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アテネ2004


アテネオリンピック検証

ナショナルトレーニングセンターとエリートアカデミースクール構想

竹内: JOCとしてはエリート選手の強化育成がまず第一にある訳ですが、こういう年齢から始めておいてくれるとありがたいですよ、というシグナルを出して、それをうまく受け止めてくれる受け皿をさらに充実しなければいけないと思います。その施策としてはどんなものがありますか。

福田: これまでの日本のスポーツは学校体育、学校の運動部に頼っていて、学校の運動部からオリンピック選手というのがほとんどのパターンでした。今は年齢が下がったために、地域クラブから育った選手がオリンピックへ行くようになってきています。小学校に入るか入らない頃から、地域の体操クラブ、スイミングクラブ、柔道教室などへ行っています。
施策としてはナショナルトレーニングセンター構想を持っています。北区にある国立スポーツ科学センター(JISS)はスポーツを科学的に分析するセンターであって、ナショナルトレーニングセンターではないのです。「JISSに付随してナショナルトレーニングセンターを作ってください」ということを、今、文部科学省にお願いしているところです。ところが文部科学省は限られた予算の中でやるために、我々の要望とかけ離れている部分があります。そこで今「1期、2期、3期という取り方はできないか」という話を進めています。
その施設の中にアカデミースポーツスクールを作るということが大事です。全国に飛び抜けた成績の選手、中学校や高校で優秀な選手、これらを全部ナショナルトレーニングセンターの中のアカデミースクールに持ってくる。競技団体で推薦されたトップクラスを集める。そこでは、もちろん宿泊も食事も全部タダ、授業も全部タダで受けられる。練習に専念できて泊まれる。専門の教育や競技の徹底指導を受けられて、必ずいいナショナル選手に育つと思います。

竹内: 中央にそういうしっかりした施設を設けるというのは、非常に効率的だとは思いますが、地方で次から次に出てきてくれるためには、地方に道場やクラブがあって、そこがいつも元気であるというのも好ましいと思います。中央のエリートを集めたところと、地方の活性化のバランスはどういう風にしたらいいでしょうか。

福田: 中央と地方は両立なんです。地方の施設もどんどん作っていかなきゃいけないし、地方のトップクラスを中央に集中させる。エリートスクールという存在が憧れの的になる。あそこの学校に入りたい、ということでタレント発掘にもなる訳ですね。地方はもちろん最後まで中央との競争になりますけれども、競争の原理は当たり前で、両輪の輪で行かなければダメだと思います

早田: 諸外国では、国が直接競技スポーツのレベルアップに取組んでいて、スポーツ全体に提言やタレントを発掘する仕事をしているところもあります。これは民間で行うのは大変だと思いますよ。

福田: 自治体の補助ですね。

早田: そうです。民間では賛否両論があるし、やはり自治体がバックアップするような形で、トップレベルが十分納得できるような施設を整える。
 施設には指導者もいて、義務教育を含めてその中で受けられるようなシステムは、国が直結して動いている諸外国では確立されています。競技スポーツは勝って価値が認められるのですから、そのためには日本も遅ればせながら、それくらいのことをやって行かないと。

竹内: 伊調姉妹が八戸に凱旋している様子を見ましたが、やはり町の誇りになりますから、ああいうレスリングクラブがあって本当に良かったと思いますよね。将来のオリンピアンがこのクラブから出るんだ、それがいかに市民、町民を勇気づけるかということを自治体にわかってもらってクラブを援助する。そういう風になってもらいたいと思います。

福田: そうですね。大した額じゃないですよ。援助額というのはね。補助をする力は自治体もあるはずだと思います。

日本代表選手団
プレスアタッシェ
竹内浩
(JOC事業・広報専門委員)
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