2010/02/25
女子フィギュアスケート、3選手ともメダル圏内で発進
待ちに待った女子フィギュアスケート、決戦の火蓋が23日夜(日本時間24日)、切られました。浅田真央選手はトリプルアクセルを成功させ2位、安藤美姫選手は4位、鈴木明子選手は11位と、それぞれ上位での発進。多くの選手がノーミスの素晴らしい演技で、会場に詰め掛けた多くのファンが、何度もスタンディングオベーションを送る夜となりました。
トリプルアクセルを成功させ笑顔の浅田選手(提供:アフロスポーツ)
出場したなかで、3枠の出場枠を獲得しているのは日本のみ。その3選手も、07年世界女王の安藤選手、08年世界女王の浅田選手、09年グランプリファイナル3位の鈴木選手と、世界の表彰台経験者ばかりです。誰もがメダルに絡む選手とあって、会場のどこを見回しても、日の丸が揺れています。
日本人一番手となったのは、浅田選手。今季前半戦は、決め技のトリプルアクセルが決まらず、長いトンネルを抜け出てのオリンピック。特にショートプログラムでのトリプルアクセル(3回転半)は、今季からの挑戦ですがまだ成功がありません。決まれば、オリンピックでは女子初の快挙です。
世界が注目するなか、緊張の一瞬がスタート。なめらかな滑り出しで、冒頭のトリプルアクセル+2回転ジャンプを流れるように決めます。回転は十分。続くジャンプが決まると、最後までこぼれるような笑顔を振りまきながら、丁寧にプログラムをこなしました。終わった瞬間、右手を胸にあてて、ホッとした様子。73.78の高得点には、一瞬驚いた表情をしたあと満面の笑みを浮かべました。
続いて登場したのは、キム・ヨナ選手(韓国)。キム選手は、フィギュアスケートの地盤がなかった韓国で、唯一のトップスケーター。07年からはカナダに拠点を移し、ブライアン・オーサーコーチと振付師のデイビット・ウィルソン氏のもと、演技力とスケーティングを磨いてきました。韓国全国民の期待を一身に背負うプレッシャーは、計り知れないものがあります。
しかしキム選手は、冒頭で、スピードと高さのある3回転+3回転の連続ジャンプをビシッと決めると、続く3回転ジャンプも成功。一瞬、演技の妖艶な顔が緩み、笑顔が見えます。ボンドガールになりきった艶やかさとキレのある演技で、会場の観客を虜にすると、自己最高得点の78.5点で首位に躍り出ました。終わった瞬間は満足げな表情で、右手で小さくガッツポーズ。昨季女王のプライドを感じさせました。
鈴木選手は、この2人の白熱の戦いの直後と、少し難しい順番。いつもはミスをしない冒頭のジャンプで手を着いてしまいますが、そこから切り替えられるのが鈴木選手の強いところ。力強いストレートレインステップは、キム選手にも劣らないスピードと情感があふれていました。結果は61.02で11位発進でしたが、4位から11位までは3.74点差の僅差の戦い。フリースケーティングへつながる演技となりました。
この日一番のスタンディングオベーションを受けたのは、地元カナダのジョアニー・ロシェト選手でした。試合2日前に母親が急死する失意のなか、出場を決めたロシェット選手。力強いタンゴには、母親への思いが込められていたのでしょうか。ノーミスの素晴らしい演技を終えた瞬間、こらえていた涙が溢れ出ました。観客は総立ち。ロシェット選手の精神力への感動と、悲しみとで、多くの人が目に涙を浮かべ割れるような拍手を送りました。
演技を終えて涙があふれるロシェット選手(提供:アフロスポーツ)
安藤選手は全30人の選手の最終滑走。曲は、亡き父と祖母に捧げる「レクイエム」。4年前のオリンピックでは、記者会見で父親への思いを聞かれ泣いてしまった安藤選手ですが、今回は「天にささげる気持ちで」と、精神的な成長を見せます。3回転+3回転ジャンプに挑戦しますが、惜しくも3回転+2回転判定。最後のステップは情感があふれ、身体を大きく使った迫真の演技。演技面のプログラムコンポーネンツの評価が高く、ジャンプミスをカバーするかたちで4位発進となりました。
難度の高いジャンプに挑戦した安藤選手(提供:アフロスポーツ)
日本3選手とも、自分の力を発揮しフリースケーティングへつなげました。キム選手と5点差以内で、金メダルへの可能性を十分に残した浅田選手。フリースケーティングの「鐘」はジャッジの評価も高く、その差は十分に埋めることができます。メダル圏内につけた安藤選手も、大人の女性らしい演技力が光る「ROME」は逆転のカードになりえます。そして鈴木選手は得意の「ウエストサイドストーリー」。それぞれの思いを胸に、フリースケーティングに挑みます! (JOC広報チーム)