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TEAM JAPAN DIARY

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2011/01/01

JOC/NF国際担当者フォーラム、今年度は「人材」に焦点を当てて開催

スポーツ界での日本の国際力を高めようと、JOCは12月20日、人材や組織強化のための具体策を話し合う「平成22年度JOC/NF国際担当者フォーラム」を、味の素ナショナルトレーニングセンターで開催しました。各競技団体(NF)の国際担当者約70名が参加。来年度から始まる「国際人養成事業」について説明したほか、さまざまな「国際戦略の事例」を担当者自身が話すなど、様々な国際力強化へ向けた取り組みが紹介され、有意義な情報共有の時間となりました。

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開会にあたりJOCの竹田恆和会長が「2011年はJOC創立100年、日本のスポーツが国際化してから100年の節目となります。2016年のオリンピック招致が残念な結果に終わったことの1つには国際的に活躍できる人材の不足があり、世界での発言力強化が必要だと痛感させられました。このフォーラムでの成果を各競技団体に持ち帰り、国際戦略をもう一度見直す機会にしていただきたいと思います」とあいさつ。続いて水野正人JOC副会長が「国際化のためには、人が重要です。人と人がいい関係を作らないと何も動きません。世界で日本の立場を強くするために何が必要か、考える機会にしましょう」と呼びかけました。

■2011年度から開始の「国際人養成事業」を紹介

初めに、前原正浩JOCゴールドプラン副委員長が、来年度から始まる「国際人養成事業」について説明しました。この事業は、JOCが策定したゴールドプランのひとつの目標である、競技力向上につながる「国際力の強化」が必要だとして計画されました。前原副委員長は「これまでスポーツ指導者らの海外派遣を行ってきましたが、来年度からは国際競技連盟(IF)、アジア競技連盟(AF)などの役員として活躍する国際人養成事業も実施するよう計画しています。人脈形成の拡大、情報の収集、発言力の強化、プレゼンスの確立、IF、AFでのポジションを獲得することなどは、すべて競技力向上に繋がっていきます」と説明しました。2011年度は、NFやJOCの推薦者でかつ、国際競技連盟の理事や委員の候補者などを対象に、7月から10月にかけて、1コマ75分の授業を80コマ行う予定です。カリキュラムは、スポーツ組織の基礎知識、国際戦略やスポーツ外交について学ぶほか、コミュニケーション実習としてビジネスメールの書き方、マナー・プロトコール講座など実践的な内容を行う予定です。

最初のプログラムでは、「国際人養成事業」の体験授業として、英会話学校「ベルリッツ・ジャパン」Alex De Vile氏によるコミュニケーション実習が行われました。「英語でのコミュニケーションに必要なものは、55%がVisual(態度、ジェスチャー、目線、表情)、38%がVocal(話し方やアクセント)、8%がWords(語彙力)です。単語はもちろん大切ですが、それ以上にVocalとVisualが大切になってきます」とVile氏。授業はすべて英語で行われ、センテンスに合わせてジェスチャーを考えて話すなど実践的な練習が行われました。またプレゼンテーションについて「冒頭の3分で話すことを覚えておく、鏡の前で練習する、録画して練習する」などのノウハウを紹介し、「プレゼンテーションにおいては、目に見えるコミュニケーションが非常に重要になります」と結論付けました。

■青年海外協力隊・スポーツ分野の派遣の実態

次に、「青年海外協力隊・スポーツ分野の派遣の実態」として、(独)国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊事務局の北野一人次長が説明。青年海外ボランティア(20〜39歳)とシニア海外ボランティア(40〜69歳)のうち、スポーツ分野での派遣は、柔道や空手の指導者などが中心で、国民の健康増進や競技レベルの向上などの面で貢献していると紹介。2007年〜2010年までに28職種、300名を超えるスポーツ分野への派遣が行われました。北野次長は、自身がモルディブへ水泳指導で派遣された経験を交えて「プールの無い国だったので、海にロープを張ってコースを作成。モルディブ初の競泳選手を育て国際大会に派遣することで、開発途上国の若者が海外の若者と交流する良い機会を作ることができました。スポーツを通じた国際交流の楽しさや意義を、若い競技者の方にも伝えてください」と話しました。また、卓球指導者の派遣前研修について(財)日本卓球協会の木村興治副会長(JOC常務理事/国際専門委員長)は、国際卓球連盟が作成した指導要領を用いた研修を行い、国際的レベルの指導者を派遣していることを説明しました。

