2010/10/08
アジア大会に向け大きな躍進、バドミントン・ヨネックスオープン
文・折山淑美
バドミントンのチームジャパンにとって、9月21日〜26日に東京体育館で行われたスーパーシリーズの「ヨネックスオープンジャパン2010」は、11月の広州アジア大会へ向けて弾みをつける大会となった。8月下旬に開催された世界選手権では、男子シングルス山田和司選手と女子シングルス廣瀬栄理子選手、女子ダブルス末綱聡子選手・前田美順選手組のベスト8進出が最高順位だったチームジャパンは、それぞれ広州アジア大会への手ごたえを感じる結果を残したのだ。
最強・中国を始めとする世界の壁は極めて厳しい状況。その中でも着実に実力を発揮したのが、世界ランキング4位につける女子ダブルスの末綱選手・前田選手組、通称“スエマエ”だった。初登場の2回戦では香港ペアを相手に、第1ゲームを21対9で先取。第2ゲームは途中11対16とリードされたが、そこから怒濤の追い上げをみせて21対17で勝利。翌日の準々決勝はミスが出て苦しんだが、マカオのペアを21対18、21対16で下して、3年連続のベスト4進出と底力を見せつけた。
だが準決勝は強敵だった。相手は急造ペアながら、前週のスーパーシリーズ・中国マスターズで優勝したワン・シャオリー選手とユ・ヤン選手(中国)のペア。王選手は世界ランキング1位ペアのひとりで、干選手は北京オリンピック金メダリストで今年の世界選手権も優勝。ともにパートナーを変えて出てきたのだ。「レシーブをしっかりしてラリーに持ち込みたい」と臨んだ“スエマエ”だったが、相手の壁は厚かった。男子顔負けの力強いスマッシュと速い動き。ネットプレーの正確さに歯が立たず、5対21、10対21で完敗。結局昨年の準優勝にも届くことができず、3位で試合を終えたのだ。
ただこの中国ペアの強さは格別で、決勝でも世界選手権3位の中国ペアを21対17、21対6で簡単に下して圧勝したほどだった。「練習では男子選手を相手にして、速いスマッシュもしっかりレシーブできるようになってきたが、試合になると女子選手独特の球の動きもあってポイントをずらされたりしている」という“スエマエ”のふたり。北京オリンピック以来新たな脅威となっている中国のパワーとスピードを兼ね備えたペアを相手に、どうやってレシーブを返して得意のラリーに持っていけるようにするかが、もうワンランクアップするために必要な課題だ。
ワン・シャオリー、ユ・ヤン選手組は決勝でも圧倒的な強さをみせた
前田選手(左)と末綱選手
女子ダブルスでは他にも、世界ランキング7位の藤井端希選手と垣岩令佳選手ペアと、15位の松尾静香選手、内藤真美選手のペア、25位の高橋礼華選手、松友美佐紀ペアも揃って2回戦に進出。ともに敗れてはしまったが、全日本チームの中島慶コーチは「勝つチャンスはあった。勝負どころで引いてしまうのではなく、前に出れば良かった。ほんのちょっとした差だ」と悔しがる内容だった。
また女子シングルスでは、世界ランキング7位の廣瀬選手と、予選から勝ち上がってきた打田しづか選手がベスト8進出を果たした。その中でも健闘したのは廣瀬選手だった。準々決勝の対戦相手は世界選手権2位、前週の中国マスターズ優勝者で世界ランキング1位のワン・シン選手だった。スピード豊富で、どんな体勢からでも強いスマッシュを打ち、きっちりとコーナーを狙ってくる高い技術の持ち主。前回マレーシアで戦った時はストレート負けだったというが、今回は第2ゲームを21対18で取ってファイナルゲームまでもつれ込む大健闘をみせた。
廣瀬選手は今年、世界選手権ではその時点で世界ランキング1位だったワン・イーハン選手を破ってベスト8へ進出した。さらに世界選手権優勝のワン・リン選手を2回破るなどの金星を挙げ、「メダルが見えてきた」という手応えを持っている。それに加えた今回の健闘で、その手応えはさらに大きくなったはずだ。「中国選手をひとり破るだけではなくふたり破らなければメダルには届かない」という彼女は、準々決勝で敗退したとはいえ、この大会を良いステップにすることができたといえる。
06年アジアジュニア優勝で07年世界ジュニア2位。さらに今年は3月の伝統のある全英オープンで日本男子シングルス44年ぶりの決勝の舞台に上がるという快挙を果たした期待の田児賢一選手は、2回戦で世界ランキング1位のリー・チョンウェイ選手(マレーシア)と当たるという不運な組み合わせになり、10対21、10対21で敗退した。
「試合後『お疲れさん。グッドゲーム』といわれたけど、へこみますね。今度は本当にいいゲームをしてそう言われるようにしたい」。こう言って苦笑する田児選手によれば、全英オープンの時は相手が自分を研究していなかったから勝てたが、それ以後は相手も研究してきて自分のプレーを出せていない状態になっていると分析する。だが優勝を狙っていた地元の大会での完敗で、「これも乗り越えていかなければいけない壁だ」と改めて感じられたことは大きいだろう。もっと「世界で戦いたい」という気持を強くもって練習に臨めば、すべての面で成長できるはず、と力強い言葉も口にした。
また同じ男子シングルスでは、佐々木翔選手が04年アテネオリンピック王者で今年の世界選手権でも2位になっているタウフィック・ヒダヤット選手(インドネシア)を破る金星を挙げた。2回戦で敗退したものの、これからに向けては大きな手応えをつかんだといえる。
日本のバドミントンが今年最大の目標とする広州アジア大会。そこでいかにして中国勢や他の強豪達に立ち向かっていくか。アジアで勝ち抜くことこそが、バドミントンでは世界の頂点に肉薄する道なのだ。(写真提供:アフロスポーツ)