JOCが年1回発行している広報誌「OLYMPIAN」では、東京2020オリンピックでメダルを獲得した各アスリートにインタビューを実施しました。ここでは誌面に掲載しきれなかったアスリートの思いを詳しくお伝えします。
赤穂 ひまわり(バスケットボール)
女子バスケットボール 銀メダル
■リラックスして楽しめた無観客大会
――開会式に参加されて、オリンピックの最終日に試合をして、その後閉会式に参加されているということは、オリンピックを一番楽しめたかもしれませんね。
そうですね。本当に長かったです(笑)。
――この長い戦いを終えて、今の気持ちはいかがですか。
オリンピック期間も長かったですが、加えて事前合宿も4月に始めて準備をしてきたので、その期間も含めると本当にすごく長かったです。金メダルはとれませんでしたが、メダルを獲得して最高の形で終わることができて、努力が報われたなと思います。
――赤穂選手は初のオリンピックでした。バスケットボールの国際大会とオリンピックの違いは何か感じられましたか。
注目度が本当に全然違うと感じました。オリンピックでは、バスケを普段そんなに見ない人も試合を見てくださって、メッセージいただくこともありました。多くの方々に見てもらっているんだなっていうのを実感しました。
――オリンピック、すごいですよね。
赤穂 いや、本当にすごいです(笑)。
――ただ、お客さんがたくさん入っている状態で試合をしたかったですよね。
開会式なども、お客さんが満員だったら本当にすごいんだろうなと思いながら参加していました。やはりそこはちょっと残念です。
――例えば無観客開催ですと「コーチの声が聞こえてやりやすい」という声もあります。赤穂選手にとっては無観客と有観客との違いはどのように感じていましたか。
最初は「どんな感じなんだろう」と思っていましたが、やってみたら、無観客はすごくやりやすかったです(笑)。良い意味で緊張もしませんでしたし、観客の皆さんがいたら絶対、どんなに頑張っても緊張しちゃっていたと思うのですが、無観客だとリラックスして楽しめた部分があったと思います。声も通りやすくて、指示も聞きやすかったので、その点も良かったと思います。でも、そうは言っても、やはり観客の皆さんがいるなかでやりたかったという気持ちはあります。
■夢の舞台に立てた喜び
――大会は1年延期となりました。この5年間、とくに延期になったこの1年について、赤穂選手はどのように感じていましたか。
私自身はまだ若いので、この1年で自分が成長できると思いましたし、成長する時間が手に入ったとプラスに捉えることはできました。ただ、チーム全体で考えると、この1年間にケガ人が増えたことも含めていろいろなことが起きて、少し不安になりました。
――そのなかでこの銀メダル。結果に関して、選手自身は思い通りのものだったのか、期待以上のものだったのか、どのように感じてらっしゃいますか。
日本のプレーをきちんとすれば強いと思っていました。金メダルが目標でしたから、目標に届かなかったことは悔しいです。おそらく、皆さんが思っているよりも選手たちは「できる」と思っていました。今までベスト8の壁も破れなかったのに、その壁を破り、さらにベスト4の壁も破って銀メダルをとれたことはすごいことをしたのだろうなとは思います。自分たちを信じてきた結果だとも思います。
――トム(ホーバス・トーマス・ウェイン)ヘッドコーチも、「選手たちはもっとできるからその能力を引き出した」ということをおっしゃっていましたが、コーチの存在はいかがでしたか。
本当に厳しい方です(笑)。心が折れそうになることもたくさんあって、辞めたくなることもたくさんありました。でも、私が成長できたのも試合で使ってくれたトムさんのおかげなので、信じてきて良かったなと思います。
――ヘッドコーチを信じて、そして自分たちの持つ力を信じて、決勝まで勝ち上がってきました。東京2020オリンピック決勝という最高の舞台で世界最強のアメリカと戦うシチュエーションというのも、なかなかないことだと思います。
すごいですよね。夢みたいな舞台に立てたという気持ちです。したくてもできるような経験じゃないと思います。この経験を大事にして、次に活かしていかないといけないと思います。
――悔しいという言葉もありましたが、夢のような舞台も経験できた。現実的にここをやれば勝てるという道のりも見えてきたのではないでしょうか。
