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2011/07/12

アジアアスリートフォーラム2011を開催

 日本オリンピック委員会(JOC)が主催する「アジアアスリートフォーラム2011」が12日、東京都内で行われました。今回のフォーラムは、JOCアスリート専門部会とOCA(アジアオリンピック評議会)アスリート委員会が中心となり、「アスリート発、スポーツの力」をテーマに、日本のオリンピアン、パラリンピアンによる社会とのかかわり方などの事例紹介を通じて、社会におけるスポーツの役割とその影響力を参加者とともに考え、認識することを目的に開催されました。

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「アスリート発、スポーツの力」をテーマに行われた
アジアアスリートフォーラム2011(フォートキシモト)

 はじめに、司会を務めるJOCアスリート専門部会員の小谷実可子氏が、開会の挨拶とアジア5地区からの招待アスリートを紹介。続いて、OCAアスリート委員のマンスール氏(オマーン)が、同委員会によるアンケート調査報告を行いました。調査の内容は、アジア各国におけるトレーニング環境、経済的サポート、ドーピングコントロール、キャリアトランジションの4事業に対するアスリートの意識調査で、アジアで実施された国際総合競技大会に出場した1000名のアスリートからのアンケート結果を基に分析されたリポートが発表されました。

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小谷実可子氏(フォートキシモト)

 アスリート講演者として最初に登壇したのは、国際オリンピック委員会(IOC)アスリート委員長を務め、バルセロナ、アトランタオリンピックの陸上男子短距離で計4個の銀メダルを獲得したフランク・フレデリクス氏(ナミビア)。貧困な母国で未来に希望が持てなかった少年時代にスポーツと出会い、自らの人生が変わったことについて、「スポーツは大きなインパクトを持つ。社会に対して、人間に対して大きな影響を与えてくれる」と語りました。さらに、大学でスポーツと学業との両立に勤しんだことを話し、「知識の土台をアスリートに与えなくてはならない。アスリートにとって教育は欠かせないもの」と、スポーツにおける教育の大切さを訴えました。

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フランク・フレデリクス氏(フォートキシモト)

 2人目は、IOC委員とOCAアスリート委員を務め、スケート女子ショートトラックで長野、ソルトレイクシティー、トリノオリンピックの3大会で金2個を含む5個のメダルを獲得した楊揚氏(中国)。冒頭、東日本大震災の被災者にお見舞いの言葉を述べた楊揚氏は、自らが2008年の北京オリンピック開会3ヶ月前に起こった四川大地震の際に、ボランティアとして被災地を慰問した時のエピソードを紹介しました。そして、「スポーツは未来を開拓してくれる。私の未来もスポーツが創ってくれた。今は、23年間の競技生活を通じて夢を叶えさせてくれたスポーツに恩返しをしているところ」と、スポーツの持つ力について語りました。

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楊揚氏(フォートキシモト)

 第二部では、日本人アスリート4人が講演しました。先陣を切ったのは、アテネオリンピックで金メダルを獲得したハンマー投げの室伏広治選手。「Sport Unites Us」をテーマに、音楽編集を含め、自ら制作した映像を使って、流暢な英語でスピーチしました。偉大なコーチであり、父である重信氏との幼少時からの思い出や、東日本大震災の被災地を訪れた時に、現地の中学生とのふれあいを通じて感じたことなどを話し、「スポーツは魔法。する人、見る人を問わず、すべての人を一体にしてくれる。政治や仕事を超えて、世界を一つにするもの」と熱弁を振るいました。

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室伏広治選手(フォートキシモト)

 続いて、長野、ソルトレイクシティーオリンピックの男子スピードスケートで金・銀・銅と3つのメダルを獲得した清水宏保氏が、「アスリートのセカンドキャリアにおける社会貢献」について講演。身長162cmと恵まれた体格ではなく、さらに重度の喘息患者であったことから、幼少時は指導者や医師から運動することを不安視されていたことを明かしました。それでも練習を続けることで逆に喘息を克服し、オリンピックで金メダルを取るまでの選手になったという自身の経験を通じ、今後は運動療法など「スポーツと医療」について考え、子供たちや地域に還元していきたいと述べました。アスリートのセカンドキャリアについては、「現役のときは競技に専念して考えることはなかったが、今はJOCも様々な改革を行い支援してくれている。しっかりと学び、社会貢献できる立場になって、スポーツの力、アスリートの力を発信していきたい」と主張しました。

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清水宏保氏(フォートキシモト)

 パラリンピアンからは、まずライフル射撃の田口亜紀選手が登壇。「私に影響を及ぼしたスポーツの力、そして私が発するスポーツの力」と題し、25歳のときに障害を負った話から、競技との出会い、パラリンピック出場に至るまでの経験を語りました。そして「目標を持って努力することで、必ず何かを達成できる」とスポーツの力を訴えました。

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田口亜紀選手(フォートキシモト)

 最後の講演者は、陸上競技・走り幅跳びのパラリンピアン・佐藤真海選手。「スポーツの力は生きる力」をテーマに、田口選手と同じく英語によるスピーチを行いました。自らを「スポーツの力に救われた一人」と話し、「スポーツは人生を豊かにする。スポーツをすることで人々や社会との繋がりを感じることができ、それがパワーになる。日本のアスリートたちが社会に貢献できるように、これからもスポーツの価値や生きる力を伝えていきたい」と力を込めて誓いました。

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佐藤真海選手(フォートキシモト)

 会場と全登壇者との質疑応答を経て、最後に荒木田裕子JOCアスリート専門部会長・OCAアスリート委員長が閉会の挨拶を行いました。「アスリートは日頃から多くの人々にサポートされている。皆が社会に対して、それをどのようにお返ししていこうかと考えている」と述べ、東日本大震災の際に、普段は応援される側のアスリートたちが、様々な支援活動を通じて応援する側に回ったことについて、「恩返しをしたかった」とアスリートの思いを代弁しました。「アスリートがそれぞれのベストを尽くせば、国籍・宗教・性別を超えて感動や夢、希望を与えられる。それを達成するためには、自分たちが社会の一員だということを決して忘れてはいけない」と、社会におけるスポーツの役割とその影響力について説き、アジアアスリートフォーラム2011は幕を閉じました。

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荒木田裕子JOCアスリート専門部会長・OCAアスリート委員長(フォートキシモト)