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アテネ2004


スペシャルコラム

なにごとにも揺らがない芯の太さを持とう

原田裕花さん

アテネ大会の女子バスケットボールの試合が8月24日に終了し、日本は最終的に10位に終わった。
24日の9-10位決定戦の相手は中国。出だし、日本は選手の動きが鈍く、疲れが出ているように見えたが、それは中国も同様のこと。 第1ピリオドは12-20と離されたが、第2ピリオドに入って運動量が上がりディフェンスが機能し始めた。前半戦を29-30と1点差にまで詰めたが、内から攻めに出ると思われていた中国が、外からの攻撃で走って得点を重ねるということが目立った。
後半の第3ピリオドは日本のディフェンスが良くなり、速さが出て、若手もよく頑張った。中国に日本の速さが上回って3点差に詰め寄ったときに「これはいける」と感じたが、第4ピリオドで中国の選手のシュート率が上がり、逆に日本はディフェンスで中国を苦しめることができず、リズムが崩れたまま63-82で時間切れとなってしまった。

日本は点差が出ても相手についていく粘り強さがあるので、第3ピリオドでは「行ける」と思ったが、その直後の第4ピリオドは完璧に中国にペースを奪われてしまった。参加国全体では中国をはじめアジア勢は下位にとどまったが、せめて日本はアジアのトップにいたかった。
初戦の相手ブラジルに、日本は食いついていって「行けるぞ」と思うことが第1ピリオドにあった。
バレーボールの日本対ギリシャ戦では地の利のあるギリシャ相手に、第1セットをなんなく取りながら第2セットを落とす場面があった。結局勝ったけれども決して楽な勝ち方ではなかった。
柔道の谷亮子選手は、アトランタ大会では決勝戦を残して笑顔を見せ、銀メダルにとどまった。その彼女が、シドニー大会では決勝に残っても「まだ通過点」とばかりにしっかりと前を見据えて決勝に臨み、見事金メダルを手にした。
1戦1戦が大事だと心に言い聞かせていたはずだし、それ以外はないはずだった。しかし「行けるぞ」と思ったその一瞬、相手のモチベーションが自分より上回っていたのではないだろうか。メンタルも100%でなく120%以上の力がオリンピックで戦うためには必要なのだ。

今回バスケットボールの解説のためにアテネに来ているが、ギリシャ戦は凄かった。ホームの力で会場は日本へのブーイングの嵐。そのなかにも、日本を応援する姿が見えた。話を聞くと特にバスケットボールのファンというわけではなく、きっと地元が大騒ぎをしていることだろうと駆けつけてくれた日本の方たちだった。試合終了後、試合の内容を話し合っている声が聞こえてきた。実際に試合を見るとバスケットボールの面白さがよくわかったというのだ。そうなのだ。一人でも多くの人にバスケットボールの試合を見てもらえるように頑張ることが私の仕事。しかし仕事とはいえ負けている時の解説は、悪いことの方が多いので辛い。

女子レスリングの試合を見た。やはり世界はそう簡単に頂点に立たせてはくれないのだ。その中で吉田沙保里選手は圧倒的な強さを見せ、勝利の喜びを宙返りで表現したことが印象的だった。この吉田選手や2大会連続金メダルの柔道の谷選手、3つのメダルを獲得した水泳の北島康介選手など勝者に共通していると思えるのは、どんなことがあっても動じない度胸と芯の太さを持っているということだ。

残念な結果に終わってしまった選手、解説が辛いと思ってしまう私。勝者の精神力をいただこう。

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