2010/06/27
ナショナルコーチアカデミーで橋本聖子JOC理事が「コーチング論」講義
国際競技大会で活躍できる選手を育成・指導する真のエリートコーチ養成を目指し行われている「ナショナルコーチアカデミー」で6月23日、バンクーバー冬季オリンピックで団長を務めた橋本聖子さん(JOC理事)が「コーチング論」の講義を行いました。
橋本さんは、スピードスケートで冬季大会に4回、自転車競技で夏季大会に3回出場したオリンピックの申し子とまで言われたトップアスリートでした。当時、尊敬していたスピードスケートの選手が強化策として自転車競技に取り組んでいたことをヒントに、両競技に取り組もうと決めたそうです。しかし筋肉の使い方が少し違うことから、股関節を痛めるなど苦労もし、「両方の競技それぞれに、どんなトレーニングが必要かを考え、理解するきっかけになった」と、トレーニング方法を試行錯誤したエピソードを紹介しました。
1988年ソウルオリンピックに向けて自転車競技に挑戦する橋本さん(提供:アフロスポーツ)
1992年アルベールビル冬季オリンピックのスピードスケートで、冬季では日本女子初となる銅メダルを獲得(提供:アフロスポーツ)
また現役最後の時期は、岡崎朋美選手や田畑真紀選手の指導役としての立場も兼任していたことから、具体的な指導法へのアドバイスもありました。「名選手、名コーチにあらずではなく、名選手こそ名コーチになるべき。研ぎ澄まされた感覚を紐解いて言葉で伝えられたとき、名コーチになれる」と話し、指導者らが持つトップレベルの身体感覚をうまく伝える大切さを話しました。
またオリンピックの基本精神についての話にも触れ、「肉体を鍛え上げるだけではなく、そのレベルまで精神力をも鍛えたものが本当のオリンピアン。そして、オリンピックは感動を与えるだけでなく、感動した子供達の生き方をも変えるほどの教育的な影響力がある」と説明。そのオリンピックの基本精神を受け継ぐために、「JOCは(メダル獲得に向けた)ゴールドプランを策定しているが、それは人生をゴールドにするためのゴールドプランでなければならない」と話し、選手の人間性も育成するよう各受講者に求めました。
数々の困難を乗り越え、現在は様々な場面でリーダーとしての活躍も多い橋本さん。最後は受講者からの質問ラッシュとなりました。なかでも興味深かったのは、ストレスの発散方法。橋本さんは選手時代、陶芸を行っていたそうです。ろくろを回しながら芯を作る作業で、集中力も養うことができたとのこと。経験豊富な橋本さんの話で、充実した講義となりました。