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2010/11/25

ホッケー女子 ロンドンオリンピック出場権獲得ならずも、意味のある銅メダル

文・折山淑美

 

「今日は本当は10点以上取ることを目標にしてやったけど、立ち上がりでなかなか得点できなかったのがいけませんでしたね」20日のホッケー女子、対タイ戦。80で圧勝しながらも、ポイントゲッター千葉香織選手の表情には喜びはなかった。前日の対中国戦は13で敗れた日本にとって、この試合は大切なものになっていたのだ。それは勝ち負けではなく、何点差をつけて勝つかということだった。

 

ホッケー女子はこの大会の結果に、2012年ロンドンオリンピックの出場権がかかっていた。前回のドーハ大会では中国に次ぐ2位だったが、出場を獲得して北京へと駒を進めたのだ。今回も当然、目標はそれしかなかった。

 

その出場も、大会前には1枠と言われていたが、広州入りしてから2枠になったという朗報が届いた。優勝しなければいけない条件から、決勝へ進出すればロンドンへの切符が手に入ることになったのだ。そのためには、7カ国総当たりで戦う予選リーグを2位以内で通過しなければいけない。1位と2決勝へ進出できるが、3位になれば4位との銅メダルマッチにしか進出できないからだ。

 

中国戦を終えた時点で日本は3位。翌日の中国対韓国戦の結果も重要だが、ともに全勝ながら得失点差で2位になっている韓国との得失点差は9点。リーグ戦最後の韓国戦を前に、得失点差で韓国に並んでおきたい。そのラストチャンスが、この対戦での大量得点だった。

 

だが試合では点を取らなければという気持ちが空回りし、終始攻め込みながらも初得点は開始20分までなく、前半は2点しか取れなかった。後半は怒濤の攻めで80までにしたが、得点のチャンスであるペナルティーコーナーを18回もらいながら、4回しかゴールを割れなかったという数字が、その戦いぶりを表していた。ディフェンダーながら積極的に攻撃参加していた小野真由美選手も、「立ち上がりは平常心でやっていたつもりだったけど焦りがあったかもしれない。相手が(攻撃を)く展開に持っていったのでやりにくくなり、攻撃のリズムが作れませんでした」と反省する。

 Tr2010112000719 タイ戦でシュートを放つ千葉選手(下)(共同)

  

安田善郎監督はこう言う。「あんなゲームではダメですね、相手が引いているのに何もできない。攻撃でもゴール前で短いパスを使って21を作るようにしていけばいいが、点が入らないから焦ってしまって戦術のないプレーをしてしまっていた。ペナルティーコーナーでも、相手が集まっている真ん中へ打ち込むだけになって。後半にはポイントをずらして得点をしたけど、もう少し工夫しなければダメですね」

 

前日の中国戦で主力のひとりである三浦恵子選手がアキレス腱を断裂してしまったほか、けが人多いというチーム事情もある。だが千葉選手は「中国との試合でも前半でポンポンポンと3失点してしまったけど、それ以外は自分達のプレーが出来ていたし、内容的には負けているとは思えなかった。敗れはしたけど、みんなも前向きの気持ちでいます」と話した。

 

北京へ向けて日本女子チームは実績を積み上げ、世界とも戦える力をつけてきた。北京では10位に終わったが、チームを率いた恩田昌史監督は当時、「10位だったけど、すべてが紙一重の試合だった。結果は出せなかったが、それまでの4年間で世界と戦えるまでになった自信は選手の心の中にも残るはずだ」と話した。その自信は、新生日本代表チームに残っている、北京代表組がしっかりと伝えようとしている。北京でもエースだった千葉選手は「北京で得た自信もある。若い人中心のチームになってまだまだ経験は足りないが、私たちがやってきたことは伝わっていくはず」と期待を込める。

 

キャプテンの山由佳選手は韓国戦に向け、「まだ調子が上がって無いからつけ込むはあると思う」と話した。安田監督も「スタミナは後半になるとガタっと落ちているから、前半で出来るだけ競って後半勝負をかければ勝てる」とゲームプランを語った。

 

22日の対韓国戦。たなければいけない日本は最初から仕掛けてゴールを狙った。だが韓国の守りは固く、前半は00で終わった。後半に入ると開始6分に韓国は、最初のペナルティーコーナーのチャンスを生かしてリードした。それからも日本は攻め続けたが、焦りもあってペナルティーコーナーを得ても得点に結びつかず。逆に終了5分前に隙を突かれダメ押しの得点を与えてしまった。02での敗戦。安田監督は「韓国の方が上だった。技量とパワーで勝っていて、点を取ることを知っている。日本選手は最後のところで余裕がなかった」と敗戦の弁を語った。

 Tr2010112200744 韓国戦で攻める永山選手加奈選手(共同)

 

目標だったオリンピック出場を取れなかった日本チーム。24日にはインドとの3位決定戦に臨んだ。攻め込むことが多い展開ながら、なかなか得点を決められずに延長入り。7分間のピリオドの残り39秒で、「ペナルティーコーナーを取ったらこうしようと監督から言われてた」というパターンで眞鍋敬子選手がペナルティーコーナーからゴールを決めて勝利をつかんだ

 

山本選手は「ここで表彰台に上がると上がらないでは気持ちの問題違う。それに次のオリンピック(最終)予選のシード順位にも関係するから、ここでインドに勝っておく必要があった」と話す。

 

この試合が日本代表最後の試合のつもりだったから、勝ててうれしいと話す小野選手は「今回も証明したように、アジアのトップとは互角にできているから、最後の最後で得点を取れる決定力をつけるのが課題。若いチームだけど、それは身につけてくれるはず」と今後のチームに期待する。またエースの千葉選手は、「若い選手が多いので可能性はある。まだ最終予選までは1年半あるのでこの悔しさを忘れずにぜひとも勝ちたい」と決意を語った。

 

安田監督も「こういう厳しい戦いの中でメダルを獲ることで、個人の意欲も高まる。そういうのが大事なんです」と、若い選手たちが経験を積めたことが最大の収穫だという。アジア大会を終え、選手たちの気持ちは2012年の5月から6月にかけて岐阜県で開催予定の、ロンドンオリンピック最終予選へと向かい始めた。

 Tr2010112400720 インドを下し喜ぶホッケー女子のメンバー(共同)

 

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