日本オリンピック委員会(JOC)は10月8日、すみだトリフォニーホール 大ホールで「オリンピックコンサート2024」を開催しました。
「オリンピックコンサート」は、オリンピック映像とオーケストラ演奏を融合させ、スポーツファンのみならず、普段スポーツやオリンピックに親しみのない方にもオリンピックの価値や素晴らしさを実感してもらうことを目的としてJOCが1997年より毎年開催しており、今年は約1,200人の方々にご来場いただきました。
パリ2024大会が行われた今年のオリンピックコンサートは「オリンピックの輝き、新たな世紀へ」 をテーマに、指揮は松井慶太さん、演奏はTHE ORCHESTRA JAPANが担当。ナビゲーターは、オリンピアンで俳優の藤本隆宏さん(水泳/競泳、ソウル1988大会、バルセロナ1992大会出場)が13年連続で務めました。
コンサートはポール・デュカス作曲の『舞踏詩「ラ・ペリ」よりファンファーレ』で第1部が開幕。続けて2曲目に演奏されたパリ2024大会公式テーマ曲『パレード』のメロディーに乗せてパリ2024大会のメダリストたちが入場し、盛大な拍手で迎えられました。
3曲目は今大会の開催国であるフランスの代表的なポップスやシャンソンをシンフォニックにアレンジした『フレンチ・ポップスメドレー』が演奏され、スクリーンではパリ2024大会の開会式の映像が流れました。
4曲目は、ジョルジュ・ビゼーの『アルルの女 第1組曲より 前奏曲/鐘(カリヨン)』。雄大な「前奏曲」と華やかな「鐘」に合わせ、パリで開催された3大会をはじめとした、世紀を超えたオリンピックの歴史を振り返りました。
第1部のラストである5曲目は、ジョージ・ガーシュウィンの『パリのアメリカ人』。生き生きとしたパリの姿を表現した楽しい音楽に乗せて、スクリーンではパリ2024大会における世界のトップアスリートたちの最高のパフォーマンス映像が流れました。
第2部のトップを飾ったのはアンドレ・ギャニオン作曲の『めぐり逢い』。今大会の開会式でセリーヌ・ディオンが熱唱した大ヒット曲のオーケストラバージョンと共に、パリ2024大会へ向けて困難を乗り越え、常に前を向き続けたTEAM JAPANの姿が映し出されました。
7曲目に選ばれたのはジョン・ウィリアムズの『王座の間とエンドタイトル〈映画「スター・ウォーズ/新たなる希望(エピソード4)」より〉』。SF映画の金字塔『スター・ウォーズシリーズ』作品の中の様々なテーマがシンフォニックに折り重なる勇壮で壮大な音楽に合わせて、TEAM JAPANのアスリートたちがパリ2024大会で輝き躍動する雄姿が流れました。
続いて行われたのは『パリ2024大会TEAM JAPANメダリストトーク〜応援をありがとう〜』。参加アスリートが再登壇し、この夏行われたパリ2024大会について一言ずつコメントを述べました。
■北口榛花選手(陸上競技) 女子やり投 金メダル
「ご声援ありがとうございました。優勝候補に自分の名前があがることもありましたが、今シーズンの調子はあまり良くなく、試合当日まで不安でした。しかし、最後の最後まで自分を信じ抜くことができたからこそ獲得できた金メダルだと思いますし、これからも自分をもっと信じてよいと思えた大会でした。来年は東京で世界陸上競技選手権大会がありますので、ぜひ国立競技場にお越しいただいて、日本の皆様の前で再び金メダルを獲れるように頑張ります」
■樋口黎選手(レスリング) 男子フリースタイル 57kg級 金メダル
「たくさんの応援ありがとうございました。私は減量でたくさん失敗をしてきたため、周囲に心配をかけましたが、無事に金メダルを獲得することができました。これまで多くの挫折をしてきましたが、そこから立ち上がる姿や一歩踏み出す勇気というものを、オリンピックを通して伝えたいと思って頑張りました」
■文田健一郎選手(レスリング) 男子グレコローマンスタイル 60kg級 金メダル
