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2023.01.24 選手強化

「令和4年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催

「令和4年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
高橋尚子JOCアントラージュ専門部会長(写真:フォート・キシモト)

 日本オリンピック委員会(JOC)は12月17日、オンラインによるWebセミナー形式で「令和4年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催しました。

 このセミナーは、ジュニア期のトップアスリート(10歳~18歳)の保護者を対象に行われ、家庭で多くの時間を共有し、大きな影響力を持つと考えられる保護者が、ジュニアアスリートへの正しい関わり方、助言の仕方を学ぶことによって、親子がスポーツを通じて実りある人生を実現する可能性を高め、競技力の高いアスリートの育成を目指しています。

 はじめに、高橋尚子JOCアントラージュ専門部会長が挨拶し、本セミナーの主旨、目的を説明。「ジュニアアスリートに最も影響力を持つ存在は保護者と答えるケースが非常に多い。特にジュニア期は著しく成長する時で、子ども達が悩んだり、苦しんだりしている中、保護者の皆さんがそばで寄り添い、支える存在でいてもらいたい。このセミナーを受けて改めて皆さんの決意、またどのような保護者を目指していきたいかという思いを頭に持ちながら聞いていただきたい」と述べました。

「令和4年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
小谷常務理事と高橋部会長のトークセッション(写真:フォート・キシモト)
「令和4年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
上田大介JOCアントラージュ専門部会員

■「アスリートと保護者の関わり方」についてクロストークセッション

 本セミナーの最初のプログラム「アスリートと保護者の関わり方」では、小谷実可子JOC常務理事が登壇し、高橋部会長とのトークセッションが行われました。
 はじめに、小谷常務理事は自身のジュニア期の親との接し方について、「競技のことを詳しく知らない親だったので、食事等の栄養面のケアや試合で使う競技用の水着の装飾をしてもらうだけだった。競技に干渉してこなかったので親子と競技との距離間は心地よかった」と話し、ジュニア期に単身アメリカに渡った時のことを「留学すると話した際に猛反対していた母が日本を離れる時に号泣していた姿が忘れられず、アメリカに行くからには絶対に強くなるまで帰ってこられないという覚悟に変わった」と話し、1年2か月の留学期間中は親子間での文通が大きな励みになっていたと振り返りました。
高橋部会長は大学卒業後の進路を決める際に教職の道に進むか競技を続けるか悩んだことを振り返り、「自分の人生は自分で決める。自分で責任を持って最後は自分の進みたい道を決める」と意志を貫いたことを話し、「この選択がよかったと思ってもらえるように競技で結果を出すという決意に繋がった」と話しました。
 小谷常務理事は、現役時代から社会人としての立ち振る舞いについて家族から指導や助言があったことを振り返り、「アスリートとしての人生は短く、ほんの一部。競技だけではなく人として豊かになってほしい」と話し、このプログラムを終えました。


■「保護者が知っておきたいSNSの危険性と有効性」について上田大介JOCアントラージュ専門部会員が解説

 次のプログラムでは「保護者が知っておきたいSNSの危険性と有効性」について、上田大介JOCアントラージュ専門部会員が講義を行いました。
 はじめに、ソーシャルメディアの定義や競技活動を続ける中でSNSがもたらすメリットやデメリットを話し、「スマホには少なからず自分にとって不利益な情報が入っています。もしそんな情報が流出してしまったらどうするか」と問いかけ、SNSの使い方について注意喚起を促しました。
講義では、過去にSNSが起因となったトラブル事例を紹介しながら、「SNSで失敗しないための3つの見直し」として、「過去の情報」を見直すこと、「つながり」を見直すこと、「パスワード」を見直すことの重要性が解説されました。
続いて「SNSで失敗しないための3つの習慣」として「危険な時間帯」を意識することを挙げ、就寝直前や試合後、また、食事の前後、特にお酒がある時は絶対に使わないこと。嬉しい時、楽しい時にも使わないことが重要だと解説しました。
次に「送信直前」に一旦冷静になることとし、「一度投稿したものは消せません。送る前に最後に必ずチェックすることが大切」と話しました。そして、3つ目の習慣として常に「ファクトチェック」することを挙げ、「誰も傷つけない、誰も傷つかないことが大切」と話しました。最後に「自分の価値と将来を守り、より良いキャリアを築くためにソーシャルメディアを正しく理解し、正しく向き合うための行動をお願いします」と訴え、このプログラムを締めくくりました。

「令和4年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
小口貴久JOCアスリート委員(写真:フォート・キシモト)
「令和4年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
JOCアントラージュ専門部会土屋裕睦部会員(写真:フォート・キシモト)

■「オリンピズム」について解説

 次のプログラムでは小口貴久JOCアスリート委員が登壇し、「オリンピズム」について解説。冒頭にオリンピックを取り巻く昨今の状況を踏まえ、オリンピズムについて学ぶ意義を説いたうえで、オリンピックの起源や理念を解説し、『調和のとれた人間、平和でより良い世界、平等(民主主義)』のオリンピックの3つの思いが紹介されました。
続いてオリンピックモットーである「より速く、より高く、より強く」については「ここで使われる『より』という言葉には、相手と比べてという意味ではなく、今の自分を越えられる自分を目指し、永遠に挑み、努力し続けるという意味が含まれています」と解説し、東京2020大会からこの理念に「together(共に)」が追加されたことが紹介されました。