■パネルディスカッション「国際戦略の事例」

続いて、パネルディスカッション「国際戦略の事例」が行われました。パネリストには、(財)日本バレーボール協会国際事業本部の下山隆志部長、ラグビーワールドカップ2019組織委員会の徳増浩司事務局長、国際スケート連盟の平松純子理事が登壇し、JOC国際専門委員長の木村常務理事が司会を務めました。

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下山氏は、多くの国際大会を日本で開催している経験から「大会の準備の段階で、IFの意向を理解することが重要で、そのためにIFに多くの役員を派遣し、日頃からメールするなどコミュニケーションを大切にしています。その上で、開催地のボランティアの方々にIFの意向を理解してもらって運営していくことが大切です」と話しました。

徳増氏は、ラグビーワールドカップ招致の成功事例をもとに「招致活動はコミュニケーションがすべて。3年がかりで、海外からの情報収集、海外への情報発信、コミュニケーションと、段階を踏みました。日本は海外では思っている以上に知られていないので、相手に飛びこんで日本を理解してもらうよう心がけました」と話しました。

平松氏は、国際スケート連盟の技術役員として長年にわたりルール改正を担ってきた経験から「選手時代の人脈から始まりコツコツと人脈を築いていきました。技術委員、理事となれたのも、海外の方々と頻繁にメールや会話をするうちにサポートしてくれる方が出来たお陰だと思います。ルールを改訂する技術委員の立場になれたことで、ルールが変更された背景などを日本の選手や役員に説明することが出来ました。採点競技においては、正しい情報が入らないと正しい強化の方向を向くことができないので、技術委員や理事としての立場が生きたと思います」と話しました。

また英語を母国語としない日本人にとってネックとなる国際会議については、下山氏は「事前に鏡の前で話すなど準備し、質問も予測して英語での答えを用意しておく」、徳増氏は「事務局内にも英会話教室を行って強化した」、平松氏は「発言するタイミングが難しいので、事前に自分の意見を周りに伝えておいてフォローしてもらえる体制をつくる」など、それぞれの工夫を紹介しました。

■スポーツ・ツーリズムの推進について

最後のプログラムでは、「スポーツ・ツーリズムの推進について」と題し、観光庁観光地域振興部の田端浩部長が、観光庁の活動を紹介。観光庁では、2020年までに訪日外国人を2500万人にすることを目標とした観光立国の推進を進めており、新しい観光分野の1つとして「スポーツ観光」を挙げていることを紹介。日本でのスポーツ観戦、日本に来てマラソンなどに参加するなどのスポーツ観光を活性化させるため、「スポーツ・ツーリズム推進連絡会議」を立ち上げ、情報提供を行うWEBサイト「スポ・ツー・ナビ」やスポーツ観光相談窓口の設置などを行っていると話しました。

また、観光庁によるMICE(Meeting,Incentive,Convention,Event/Exhibition)誘致活動事業実施支援事業についての説明もありました。NFが国際大会や国際会議を行う際に、観光庁が経費を一部負担するなどの支持スキームについて説明。積極的な活用を呼びかけました。

最後に、JOC国際専門委員会の村里敏彰副委員長が「笑顔と刺激のあるフォーラムとなりました。情熱のある方たちが道を切り開いていくことが大切です。国際人と呼べる、人間力の幅が広い人を築いていくことが私たちのテーマです」とあいさつし、実践的で充実したセミナーを締めくくりました。

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