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TEAM JAPAN DIARY

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2010/11/15

男子カヌースラローム、羽根田卓也選手と矢澤一輝選手がそれぞれ悔しい銀メダル

文・折山淑美

 

大会3日目の11月14日、インターナショナルローイングセンターで行われたカヌースラローム。男子カナディアンシングルの羽根田卓也選手と男子カヤックシングルの矢澤一輝選手はともに、悔しさを覆い隠すような表情をしていた。


2レースで行われた前日の予選は、羽根田選手が2回とも2矢澤選手は1回目2位で2回目1位という成績でこの日の準決勝へ進んでいた。今年のW杯ランキングは羽根田選手が7位で、矢澤選手が13位。この大会に出場する選手の中では最高順位で、優勝候補の筆頭と目される存在だった。それだけにともに中国選手に後れをとっての2位通過は、納得いかないものがあった。


この日の準決勝も共に2位で通過。決勝で最初に登場したのはカナディアンシングルの羽根田選手だった。だが前半で、流れの下流から通過する赤ゲートに入る時にカヌーの先端をわずかにバーに当てるミスを犯してペナルティー2秒を受ける。その後は丁寧に攻めて、ゴールタイムも準決勝より2秒近く上げる93秒06に。ペナルティーを加えて95秒06で競技を終えた。


それに対し、地元開催での優勝を狙う中国の膝志強選手は積極的に攻め、しかもペナルティー0で92秒53でゴール。羽根田選手は悔しい2位に終わったのだ。「実力をまったく出せなかった大会ですね。体だったり心だったりにズレがあったのが原因だと思います。そのズレの修正が大会までに間に合わなかったのが、今回の数秒の差になって表れたのだと思います」こう話す羽根田選手は、高校卒業後は強い選手が多く刺激になると、スロバキアへ留学して指導も受け。世界のレベルにいち早く近づこうとする意識からだ。その中で今年は速さよりミスを少なくしてタイムに安定性を持たせることを課題にしてきたという。だがこの大会ではその課題を活かせず、4回ともミスをしてしまったと悔しがる。コース自体は難しいといわれるレベルではないが、ゲートの設定が少し難しめだったこともあり、それに対応し切れなかった。

Aflo_jyfa064070 ミスを悔やむ羽根田選手(アフロスポーツ)


続くカヤックシングルでは、矢澤選手が攻めのパドリングをした。各ゲートも最短コースをき、ゴールタイムはそれまでのトップタイムを2秒以上上回る87秒83を出した。だが前半のゲートで腕が僅かにバーをかすっていたために2秒減点で結果は89秒83になった。結局、最後にスタートした黄存光選手(中国)が、ゴールタイムこそ88秒15と矢澤選手を下回りながらもノーミスで終えて優勝を決めたのだ。


矢澤選手は「タイムはソコソコだったけど1回バーに当ててしまったから。それが一番悔しいですね」と苦笑する。世界で戦うためにもアジア大会は勝たなければいけないと思って臨んだ試合だった。いつもなら優勝しようと思うと焦るような面もあったが、今回は最初から優勝するつもりで来たため、そのようなことはなかったという。


「タイム差があまり開かないコースだから、ミスをしないことが一番重要だと思っていただけに悔しいですね。本番のコースでの練習期間も4日しかなかったので、そういう影響もあると思います」と矢澤選手は話す。選手達はそれを否定するが、中国勢地の利を活かした結果だともいえるだろう。

Aflo_jyfa064077 悔しい銀メダルとなった矢澤選手(アフロスポーツ)


チームを率いる馬場昭江監督によれば、コース設定で難しかったのは流れに対してゲートが正面を向くのではなく、斜めになっていて隙間へ入るような感じの設定が何カ所かあった部分だという。そこを強引に攻めればバーに触れしまい、慎重になるとタイムが伸びない設定だという。通常の世界大会ならコース設定者が複数いるが、この大会ではひとりだったためにその傾向が変わらなかった。比較的技術よりパワーを必要とされる設定でもあり、中国選手有利になったという。


春園長公チームリーダーは「ここで金メダルを獲っても、褒めるほどではないと思っていただけにガッカリしましたね。でも選手の方が、もっと悔しがっていると思います。ただ、世界と比べてもセンスの面では劣っているとは思わないし、羽根田は23歳、矢澤は21歳とまだ若いですから、これからもっと国際大会の経験を積んでいけば、勝負できるようになる」と話す。また、水中に置かれた人口構造物の深度が浅くてカヌーにぶつかるところもあるため、パドリングなどで深く攻めきれず、思い切っていけない部分もあったともいう。


カヌースラロームは筋力というより、水の流れを見極める眼や俊敏性などが重要な競技だ。技術もメンタルも、強い選手と戦う経験を積めば積むほど高められる。その点では日本人も、これからもっと世界に通用することが出来る競技といえるだろう。勝って当然と思って臨んで破れたこの大会。その悔しさが、二人に勝利への執念を今まで以上に植えつけるきっかけにもなるだろう。


この大会でシーズンを終えた選手達の来年の最大の目標は、まず世界選手権でオリンピック出場枠を確保すること。そこへの向かっての決意は、この敗戦でさらに強まったといえる。

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