■「トップアスリートとして成長するために保護者ができること」について土屋裕睦JOCアントラージュ専門部会員が解説

 次にJOCアントラージュ専門部会土屋裕睦部会員が「トップアスリートとして成長するために保護者ができること」について、講義を行いました。
 はじめに「スポーツをすると良い性格になるのか」という問いに対し、未だ明確な研究結果が出ていないことを前置きし、スポーツ経験者に共通する情緒的特徴・思考的特徴・行動的特徴があることを説明。スポーツを通して社会的に望ましい性格傾向が備わることが多いことが解説されました。
続いて、オリンピアンを心理的に支えた人に関するアンケート結果では、年代が進むにつれて保護者からコーチへ移行していく事例が多いことが紹介され、アスリートの発育発達を考慮したスポーツ活動の必要性を説き、発達段階と心の成長について解説されました。
年齢や成長と共にスポーツに対する外発的動機付けから内発的動機付けへ移行する過程を解説し、アスリートの成長を支える保護者の関わりについて、ティーチングからコーチングへ導いていくことの重要性を述べ「アスリートの自立性を育むためには『褒める』から『認める・任せる』ことに委譲しながら心理面で支えてあげることが大切」としてプログラムを終了しました。

「令和4年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
オリンピアンの水鳥寿思氏(体操競技)(写真:フォート・キシモト)
「令和4年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
オリンピアンの加藤ゆか氏(競泳)(写真:フォート・キシモト)

■「アスリートと保護者・指導者の関係性」についてパネルディスカッション

 本セミナー最後のプログラム「アスリートと保護者・指導者の関係性」では、土屋裕睦部会員がモデレーターを務め、オリンピアンの水鳥寿思氏(体操競技)、加藤ゆか氏(競泳)、小口貴久氏(リュージュ)をゲストに迎えてパネルディスカッションが開催されました。
パネルディスカッションでは、「心が折れかけた時」「学校の成績や進路で迷った時」「保護者や指導者とぶつかった時」をテーマに、それぞれの思いが語られました。
水鳥氏は「ジュニア期は父親に指導してもらっていたが、練習の愚痴や相談役を母親が果たしてくれていた。進路を決める際も自分の意思を母親経由で父親に伝え、橋渡しになってくれた。そういった思いを受け止めてくれる存在があったのが良かったと思う」と振り返りました。
加藤氏は27年間の競技生活を振り返り、「高校の頃に競技を辞めたいと思った時、初めて母親に相談したら優しい言葉を返してくれた。その言葉を受け、改めて自分と向き合った時、オリンピックに出場する夢を叶えたいと思い、続ける覚悟ができた」と家族の支えがあって競技を続けられたことを述べました。
小口氏は競技を続ける中で心が折れかけた時のエピソードとして「リュージュを辞めたいと思った時に親に相談したこともあったが、親からは止められなかった。その親の反応に自分自身、反発して競技を続けた」と振り返りました。
進路を決める際のエピソードについて話が及ぶと加藤氏は大学に入学した際のことを振り返り、「高校三年間で自己記録を出すことができなかったので、新たな環境で競技に打ち込みたいと思い、大学巡りをした。山梨学院大学で良いコーチに出会い、新しい仲間と競技に向き合えたことで水泳が好きだという気持ちを引き出してくれたことが結果に繋がったと思う」と大学での出会いに感謝していることを話しました。そして、「自分で考えて、決めたからこそ、その先の大学生活がうまくいった。仮に人に勧められた進路で失敗した時、それを人のせいにしてしまいそうだと思った」と、自身で進路を決めた理由を述べました。
高校時代から海外遠征が多かったという小口氏は先生方が補習授業をしてくれていたと話し、将来展望について「競技人生を終えた後、教員になることを見据えて教育学部のある大学に行こうと思った」と当時の心境を振り返りました。進路決定については「いろいろな選択肢や方向性を示してあげること、本人の意思を尊重して選ばせてあげることが大切」だと話しました。

「令和4年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
左から小口貴久氏(リュージュ)、加藤ゆか氏(競泳)、水鳥寿思氏(体操競技)、土屋裕睦部会員(写真:フォート・キシモト)
「令和4年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
「令和4年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催(写真:フォート・キシモト)

 続いてジュニア期に保護者や指導者とぶつかった時について、水鳥氏は「楽しいと思って始めた体操だったので自分が嫌でもやり続けた。一方で、部の方針だからやりなさいと言われたトレーニングもあったが意味がわからない中やらされることへの嫌悪感があった。なぜそれをする必要があるのかコミュニケーションを取って理解させることが大切」と自身の経験を踏まえて話しました。
セッションの最後に水鳥氏が「若い時から結果を出している人が将来必ずしも伸びるというわけではないと思う。長い競技人生の中で良い時も悪い時も受け止めて、どんな時でも応援するよ、という姿勢で子どもと接してほしい」と話すと、加藤氏は「子どもにとって親は支えであり、協力者であり、なくてはならない存在だと思うので、一番近くで支えてあげてほしい」、小口氏は「スポーツだけではなく、視野が広がるような視点を持っていただきたい。ジュニア期に気付かなくても、将来、振り返った時に気付くこともあると思う。保護者の皆さん含めTEAM JAPAN一丸となって高みに上っていけるようアスリートを支えていきたい」と話し、パネルディスカッションが終了しました。
すべてのプログラム終了後、セミナー参加者は「これからどのような、何ができる保護者を目指しますか?」という質問に対する答えや決意をコメント欄に記入。そして、それら保護者の声が画面を通じて紹介、共有されました。

 最後にまとめとして、高橋部会長が総括。「保護者の在り方は様々だが、『認めてあげること』『話を聞いて寄り添ってあげること』そして、『一番の応援者になること』が大切。互いにコミュニケーションを取りあって一番良い関係性を築いていっていただきたい」と話し、セミナーを締めくくりました。

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