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TEAM JAPAN DIARY

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2010/11/13

ライフル射撃松田知幸選手、予選8位から追い上げての銅メダル

文・折山淑美

 

「よりプレッシャーがかかる中で結果を出さなければいけないという思いもあって…。点を狙いすぎて空回りして得点が上がらないという結果になってしまいました。射撃特有のメンタルなものが出てしまいましたね。調子は良かったけど、最後の最後のトリガリングの部分で力が入ってしまい、グラム単位のズレが出てしまったんです」

 

冷静に試合を振り返る松田知幸選手。彼は 今年の世界選手権で2冠を獲得して、早々とロンドンオリンピック代表を決めている選手だ。だが、優勝を期待された大会初日の50mエアピストル予選では、決勝進出ぎりぎりの8位という結果に終わった。1回に10発撃つシリーズ6回の合計は556点。トップには10点差をつけられる苦戦だった。

 

だが「メダルを狙っていて8位だったので、もういくしかないと思っていた」という決勝になるとガラリと変わった。10射中10点台を3回出し、9.9点も3回という安定した射撃で、決勝ラウンドダントツの1位となる97.7点を出して予選との合計得点で、3位まで順位を上げたのだ。

 

「予選で3位につけていた選手が5点台を出したのも知っていたし、他の選手も8点台を出していたから、『もしかしたら』と思いました。終わってみるまで結果はわからなかったけど、上の選手が落ちてきてくれたので何とか勝負できたというところですね。満足はしないけど、8位からスタートしてメダルがれたから最低限のことは出来たかなと思います」

 

この試合には、北京オリンピック50m優勝の泰選手(韓国)や、同10m優勝の廃選手(中国)など、W杯などで活躍する選手も多く出場していた。世界選手権優勝で一気に注目されてプレッシャーがかかり、なおかつ強敵が揃っているという中で銅メダルを獲得できたという結果は、これからのことを考えたら自信になるともいう。

 Tr2010111300691 予選8位から一気に追い上げた松田選手(共同)

 

神奈川県警に勤務しながら競技をする松田選手は、射撃の練習時間を豊富に取れない環境だというが、これからもそれを変えるつもりはないと言う。「射撃が出来ない分、日常のあらゆることがそれ以外の練習だと考えるようにしています。何か嫌だなと思っても、それをやることでメンタルの練習になるし、子供とキャッチボールをするのも肩回りを柔らかくするトレーニングだと思えるし。日常生活の中で色々利用できることがあると思うんです」

 

ただ漫然としてW杯などに出るのではなく、戦うために出ようと思うようになって以来、365日射撃のことを考えようとしてきたことの答えが、決勝の土壇場で順位を上げられたという形になって表れたのではないかという。「2位になった泰選手とは6点弱の差だけど彼は世界記録も持っているし、オリンピックで金メダルもとっているから絶対的な経験値の差があると思っています。今回のようにメディアに注目されてプレッシャーを感じながらも結果を出していって経験値を高め、彼らと対等に戦えるところまで持っていきたいですね」

 

サッパリとした表情で冷静にこう話す松田選手は、10mエアピストル(14日実施)での発奮を誓っていた。彼にとってこのアジア大会は、世界チャンピオンを経験するという新たな立場になって臨む、最初の大会となったのだ。

Tr2010111300713 意味ある銅メダルを獲得した松田選手(共同)

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