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2022.03.30 選手強化

「令和3年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催

「令和3年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
「令和3年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催 ※集合写真撮影時のみマスクを外しています
「令和3年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
高橋尚子JOCアントラージュ専門部会長

 日本オリンピック委員会(JOC)は3月20日、オンラインによるWebセミナー形式で「令和3年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催しました。

 このセミナーは、ジュニア期のトップアスリート(10歳~18歳)の保護者を対象に行われ、家庭で多くの時間を共有し、大きな影響力を持つと考えられる保護者が、ジュニアアスリートへの正しい関わり方、助言の仕方を学ぶことによって、親子がスポーツを通じて実りある人生を実現する可能性を高め、競技力の高いアスリートの育成を目指しています。

 はじめに、高橋尚子JOCアントラージュ専門部会長が挨拶し、本セミナーの主旨、目的を説明。「17歳から18歳ごろまで一番自分に影響力を持つ存在は保護者という風に答えているアスリートが非常に多いということから、保護者の皆さんの存在の大きさというのがわかると思います。相談相手になることや、道を一緒に考えて示すことも保護者の皆さんの役割ですし、共に学び成長していただける存在になっていただきたく、このセミナーではいろいろなことをお伝えしながら皆さんと学びの時間にしていければと思っております。また、このセミナーを受けて改めて皆さんの決意、またどのような保護者を目指していきたいのかという思いを聞いていきたいと思っております。そういった思いを頭に持ちながら聞いていただければと思います」と述べました。

「令和3年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
千田健太さん

■「オリンピズムについて」千田健太氏が解説

 本セミナーの最初のプログラムは「オリンピズムについて」。2008年北京オリンピック、2012年ロンドンオリンピックに出場し、ロンドン大会では男子フルーレ団体で銀メダルを獲得した千田健太さんが講義を行いました。

 はじめに、国際オリンピック委員会(IOC)が目指すオリンピズム=オリンピック精神について解説。特に「エクセレンス(卓越)」「リスペクト(敬意/尊重)」「フレンドシップ(友情)」の3つのオリンピックバリューについて、自身の経験をもとにした具体例を交えながら「競技人生において、この言葉の重要性というのは非常に表れていたと感じます」と振り返りました。そして、「多くのアスリートはずば抜けた競技力や技術力だけではなく、人間力といった要素を体現している選手が非常に多いと思います。 大切なのは自分自身がその価値を押し付けられるのではなく、自分の中で理解して、競技人生に反映していくことだと思います」と語りました。

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杉田正明JOCアントラージュ専門部会部会員

■「コンディショニング」について

 続いて「コンディショニング」について、日本体育大学教授の杉田正明JOCアントラージュ専門部会部会員が講義を行いました。
 
 まず、体力には筋力や持久力などの行動体力だけでなく、防衛体力もスポーツパフォーマンスには重要であり、規則正しい生活習慣や十分な睡眠、栄養バランスのとれた食事など日々の積み重ねが防衛体力を高めることにつながると説明。また、発育発達の速度は大きな個人差があるため、特にジュニア期においては勝敗や結果に一喜一憂することなく、コンディショニングや体の使い方などの土台作りを行い、指導者は高校生期までの動機付けを意識した指導をすることが重要だと語りました。
 さらに、2002年シカゴマラソンで当時の日本記録を樹立した高岡寿成さんの事例や論文からリカバリーの重要性を説明し、「アスリートは自分の体を観察、科学し、知ろうとすること、自分の体は自分でしか守れないと常に考えて行動するということがとても大事だと思います」と自身の考えを伝えました。最後に、「アスリートは、数ある選択肢の中から自分自身にとって最適なものを取捨選択して実践していくことが求められます。そのためには、知識や能力を存分につけ、自分で自立していくことが重要です。 なぜそれをやるのか、やらなければいけないのか、やった方がいいのかということを自分自身で理解し、自分にとって最適なものを常に選んで実践していただきたいと思います」と参加者にエールを送りました。

 ここまでの本セミナーの前半パートを終えたところで、高橋部会長が総括。それぞれの講義内容を振り返りながら「今日からできることはたくさんあったかと思いますので、日常生活の中での意識改革、そしてそれを日誌に書く、データとして残しておくということをしていただきたいなと思います。自分自身が自分の体を知ることももちろんですが、保護者の皆様が子どもの体調を一番近くで知ることもとても大切なことだと思いますので、ぜひ参考にしてパフォーマンス、体作りをしていただければと思います」とまとめました。

