オリンピアンズ・ストーリー
これからのアスリートに求められるのは、強さとクリーンさ
これまでもWADAでは「アウトリーチプログラム」として、オリンピック会場でブースを出したり、セミナーを行ったりと、アンチ・ドーピングを広める活動をしてきました。アスリートは今までは強くなることに集中していればよかったのですが、これからは強く、そしてクリーンであることも求められます。
アンチ・ドーピングの規定によって、居場所情報の提出や抜き打ち検査は、国際競技連盟(IF)とJADAが登録した選手リストの中から選ばれます。検査や居場所情報を求められるということは、自分がトップアスリートになった証拠だと思えばいいのです。
精神的に負担に思うこともあるかもしれませんが、私たちは、警察官ではありません。ドーピングしている人をつかまえようとしているのではなく、選手がクリーンであることを証明しようとしているのです。
おそらく多くの選手が、アンチ・ドーピング委員や検査員に対して、とても怖いイメージを持っているのではないでしょうか。実際には抜き打ち検査の時でも対象選手が練習中だったら、検査員の同意のもと、選手がすでに予定していたトレーニング、クールダウン、医学的処置などを継続し、その後に検査を受けることができるのです。
自分が、そしてスポーツ界がクリーンで輝けるように
アテネオリンピックでは、ハンマー投げでハンガリーのアヌシュ選手が金メダルを剥奪されました。見ている人にとっては、ショッキングなことだったと思います。室伏選手は、本来ならもっと気持ちよく金メダルを獲得できていたはずです。選手同士は外国の選手も含め、仲良しでライバルなのですから、あのような結果はすごく残念で淋しいことでした。応援している人たちをがっかりさせる行為です。
本来メダルというものは、肉体と精神を極限まで鍛えて練習した結果であるはずで、このふたつがあるからこそスポーツは面白いのです。表に見える結果は、勝ったか負けたかということですが、その裏には自分に勝ったか負けたかという問いかけもあるでしょう。今後はアンチ・ドーピング活動の一環としてセミナーなども行いますが、試合にも自分にも勝って、もっとキレイに輝くために、みなさんに聞いてほしいと思っています。
終りにもう一度書きますが、検査官はあなたがドーピングをしていないことを証明してくれるために来るのです。証明されれば、みんなに自分がクリーンであることをアピールできます。
アスリート一人ひとりの意識からPlay Trueの輪を広げることはサポーターや、企業のバックアップを増やしていくことにもつながるのです。
1966年(昭和41年)東京都出身。日本大学卒業。1992年バルセロナ大会と1996年アトランタ大会の柔道女子72kg級に出場し、両大会で銀メダルを獲得。
現在日本大学法学部講師、日本大学柔道部女子監督。
日本オリンピック委員会評議員、アスリート専門委員会委員、女性スポーツ専門委員会委員、アンチ・ドーピング委員会副委員長。
日本オリンピアンズ協会理事/日本アンチ・ドーピング機構理事/世界アンチ・ドーピング機構アスリート委員会委員
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