ドーハアジア大会
第15回アジア競技大会(2006/ドーハ)
第15回アジア競技大会(2006/ドーハ)展望
世界へとつながるアジアチャンピオンをめざして
文:折山淑美
- 目次
- 世界中から注目される「アジアチャンピオン」
- 世界選手権、北京オリンピックを見据えた陸上競技
- 期待のかかる競泳陣の見どころ
- まだまだ見どころたっぷり、注目の各競技
- 多彩な競技がもう一つの楽しみ
- アジア競技大会は様々な可能性をもっている
世界中から注目される「アジアチャンピオン」
「世界へ出て行こうとする時、タイトルっていうのはものすごく重要なものなんですよ。“アジアチャンピオン”という肩書があるかないかで、試合での扱われ方も変わって来るんです」
競技会場の一つ、Khalifa Sports Complex (写真提供:アフロスポーツ) |
その言葉を口にしたのは、陸上競技男子100mで世界への扉を叩く10秒00をマークした伊東浩司だった。彼が戦いの場を世界へ広げるべく、単独で欧米遠征をしている頃だ。
陸上のグランプリシリーズなどは、大会ごとの出場人数は限られている。特に短距離はレーンの数だけの選手しか走れない。その上彼が出場していた200mでは、コーナーのカーブが急なインレーンを走るか、緩やかなアウトレーンを走るかでも有利不利が出てくる。 海外の選手の代理人たちは、有力選手が集まってくるレースへの出場権だけでなく、より良い結果を出せる条件を整えるために丁々発止の駆け引きをしてくる。その中でなるべくいい条件を得るためには、チャンピオンという肩書も必要になってくるのだ。
多くの選手たちの「世界へ」という機運が高まりつつある中での彼の考え。
それは、「やみくもに世界へと高望みする前に、足元を固めてから進み始めるべきだ」という、彼自身が肌で感じとった教訓から生まれてきたものだった。
10月21日には日本でもトーチリレーが行われた。 (写真提供:アフロスポーツ) |
1951年に、インドのニューデリーで第1回大会が開催されたアジア競技大会は、まさにそんな思想を根源に持った大会だともいえる。植民地支配から独立した喜びもインパクトになった総合国際競技大会だが、そこにはスポーツの幅広い普及とともに、いずれは世界と対等に戦うための足掛かりにしたい、という思惑もあっただろう。
第1回大会こそ、当初の予定より1年遅れて開催されたが、第2回大会からはオリンピックの中間年に4年ごとに行われているアジア競技大会は、12月1日からのカタール・ドーハ大会が15回目の開催。74年の第7回大会(イラン・テヘラン)以来の西アジアで開かれる大会となる。実施される競技と種目数は前回の釜山大会から1競技、3種目増加の39競技423種目になった。