「令和3年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
土屋裕睦JOCアントラージュ専門部会部会員

■「保護者が知っておくべきアスリートのメンタル」

 後半の最初のプログラムは「保護者が知っておくべきアスリートのメンタル」と題し、大阪体育大学教授である土屋裕睦JOCアントラージュ専門部会部会員が講義を行いました。

 まず、土屋部会員はスポーツにおけるメンタルは12種類あり、各要素を紹介したうえで、細かく要素として見ていくことで自分の強みや改善点が見えてくると説明。さらに、具体的な取り組みを挙げ、メンタルを向上させる方法などを紹介しました。また、スポーツ活動を通じて身体的活動、意志的活動、情緒的活動、知的活動、社会的活動を体験できることより、人間的成長を促すことにつながると述べたうえで、これらを最大限に享受できるような支え方が重要だと説明しました。
 最後に、土屋部会員は「ついつい我々保護者は子どもの成長で気になることがあると先走ってしまいがちですが、それぞれの年代にやるべきことがあります。そのため、年代や成熟度に応じて子どもとの関わり方を変化させるなど、私たち保護者も成長していくことが大切だと思います」と述べました。

 また、講義の内容を受けて高橋部会長は「保護者の皆さんと子どもたちの関係も、やはり心というのがすごく大切だと感じました。アスリートとしては、一緒に悩んでくれる味方がいるということがすごく心強いことだと思います。保護者の皆さんには、ぜひそんな夢を一緒に追いかける存在であっていただきたいなと思います」と呼びかけました。

「令和3年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
三宅宏実さん(左)、羽根田卓也選手(右)
「令和3年度第2回ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
三宅義行さん(左)、吉井妙子さん(右)

■「アスリートの社会的成長は」をテーマにパネルディスカッション

 次に、本セミナー最後のプログラムとして「アスリートの社会的成長は」をテーマにしたパネルディスカッションを実施。土屋JOCアントラージュ専門部会員がモデレーターを務め、2016年リオデジャネイロオリンピックで銀メダルを獲得した羽根田卓也選手(カヌー・スラローム)、2012年ロンドンオリンピック銀メダル、2016年リオデジャネイロオリンピックで銅メダルを獲得した三宅宏実さん(ウエイトリフティング)、1968年メキシコシティオリンピックで銅メダルを獲得し、三宅宏実さんの父、コーチでもある三宅義行さん、スポーツジャーナリストの吉井妙子さんが参加しました。

 ここでは羽根田選手、三宅宏実さんが競技を始めたきっかけや競技を始めて困難に感じたこと、競技を通じて成長したことについてそれぞれの経験を振り返りながら語りました。また、三宅義行さんは保護者、コーチとしての子どもとの関わり方や指導方法について、吉井さんはトップアスリートの保護者を取材してきたこれまでの経験から、各選手の親の子育ての特徴や共通項を紹介。途中、セミナー参加者からの寄せられた質問の学業との両立について、練習と休息についてなどに対するアドバイスを送りました。

 パネルディスカッションの最後にはセミナー参加者へのメッセージとして、 三宅義行さんは「ジュニアから始まって競技生活が20年前後ありますが、 そののち人生は50年、60年あるわけです。20年の競技生活のうちに、残りの5、60年をどう生きるのかということを考え、いろいろな話し合いをしながら親も子も成長していけたらいいのかなと思います」、三宅宏実さんは「私自身、自分の限界にチャレンジすることがすごく好きです。失敗することもたくさんありますが、失敗を恐れずにたくさんチャレンジしていきながら、それぞれの夢に向かって頑張ってほしいなと思います」、羽根田選手は「スポーツはただ体を動かして、誰かと競うだけではなく、いろいろな出会いや挑戦ができたり、その後の人生の可能性をたくさん広げてくれる素晴らしい生き方の一つです。金メダルをとるためや、成績を出すためにやらせるのではなく、人生を健やかに前向きに過ごすための一つの手段として、スポーツというものを捉えていただいて、その素晴らしさ、可能性を信じてお子さんと一緒に寄り添い、付き合っていただけるとすごく嬉しいです」とエールを送りました。

 すべてのプログラム終了後、セミナー参加者は「これからどのような、何ができる保護者を目指しますか?」という質問に対する答えや決意をコメント欄に記入。そして、それら保護者の声が画面を通じて紹介、共有されました。

 最後にまとめとして、高橋部会長がセミナー全体や保護者から寄せられたコメントを総括。「やはり人間力を高めることが、アスリートにとって大切です。愛される選手となり、長い時間、若きアスリートたちやこれからアスリートを目指す人たちの見本になってもらいたいと思います」と話し、セミナーを締めくくりました。

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