最後の最後は、あまり良いバスケができなかったので、そこはやり残した部分です。次はもっと美しい、日本の良いバスケをアメリカ相手に見せたいなと思います。
――赤穂選手はご両親、お姉さん、お兄さんと全員バスケットボール選手のバスケットボール一家です。今回の大活躍に対する反応はいかがでしたか。
みんな「おめでとう、すごいことだよ」と褒めてくれました。ただ、プレーの細かい部分についてはあまり言われなくて、「本当にすごい舞台だから、今までやってきたこと、自分のすべきことを発揮して、いつも通りのプレーを頑張れ」ということは言われていました。
――メダルをとったあと、会話などはされましたか。
お疲れ様って言われました(笑)。まだゆっくり会話はできていないですね。
――赤穂選手は、JOCネクストシンボルアスリートに選ばれています。オリンピックに対する考え方が変わったり、責任感が出てきたりしましたか。
選んでもらえたからには、その名に恥じないようにプレーしなきゃいけないなと思っています。ここで成長を止めてはいけないなと感じていますし、「ネクスト」ですから次に次にと成長していかなくてはいけないなと考えています。
■経験を無駄にせず今後に活かす
――赤穂選手が、オリンピックを意識したのはいつでしょうか。
オリンピックは、小学生の時は全然考えていませんでしたね。中学生になって……8年前、東京2020オリンピックの開催が決まった時に、初めて「オリンピックに出たい」と意識しました。22歳になる年だから少し若いかもしれないけど、目指せば届かない夢ではないなと思い、そこから夢から目標に変わりました。
――赤穂選手もいろいろなバスケットボールの大会や試合を経験していると思いますが、その中でも東京2020オリンピックは最高峰の舞台だと感じましたか。
そうですね。でも、他の大会ももちろん大事ですよ。
――選手村も堪能できましたか。
2回くらい食事をしに行きましたが、基本的に選手村には入っていなくて、味の素NTC(味の素ナショナルトレーニングセンター)に滞在していました。ずっと慣れた環境にいることができたので、そこはプラスだったと思います。
――開会式、閉会式では何か交流などありましたか。
開会式の前に、男子バスケットボールのアメリカ代表に選出されているNBA選手が何人かいたので、一緒に写真を撮ってもらいました(笑)。
――それもいい交流ですね。閉会式ではプロ野球選手とも交流できましたか。
侍ジャパンですよね。閉会式で一緒に写真を撮りました(笑)。ミーハーなので田中将大選手とも一緒に写真を撮ってもらいました。ミーハーなんで(笑)。
――あらためて今後の目標を教えてください。
今回のオリンピックで、通用する部分と通用しない部分がはっきりしました。また、オリンピックの空気をしっかり体験することもできましたし、すごく良い経験ができたと思っています。この経験を無駄にせず活かせるように頑張って、3年後のパリオリンピックで、今回かなわなかった金メダルをとりたいと思います。
――今大会、女子バスケットボールがすごく注目されましたが、小学、中学、高校の部活や体育の授業でもすごく人気のあるスポーツだと思います。バスケをやりたい、オリンピックに出たいと思った子どもたちにメッセージをお願いします。
こうしてバスケッが注目されるのはすごくうれしいこと。それで興味を持って始めてくれる子どもたちがいることがすごくうれしいので、少しでも興味を持ったらバスケットをぜひやってみてほしいです。見ていても楽しいですし、やってみても楽しいと思います。日本人でも世界で戦えることを証明できたので、皆さんにも頑張ってほしいと思います。
(取材日:2021年8月9日)
■プロフィール
赤穂 ひまわり(あかほ・ひまわり)
1998年8月28日生まれ。石川県出身。小学3年の時に本格的にバスケットボールを始める。中学で地元を離れて千葉のバスケットボールの名門、昭和学院中学・高校に進学し、高校3年の時にはインターハイ、全国高等学校選抜優勝大会で準優勝を果たしベスト5に選ばれる。2018年のワールドカップで初の日本代表入り。19年のアジアカップで優勝した。21年東京2020オリンピックでは女子バスケットボールで準優勝し、史上初の快挙に貢献した。デンソーアイリス所属。
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