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TEAM JAPAN DIARY

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2010/07/07

「拠点」の利活用について、ナショナルトレーニングセンターセミナー開催

オリンピックに向けた「拠点」の利活用について情報共有を図ろうと、JOCは6月25日、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で「ナショナルトレーニングセンター(NTC)セミナー」を開催しました。味の素トレセンには、「拠点ネットワーク・情報戦略事業」という部署があり、こういった選手強化に役立つセミナーを開催したり、「NTC競技別強化拠点」と呼ばれる全国22か所に指定された強化拠点間の連携を促す様々な活動を行っています。今回のセミナーでは、オリンピック現地でのサポート「拠点」、オリンピックに向けた国内の強化「拠点」、諸外国の強化「拠点」、高地トレーニング「拠点」の4つの視点から、幅広い報告が行われ、参加した約90名の強化スタッフらは熱心に聞き入っていました。

Dsc01731 多くの強化関係者がセミナーに参加した

第1部は、バンクーバー冬季オリンピックに向けて日本スケート連盟が現地に置いた「拠点」について、湯田淳氏(同連盟スピードスケート強化部委員)が解説。同連盟は、バンクーバー対策特別プロジェクトの一環として、スピードスケートの会場から徒歩10分の場所に、2009年7月から現地での情報・医科学拠点「JSFサポートハウス」を準備しました。大会中は、管理栄養士が作ったおにぎりやカレーなどを振舞ったほか、日本で使い慣れているエルゴメーターやバランスボールも設置し、快適なトレーニング環境を設置。また用具メンテナンスや、滑走映像のチェック、スタッフミーティングなどを行う拠点としても活用しました。湯田氏は「選手は日本食が恋しくて選手村のレストランも大会後半となると使わずに、サポートハウスに食事のケータリングをお願いしていた。また、選手にとって有益な情報やサービスを提供できたと考えられる。ソチ大会での環境整備も考えたい」と話しました。

Yuda_2「JSFサポートハウス」について説明する湯田氏

第2部は、競技別強化の中心となるNTC競技別強化「拠点」について、スピードスケートとスキー・ジャンプの現場から報告がありました。まず結城匡啓氏(日本スケート連盟スピード強化副部長)は、エムウェーブ(NTCスピードスケート強化拠点)を利用する立場から、その利点を紹介。経済性や利便性のほか、キックのフォームを固める練習台や滑走速度や滑走コースを測定できる設備など、NTC競技別強化拠点にしかない機能が充実するとなおよいと提案。さらに、それらの機能を高品質なものにしていくためには、冬季の専任スタッフを配置していく必要があると訴えました。

Photo エムウェーブは選手の強化拠点として利用されている(提供:アフロスポーツ)

続いて速水達也氏(全日本スキー連盟情報・医・科学部委員)は、大倉山ジャンプ競技場(NTCスキージャンプ強化拠点)での強化について報告。骨格のバランスをチェックするなどのコンディショニングサポート、高速度カメラによる飛行姿勢撮影などの科学サポート、体組成測定などのメディカルサポートを複合的に行っていることを紹介しました。「選手の感覚と実際の運動の違いを分析し、いかに選手に伝えるかが大切」と、医科学サポートを有効利用していく拠点活用の方向性を話しました。

Ookurayama 充実した医科学サポートを行える大蔵山ジャンプ競技場(提供:アフロスポーツ)

第3部は、JOC情報戦略部会の河合季信氏が「諸外国における『拠点』の利活用」と題し、ショートトラックの事例を報告。中国やドイツのトレーニング拠点を例に、施設の新しさや豪華さではなく、機能の高度化が必要だと指摘しました。また拠点の活用法として、選手の発掘・育成・強化の拠点となるだけでなく、国際大会の開催や海外チームの合宿受け入れを行い、海外選手に関するより多くのデータを蓄積・分析することでトレーニング目標や指標を持つことが出来るといったメリットもあると述べました。また、現地サポート拠点の機能としては、NTC/拠点機能の提供と競技場面に特化したパフォーマンス促進の側面があると紹介されました。

最後は、高地トレーニングについての報告がありました。NTC高地トレーニング強化拠点に指定されている「蔵王坊平アスリートヴィレッジ」について、山形県上山市役所の伊藤智彦観光課主査が紹介。約1kmのエリアにコンパクトに施設があることや、低酸素室、乳酸測定装置など高機能な設備を取り揃えていることを紹介しました。

Photo_2室内トレーニング室も完備するアスリートヴィレッジ

さらに高地トレーニングの科学的背景について、禰屋光男氏(東京大学大学院総合文化研究科)が報告。まず高地トレーニングの基礎知識として、2000〜2500m以上の高地が持久力向上には必要なものの、人工低酸素の環境でも代用できることを紹介。さらに「飛騨御嶽高原高地トレーニングエリア」で行った実験について報告し、結果として、持久力(ローパワー)向上のためには10時間以上の滞在を3週間続ける必要がある一方で、ミドルパワーの向上や高地での試合環境に慣れるためであれば10日程度でも効果が出る可能性があると話しました。これからはマラソンなど持久的な競技だけではなく、球技種目など他の競技でも高地トレーニングの活用を考えていく必要がありそうです。

Neya 高地トレーニングの科学的背景について話す禰屋氏

「拠点」をテーマに、約5時間にわたり行われたNTCセミナー。選手の育成そして強化のためには、さまざまな「拠点」の機能を充実させ、有効活用していくことが不可欠であることを痛感させてくれるセミナーとなりました。

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