「東京2020大会は銀メダルでした。決勝で敗れたため、もう二度とこのような悔しさを味わいたくないと思い、3年間、パリ2024大会向けて頑張ってきたので、金メダルを獲得できてホッとしていますし、本当に嬉しく思います。(今後に向けて)簡単に2連覇とは言えませんが、今はゆっくり休んで身体をつくっていき、強いレスラーをさらに目指していきます」
■藤波朱理選手(レスリング) 女子フリースタイル 53kg級 金メダル
「小さい頃からオリンピックで優勝することを目標にしてきたので、憧れの舞台で金メダルを獲ることができて非常に嬉しかったです。プレッシャーというものもありますが、それに打ち勝ってこれからも走り続けていきたいと思います」
■櫻井つぐみ選手(レスリング) 女子フリースタイル 57kg級 金メダル
「昔からオリンピックで優勝するという夢を持っていました。そのオリンピックで優勝することができ、小さい頃からの夢を叶えることができたのだという、夢のような現実のような思いです。多くの方々に応援していただいたおかげだと思います。ありがとうございます」
■尾﨑野乃香選手(レスリング) 女子フリースタイル 68kg級 銅メダル
「私は10ヶ月間で6kg体重を増やして、普段は60kg級なのですが68kg級でパリ2024大会を目指しました。オリンピックは非常に素晴らしく楽しい舞台で、もう一度目指したいと思える場所でした。体重や筋肉を増やすなどオリンピックのためにたくさん頑張ってきましたが、その想いが報われて本当に幸せな気持ちになりました」
■吉岡美帆選手(セーリング) 混合2人乗りディンギー(470級) 銀メダル
「3度目のオリンピックで銀メダルを獲得することができ、達成感と嬉しさで溢れています。フィニッシュした瞬間には中々実感できませんでしたが、銀メダルを首にかけてもらったときに重みを感じて、今までの努力が詰まっていると実感しました。セーリングは1週間行われる競技で最後まで気持ちを保つのが大変だったのですが、多くの方々の応援が力になり、最後まで全力で戦い抜くことができました」
■戸本一真選手(馬術) 総合馬術団体 銅メダル
「我々総合馬術チームはパリ2024大会の結果によって『初老ジャパン』というネーミングを頂きました。私自身はまだ41歳なので『初老ジャパン』という名に対し最初は思うところもあったのですが、選手村には10代の選手もいたり、ここに登壇したアスリートの中では最年長でしたので、もう受け入れるしかないかと思います。このような場に呼んでいただけたのも共に戦ってくれたスタッフや応援してくれた皆様、そして何よりもパートナーである馬が連れてきてくれたのだと感じています。本当にありがとうございました」
■宮脇花綸選手(フェンシング) 女子フルーレ団体 銅メダル
「リオデジャネイロ2016大会、東京2020大会と2度出場することができず、パリ2024大会でオリンピック初出場、そして初めてのメダル獲得と、私にとって確実にステップアップすることができた大会でした。一方で4年後は金メダルを獲得するという新しいモチベーションをしっかりと持つことができたので、それに向けて一歩ずつ進んでいけたらと思っております」
■江村美咲選手(フェンシング) 女子サーブル団体 銅メダル
「今まで色々な感情を体験してきたと思っていましたが、苦しい、逃げ出したい、一方で安心もできるという、オリンピックでしか味わえない感情をパリ2024大会では味わいました。フェンシングの発祥地の一つであるフランス、その中でもグラン・パレという素晴らしい場所で戦えたのも多くの方々の支えによるもので、お陰様で一生忘れられない大会になりました。応援ありがとうございました」
■佐藤大宗選手(近代五種) 男子個人 銀メダル
「近代五種は日本ではマイナーな競技ですが、このメダルを獲得したことによって少しは知ってくれた方が増えたのではないかと思います。近代五種は112年の歴史の中で日本人が入賞、そしてメダルを獲得したことがない競技でした。東京2020大会のときは出場できず悔しい想いをしたのですが、そこから3年間必死に努力してきました。それを支えてくれた監督やコーチ、そして皆様の熱い応援やサポートのおかげで日本人初のメダルを獲得することができました。1人1人に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました」
