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TEAM JAPAN DIARY

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2010/11/19

体操男子団体総合は銀メダル、強さと弱さが浮き彫りに

文・折山淑美

10月にオランダで開催された世界選手権とは別のメンバー構成で臨んだ体操男子。地元開催で威信をかけてきた中国に対しては苦しい戦いが続いた。だが競技初日の団体では、中国に11点差をつけられたものの、3位韓国を5点弱抑えて銀メダルを獲得。さらに個人総合ではベテランの水鳥寿思選手が、10月の世界選手権個人総合で6位になったル・ボゥ選手(中国)に0.150点まで迫る3位になって銅メダルを獲得した。
 Tr2010111300871 団体では銀メダル(共同)
 Tr2010111500720 個人総合で銅メダルを獲得した水鳥選手(共同)

しかし種目別になると、初日はあん馬の出口諒財選手の4位が最高でメダルなしという結果に。そのために競技最終日の11月17日は、平行棒と鉄棒を4位で通過した桑原俊選手と鉄棒3位通過の水鳥選手が「自分の得意種目でメダルを!」と高い意識で臨んだ。

日本選手にとって最初の種目だった平行棒は、トップバッターの個人総合優勝のテン・ハイビン選手(中国)が失敗して13点台に止まるという波瀾の幕開け。その後の選手も得点を伸ばせない展開になり、最後の桑原選手は予選と同じ15.450点を出せば銀メダル獲得となるはずだった。だが彼は、序盤の倒立がズレてしまうミスで流れに乗り切れず14点台の低得点で6位に終わった。

「思い入れが強い種目でもある平行棒で失敗して、逆にそこで気持ちが切り替わって鉄棒に入れました。アップ場へ帰ったら、寿思さんから『鉄棒では絶対に二人でメダルを獲るぞ』といわれて、メダルに対する意識もそれまで以上に高まってきて。何色でもいいから獲りにいこうと思いました」

こう話す桑原選手の鉄棒の試技順は2番手。トップバッターは優勝候補のチャン・チェングロン選手(中国)だった。彼はいきなり16.225点と高得点を出したが、桑原選手も負けていなかった。「着地で『止まれ!』と思ってグルグル手を回したところ以外は何も覚えていないんです」というほど集中した演技で、15.725点を出したのだ。

その結果、桑原選手は銀メダルを獲得。最後から2人目の演技者である水鳥選手も、予選と同じ15.750点を出せばダブルメダルになるところだった。だが「アップで入りの技がおかしくなって、その不安を持ったままでてしまった」と、最初の離れ技の後のミスで流れに乗れず、14点台で5位に止まってしまったのだ。

「団体と個人総合ともに90点前後の得点が取れたし、いい演技が出来たという収穫もあったから、まだまだ世界と戦えるという自信がつきました。でも今日のように、メダルを獲るべきところで獲れないというのはまだまだダメなところですね。今後の課題になってくると思います」水鳥選手は苦笑しながらこう話した。

一方、桑原選手は、「これが最後の国際大会になるかなという思いもあったけど、ここでメダルを獲得したことで、自分の体操人生の目標でもある世界選手権やオリンピックへ向けて勢いがつく感じになったかな、と思いますね。今練習している技もいくつかあるし、それを入れれば価値点も0.5〜0.6点くらい上がるから、(来年の)世界選手権までにはそれを入れられるように日々頑張っていきたいと思います」と笑顔で話す。
 Tr2010111700886 桑原選手の鉄棒(共同)
 Tr2010111700890 水鳥選手の鉄棒(共同)

今大会、10月の世界選手権と代表メンバーを代えたのは、過去にも無理をさせて翌年の春先の滑り出しが悪くなった選手もいたからだという。そんな試みの中で立花泰則監督は、「この大会では日本のいいところと悪いところがハッキリでたのが収穫」という。

「この大会の団体で6-5-4(メンバー6人中、各種目に5人が出て、そのうち得点の高い4人の合計点が団体得点として加算される方式)で戦った合計点が、世界選手権で3位のアメリカの6-6-4の得点を上回っていたのはひとつの収穫です。ただ、個人総合や種目別でそうだったように、自分の武器となる種目で得点を積み重ねられないこともあったので…。個人個人がもう一度練習を考え直して、ここ一番で自分の武器を出し切れるようにしていく必要があると思います」

世界選手権個人総合優勝の内村航平選手は、演技の途中でも自分の調子や流れをみて、技の難度を微調整する能力を持っているという。だがこの大会に出た選手はそのあたりがまだ足りないというのだ。

今大会で日本は、層の厚さを確かめることができた。それをさらに分厚いものにして、地元開催である来年の世界選手権東京大会では団体で打倒中国を果たすこと。その目標を達成するためにも、世界選手権代表にはなれなかったアジア大会組の選手たちが、この大会で見つけた課題を克服して、これまで以上の厳しい代表争いにしていく必要があるだろう。アジア大会はそんな選手達の心を燃え上がらせるキッカケになったはずだ。

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