2010/02/19
立て直しに成功の小平奈緒、5位入賞〜スピードスケート 女子1000m 決勝
文:松原孝臣
2月18日、リッチモンド・オリンピック・オーバルで行なわれたスケート・スピードスケート 女子1000mの決勝は、日本から出場した4人の選手にとって、四者四様、表情の分かれる試合となった。
この日、日本選手最上位の結果を残したのが小平奈緒。15組目に登場した小平は、スタートすると、伸びのよい滑りを見せる。最後の直線でも切れは失われず、1分16秒80でゴール。この時点で2位につけ、その後3人に抜かれたものの、5位入賞を果たした。
3位とのタイム差はわずかに0.08秒差。
「100分の8秒が悔しいですね」
小平はそう語りつつも、「滑りたいように滑ることができました」と、納得の表情を見せた。
「力を出し切れた」と笑顔の小平選手(写真提供:共同通信)
小平は、16日の500mでは、初のオリンピックに硬くなったことから、思うような滑りができずに12位に終わっている。
「(500mが)終わった夜は悔しくて寝付けませんでしたが、2位に入ったベルリン大会(2009年ワールドカップ第1戦)の映像を何度も見たりして、気持ちを切り替えて1000mに臨みました」
立て直しに成功しただけに、満足そうな表情だった。
500mで5位入賞した吉井小百合にとって、1000mはその日と対照的な表情を浮かべる日となった。スタートからいつもの伸びを欠き、取り戻すことなくゴール。タイムは1分17秒81で15位。吉井はゴールすると、あふれる涙になすすべもなく膝に手をついた。
吉井選手はレース後に涙を流した(写真提供:共同通信)
コンディションは完璧だったと言う。
「すごく乗り切れませんでした。レース自体、覚えていません」
涙ながらに吉井は話した。勝負をかけていた1000mである。まして、500mで手ごたえを得て、「メダルを」と挑んだレースでのこの結果だ。衝撃の大きさはうかがい知れない。
500mの17位に続き、34位に沈んだ岡崎朋美は、原因をこのように説明した。
「合うエッジが見つからなくて、ずっと道具と戦っているような状態でした。悔いが残ります。能力を発揮できませんでしたから」
道具に不安を覚えていては、試合に万全の状態で臨むことはできない。岡崎にとって、5回目のオリンピックは、不本意な大会に終わった。
岡崎はこう続けた。
「新しいエッジをワールドカップで試してみたいですね。(2016年の)ソチ大会にも出られたら出たいです」
「次のオリンピックも出たい」と向上心を持ち続ける岡崎選手(写真提供:ロイター/アフロ)
意欲には一切、衰えは感じられない。
35位の最下位に終わった15歳、髙木美帆は、釈然としない表情を浮かべていた。
「初めてオリンピックで滑ってみて、いろいろ感じることがありました。言葉で言うのは難しいんですけど、悔いが残ること、いい経験になったこと、思い残すこと、といった感じです。スタートに立つまでの感じはいつもと同じつもりでしたが、でもいつもと違っていたのかなあとも思います」
感じ、と何度も繰り返した。感覚的な部分で、好調のときとは違ったのだ。
髙木選手にとって初めてのオリンピックは「いい経験になった」(写真提供:ロイター/アフロ)
こうして、それぞれにレースを受け止めて、1000mは終わった。
4人の選手の滑りと言葉に改めて実感させられたのは、コンディションは無論のこと、気持ちもまたパフォーマンスを大きく左右するということだ。
特に、切り替えに成功した小平、おそらくは気持ちの入りすぎた吉井を見ていて、そう思わされた。髙木もまた、やはり初出場ならではの緊張があっただろう。
岡崎を除く3選手は、次のレースが控えている。この日の結果をどのように受け止めて、勢いをつなげるか、あるいは立て直すかが、これからの鍵となる。