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TEAM JAPAN DIARY

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2010/02/26

思い思いのオリンピック。悔しさは4年後に〜ノルディック複合 ラージヒル個人 決勝

文:折山淑美

2月25日のノルディック複合ラージヒル個人。雨交じりの雪と強い追い風の影響でジャンプが途中で打ち切られ、時間を置いて1番からの再スタート。その幸運を日本勢で唯一活かしたのが、若手の渡部暁斗だった。

中止になった回で81.5mだった彼は、やり直しのジャンプでは125.0mまで飛距離を伸ばした。ジャンプ自体も、ここしばらくの中では上半身をあまり使わない、前に飛び出すジャンプになっていた。

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125.0mのジャンプで9位につけた渡部選手(写真提供:AP/アフロ)

「ラッキーでした。1本目があんなジャンプだったから、やり直しでは普通に飛んで、あれより距離を出せばいいだろうと考えただけでした。無欲でいけたから、いい動きができたんでしょうね」

こう言う渡部は、トップのグルーバー(オーストリア)から58秒遅れの9位で、後半の距離に進むことになった。

一方、小林範仁はチャンスを生かせない組に入ってしまった。ジャンプでは風の条件が良さそうなのを見て、少し力んでしまった。

「アプローチ姿勢を組んだ瞬間にやばいな、と感じました。上手く組めないから自分のタイミングで踏み切ることができないんです。失敗しました」と、112.0mまでしか飛べなかったジャンプを惜しそうに言う。23日の団体戦ではジャンプも走りも良くなかった。だから最後くらいはキッチリ飛んで、気持ち良く終わりたかった。

加藤大平も「1本目と同じで、強い追い風でした。飛び出してからスキーを何度も叩かれてしまいましたから」と言う、運に見放されたジャンプになった。結局、小林は30位、加藤は31位と、トップから2分26、27秒差で後半に臨むことに。また、ノーマルヒル個人、団体戦とメンバーを外れていた湊祐介は、試技と中止になった1本目、再挑戦のジャンプすべてが、ほぼ同じ距離の110.0mだった。

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ジャンプで31位と出遅れた加藤選手(写真提供:共同通信)

「アプローチの構えを掴めていないから、スキーに上手く乗れたり乗れなかったりで。昨日の練習で1本だけいいジャンプが出たけど、また戻ってしまった。これが今できる精一杯のジャンプだと思いますね」と言う。それでもトップとのタイム差は2分40秒で、一斉スタート組に入るのは免れることができた。

予定を1時間遅らせた午後2時からスタートした、後半の距離。条件はウェットだが雨はほぼ止み、団体戦の時のようなコースの雪質の変化を心配するほどではなかった。

そんな中、9番スタートの渡部は予定通りのレースを展開した。

「まだ1人で走るスピードはないので、後ろから来る集団を待って一緒に行こうと思ったんです」と言うように、後ろから追い上げてきたシュテヒャー(オーストリア)や、タンデ(ノルウェー)、ロドウィック(米国)など、走りの強い選手たちの、最大で11人までになった大集団の中で上手く走り、終盤には9位に。入賞も期待させるまでになったのだ。

だがラスト周回の残り1kmほどのところで、マンニネン(フィンランド)やタンデなどが仕掛けたのに付いていけず、2日前の団体で優勝したオーストリア代表のステヒャーと2人で取り残された。2人だけの入賞争いになったが、ベテランの上手さにやられ、結局は9位に終わった。

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前回トリノでは19位だった渡部選手。今回は僅差で9位に(写真提供:共同通信)

「引っ張ってもらっているということは、僕も能力以上に走らせてもらっているということだろうから、スパートされた時はいっぱいいっぱいになってしまって対応できなかった。まだこういう集団で走った経験も少ないから、集団の中での位置取りや、スパートのタイミングなどがわかっていないのでしょうね。ワールドカップと同じひと桁順位になれたのは嬉しいけど、最後で競り負けたのは悔しい。嬉しさと悔しさは半分半分です」 

4年後には、ジャンプも飛べて走れる選手になる。そして、メダル争いができるようになることで、今回の物足りなさを晴らしたいという目標を持てた。

一方、今オリンピック最後の試合だから、すっきりできる走りをしたいと話していた小林だが、ノーマルヒル個人と団体戦の疲労が残っていたという。大幅なジャンプアップは意識していたものの、体が動かず少し順位を上げただけ。30位を27位にするのに止まった。

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ノーマルヒル個人で7位入賞の小林選手は27位(写真提供:共同通信)

「今日は条件に左右されるだけのものになったけど、団体戦では世界との差を感じられたし、ノーマルヒルでは日本の皆さんに複合という競技の楽しさや、僕らがやっていることを知らせることができたから、いいオリンピックだったと思います」と、この大会を振り返った。

最後の種目が初出場となった湊も、「しばらく試合に出ていなかったので、レース感がなかった」という状態ながら、ゴットワルト(オーストリア)やエデルマン(ドイツ)という、走りの強い選手に引っ張ってもらう形で走り、最終周回では小林を抜き26位に入ることができた。だが「今回のオリンピックは“悔しい”の一言」だとも言う。出たかったノーマルヒル個人に出られず、団体のメンバーにも選ばれなかった悔しさは、次の大会で晴らすつもりだ。

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オリンピック初出場の湊選手は、得意の距離で26位まで追い上げた(写真提供:共同通信)

また、31番スタートの加藤も、ひとつだけだが順位を上げて30位になった。ただ、「団体戦ではジャンプも走りもソコソコだったけど、個人戦を見ればワールドカップより悪い成績だから、もう少しできたのではないかという気持ちも残っています」と反省する。

ノーマルヒル個人では7位が最高で、団体が6位。さらにこのラージヒル個人も9位が1人という結果を出すことができた複合チーム。次の目標は、複数のひと桁順位を取れるようになれるだけの、選手個々のレベルアップだろう。

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