとフィールドの現場での抗議(規則146条−4)
トラック種目ではフライングで失格となったとき、不正出発発見装置を使っていない大会では、口頭でのアピールをすることで、審判長の判断によっては、裁定留保の状態で競技することが認められることがある。しかし北京オリンピックでは、不正出発発見装置を使用しているので、フライングの判定は覆ることはない。
フィールドでは、ファール判定に納得がいかないとき、その場ですぐに、審判長かITOにアピールすることで、その記録を計測し保全してもらうことができる。競技終了後、抗議が認められた場合にはこの記録は有効となり、認められなかったときは、記録はなかったものとみなされる。
(4)予選の組分け(規則166条−2)
予選の組分けは、ベストタイムや持ちタイムに関係なく抽選で決定される。ただし好記録をもっているトップレベルの選手(チーム)が決勝に進めるよう配慮するよう推奨されている。例えば、世界記録保持者と今季世界最高記録保持者が抽選の結果、同じ組になったときは、IAAFの競技部門総責任者“技術代表”の判断で別の組に移すことになる。
予選や準決勝では、同じ国の選手が別の組となるように組み合わせが行われる。
(5)予選後の組分けのルール(規則166条−3)
400mまでのトラック種目とリレーで、予選を終えた次ラウンドの組分けの決め方は“順位優先”の考え方で、「4組3着+4」のレースのときは、各組1着の選手の記録順でA、B、C、Dと序列が決まり、2着の記録順にE、F、G、H、3着の記録順にI、J、K、Lそしてプラスの4名の記録でM、N、O、Pと序列が決められる。そのうえで次ラウンドである準決勝の2つの組のレベルが均等になるように次のパターンで組分けされる。
ひとつの組 A D E H I L M P もうひとつの組 B C F G J K N O
(6)シードレーンの変更(規則166条−4)
レーンの決め方にもルールがある。8レーンのトラックでは、上位4人(チーム)は中央4つのレーン(第3〜6レーン)、それに続く中位の2人(チーム)は外側の2レーン(第7〜8レーン)、下位の2人(チーム)は内側の2レーン(第1〜2レーン)に割り振られそれぞれ抽選によりレーンが決まる。
先の組分け解説の2つの組を例にとると、3〜6レーンにはいれるのは、ADEHとBCFG、7、8レーンにはI、LとJ、K、1、2レーンにはM、PとN、Oとなる。
昨年までは、3〜6レーンが上位グループ、それ以外のレーンが下位グループと定められていたが、内側と外側とではカーブに有利不利があるため中央、外側、内側の3グループに分けられることになる。
(7)トラック内側に水濠がある3000m障害
3000mを走るうちに障害物を28回、水濠を7回越えなくてはならない。スタート後、フィニッシュラインを初めて通過してから各周に5個の障害物があり、その4番目が水濠であることがルール。日本の競技場では、水濠はトラックの外側に設けられているが、北京をはじめ世界の主流は内側。内側が水濠のトラックでは、スタートはバックストレートにある。スタート後、フィニッシュラインを通過するまでの200数十メートルは水濠も移動障害も越えることなく走る。フィニッシュライン通過後に最初の障害を超えることになる。2箇所の移動式障害物は、選手が1周目を通過後に審判員によって設置される。
(8)4×400mリレーバトン渡しの注意(規則170条−9)
4×400mリレーの第3、第4走者は審判の指示に従い、前走者が200mのスタート地点を通過した順序で、内側より並び待機する。その後、この順序を変えるとチームは失格になる。さらにテークオーバーゾーンの内側より走り出さなくてはならない。このときラインの線は踏んでもかまわない。
(9)リレー編成の決め方(規則170条−17)
リレーのメンバー決定は、世界では、日本のルールより柔軟で、予選と決勝の2ラウンドの場合、予選では、リレーにエントリーされているかどうかはまったく関係なく、どの種目であっても大会にエントリーされてさえいれば誰でもリレーを走ることができる。次以降のラウンドでは、さらに2名まで変更が可能。
(10)棄権は原則禁止(規則142条、170条−18)
オリンピックでは、選手が実際に出場するかを書面で最終確認する。万が一、この書類提出後に理由なく棄権すると、大会期間中、その後に行われるどの種目にも参加することはできない。同様に、予選で次ラウンドへ進出する権利を得たのに棄権することもできない。ただし大会組織委員会が手配した医事担当者の診断書があった場合は、この限りではない。またリレーのオーダー用紙提出後のウォームアップ中に怪我などのために走ることができなくなった場合、組織委員会の医事担当の診断書があれば、選手変更は可能。
(11)競歩の一発失格
北京オリンピックの競歩では、IAAFから派遣された主任を含む9名の国際競歩審判員が判定を担当する。異なる審判員から3枚以上の赤カードを出された場合、失格となるが、残り100mからフィニッシュまでの間で歩型違反が明らかな時、主任はこれまでの赤カードの枚数に関係なくその選手を失格にすることができる。
(12)フィールド種目の試技順(規則180条−5)
走幅跳、三段跳、投てき種目の試技順番は、8名に人数が絞られる4回目以降、記録が低い選手から高い順へと変更になるが、6回目でもさらに変更になるようルールに定められている。
(13)高さを競う種目の優勝決定戦の高さ変更(181条−8)
このルールは今年から国内でも適用されているが、優勝者を決めるには「同成績の選手全員が“成功した”つぎの高さ」で、もう1回試技をおこない、優勝者が決定するまでバーを上げ下げする。昨年までは、「試技する権利を失った最も低い高さ」だった。
(14)フィールド種目の制限時間(規則180条−17)
フィールド種目では、定められた時間内に試技を始めないとファールとなる。(制限時間は種目や状況によって異なるので事前にルールブックで確認してほしい)
選手が準備できてからではなく、前の選手の計測などが終わり審判の準備ができたときから時間はカウントされる。この時間は、競技場所に置かれた時計でカウントダウンされている。15秒前になると審判により黄旗が上げられ、時間になると赤旗となる。