写真:ロイター/アフロ
馬術競技は、初めてパリ1900大会で実施され、ヘルシンキ1952大会まで男性軍人のみが参加できる競技でした。その後、軍人以外の男性および女性も参加が認められ、現在は「馬場馬術」「障害馬術」「総合馬術」の3つの種目が実施されています。これらの競技の共通の見どころは、選手が馬へ拳(手綱)・脚・体重の移動などを駆使して細かな指示を出す技術と、馬がその指示に応じる能力です。選手と馬の信頼関係から生まれる見事なハーモニーにより、飛越や演技が迫力と華麗さを備え、馬術競技の魅力が引き立ちます。
馬場馬術は、20m×60mの長方形のアリーナ内で行われ、馬の演技の正確さや美しさを競うもので、決められた順番通りに運動する規定演技と、音楽に合わせて行う自由演技があります。特筆すべきは、馬がまるで自ら楽しんでいるかのように躍動し、ダンスを踊るかのような印象を与える点です。選手は馬に対して小さな合図を送り、馬はそれに合わせて時にはリズミカルに、時には優雅に動きます。芸術性も感じられる馬場馬術は、まさに人馬一体の妙技が魅力です。
障害馬術では、競技アリーナ内に設置された様々な色や形の障害物を決められた順番通りに飛越し、走行します。障害物を落下することなく、また馬が障害を避けたり止まったりせずに、規定の時間内にミスなくゴールすることが要求されます。障害物の高さは最大で165cmあり、奥行きも200cmに及ぶものもあります。踏み切りのタイミングを見極めることが重要で、適切な誘導が成功の鍵となります。選手が馬をリードし、馬の歩幅さえもコントロールしてジャンプを成功させ、巧みにコースを回るのが見どころです。
総合馬術は、馬場馬術・クロスカントリー・障害馬術の3つの種目を、同じ人馬のコンビで行うトライアスロンのような競技で、人馬ともに総合的な能力やテクニックが要求されます。また、3日間にわたって行われるため、馬のコンディション維持が重要です。特にクロスカントリーでは、自然を生かした地形に40以上の障害物が配置された6kmほどのコースを約10分で駆け抜けます。時速30km以上のスピードで走行しますが、最短距離を攻めればタイムは早くなる一方で失敗するリスクが高く、逆に安全策をとればその分タイムがかかってしまいます。人馬ともに勇気とパワーが必要で、スピード感と迫力を楽しめます。
■日本チームの有力選手
【障害馬術】
佐藤英賢(さとうえいけん)、杉谷泰造(すぎたにたいぞう)、Haase柴山崇(はーぜしばやまたかし)の3人が代表、川合正育(かわいまいく)がリザーブ。佐藤は北京、東京に続く3回目、杉谷はアトランタからリオデジャネイロまで6大会連続で出場しており今回が7回目のオリンピック、Haaseは初出場です。いずれもヨーロッパに拠点を置いて活動しています。
杉谷は1993年、17歳の時にオランダに渡った時から30年以上ヨーロッパで活動しており(現在の拠点はドイツ)、チームの中で最も競技経験が長い選手です。祖父(川口宏一氏)と父(杉谷昌保氏)もオリンピック障害馬術競技に出場しており、3代にわたってオリンピアンとなっています。
【総合馬術】
大岩義明(おおいわよしあき)、北島隆三(きたじまりゅうぞう)、戸本一真(ともとかずま)の3人が代表、田中利幸(たなかとしゆき)がリザーブ。大岩は北京から5回連続、北島はリオデジャネイロ、東京に続く3回目、戸本は東京に続く2回目の出場です。東京大会では戸本が個人4位に入賞し、日本の総合馬術史上最高順位を記録しました。
初めてこの4人でチームを組んだ2018年の世界選手権で団体4位に入賞、これが日本の総合馬術の躍進の大きなきっかけとなりました。それ以来、世界選手権、オリンピック、ネーションズカップなどは常にこの4人で世界と戦ってきました。
昨年6月のオリンピック地域予選では団体枠を獲得できず、団体を組めない状況に陥りましたが、その後、上位国にドーピング検査陽性が出て失格となり、日本は繰り上がりで団体枠を手にしました。そこから改めて「パリオリンピックで団体金メダル」を目標に強化を行なってきました。日本の総合馬術史上最強チームであり、パリ後はヨーロッパの拠点を離れて日本に戻る選手が多いため、この4人のチームで挑む集大成の大会となります。
競技初回実施大会 | パリ1900大会 |
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TEAM JAPAN初出場大会 | アムステルダム1928大会 |
競技別累計メダル数 |
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2024年8月21日時点
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