■鈴木孝幸選手(パラ水泳) 男子50m平泳ぎ(SB3) 金メダル/男子50m・100m自由形(S4) 銀メダル/男子200m自由形(S4) 銅メダル
「2大会連続で金メダルを獲得することができ、偶然ですが2大会連続で日本勢第1号の金メダルとなりました。東京2020大会のときは無観客で、今回観客の前で泳げたことを幸せに感じましたし、またその中で金メダルを獲れたこと、国歌を聞けたことを非常に幸せに思いました。ありがとうございました」
■木下愛萊選手(パラ水泳) 女子200m個人メドレー(SM14) 銅メダル
「自分の目標としていたところには届きませんでしたが、日本では中々感じることができないような声援の中で泳いだことなど、次に繋がるような良い経験になったと思います。もちろん4年後の金メダルを目指していきますが、まずは来年の世界選手権大会で自己ベストを更新し、金メダルを獲得できるように頑張ります」
一言コメントの後、アスリートへの質問コーナーが行われました。7月に行われたTEAM JAPAN壮行会にも参加した東京都北区立稲付中学校の生徒から「アスリートとしての最終目標は何ですか」という質問に対し、藤波選手は「マットに上がるのは1人なのですが、それまでに多くの方のサポートがあるからこそマットに上がることができます。そういった方々に勇気や元気や夢を与えられるような、そして日本を元気にできるようなアスリートになれるように頑張っています」と答えました。また事前に応募があった「何回やってもできないとき、諦めたくなったときはどうしますか」という質問に対して鈴木選手は「まずできないのはなぜかその理由を追及していき、それが本当にできないのであれば代わりにできることはないのかを考えていけば良いのかなと思います。自分も障害の影響でやりたいことができないということはあるのですが、できることとできないことを分けた上で『サポートをしてもらえばできる』『似たようなことはできる』『代わりにできることを探す』というようなことを考えてトレーニングに励んでいますし、それが活きていると感じています」と答えました。
最後にパリ2024大会で旗手を務めた江村選手が「一番伝えたいのは『一生懸命を楽しんでください』ということです。目標に向かう過程には辛いことや苦しいこともあるかもしれませんが、一生懸命やっていること自体を楽しめるのであれば同じことをやるにしても質も上がりますし、そこに成長や学びも生まれると思います。皆さんが目指しているものがあるのでしたら、ぜひ一生懸命を楽しんでください」とメッセージを送り、トークコーナーは締めくくられました。
続いての8曲目もジョン・ウィリアムズによる映画の名曲で『レイダース・マーチ〈映 画「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」より〉』。名作の世界観を表現した勇ましいマーチと共に映し出されたのは、ミラノ・コルティナダンペッツォ2026大会やロサンゼルス2028大会など、この先の未来に向かって挑戦を続ける若きアスリートたちの姿でした。
最後の9曲目は、オリンピックの精神と理念を高らかに歌ったスピロ・サマラ作曲『オリンピック讃歌』。パリ2024大会の開会式でも歌われたこの曲を、日本のオペラ界第一線で活躍を続ける『二期会』所属の4名の実力派シンガーたちが歌い上げ、華やかにフィナーレを迎えました。
鳴り止まない拍手の中、アンコールで演奏されたのは『めぐり逢い』ヴォーカルバージョン。再び4人のシンガーたちが美しいアンサンブルを聴かせてくれました。そして、最後に会場から今回参加したパリ2024大会のメダリストたちに盛大な拍手が送られ、約2時間半に渡るコンサートは盛況のうちに幕を閉じました。
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