JOCが年1回発行している広報誌「OLYMPIAN」では、東京2020オリンピックでメダルを獲得した各アスリートにインタビューを実施しました。ここでは誌面に掲載しきれなかったアスリートの思いを詳しくお伝えします。
素根 輝(柔道)
女子78kg超級 金メダル
■練習量と気持ちで手にした栄冠
――初めてのオリンピック出場を果たし、女子78kg超級で金メダル獲得を果たしました。今のお気持ちを教えてください。
ずっとオリンピックでの金メダルを目指してきたので、本当にうれしい気持ちとほっとした気持ちがあります。
――日本勢として、最重量級では4大会ぶりの金メダルです。素根選手は7歳から柔道を始められたいうことで、ご自身が柔道を始める以前の記録となります。それだけ久しぶりの金メダルということになりますが、どのような思いでしょうか。
日本女子柔道の最重量級が金メダルから遠ざかっていたことは知っていたので、自分がこの東京2020オリンピックで必ず金メダルをとるという気持ちで試合に臨みました。
――金メダルを獲得できた最大の要因は何でしょうか。
まずは誰にも負けない練習量と、自分を信じて絶対に負けない、絶対に勝ちにいくという強い気持ちです。この両方を持って試合に臨めたことが勝因だと思います。
――最重量級の中では体が小さい素根選手ですが、大きな選手と闘う上でご自身が大切にしていることは何ですか。
最も大事にしていることは組手です。自分は周りの海外選手よりも頭一つか、それ以上小さいので、組手という部分を妥協してしまうと、どうしても相手に投げられてしまいます。まずは組手を大切にして試合をしています。
■きつさや苦しみの先に
――今回のオリンピックでメダルをとったことで、女子では史上3人目の3冠(全日本選抜体重別選手権、世界選手権、オリンピック)を達成しました。
それはあまり気にしていなかったんですけど、いざ言われると、そうなんだと思ってうれしいものですね(笑)。
――東京でのオリンピック、そして日本武道館でのオリンピック。いつもの戦いと何か違いを感じましたか。
いえ、意外と今大会でそこまで緊張することもなく、すごく良い集中力で、一戦一戦試合に臨むことができました。全然緊張はなかったですね。
――柔道家として有名な木村政彦先生が掲げた「3倍努力」。素根選手の座右の銘とも伺っています。今回、その結果が表われましたか。
日頃の練習は、うれしいことよりも、きついことや苦しいことが多いのですが、そのなかでもめげずに頑張ってきて本当に良かったなと思いました。
――柔道勢では最速で日本代表に選ばれましたが、その分、海外の選手からはすごく研究された面もあったと思います。その点についてはどんな対策を練ってきましたか。
相手が研究できるということは、自分も研究できるということですから、そこはあまり気にしていなかったです。
■自覚と責任と誇りを持って
――女子52㎏級の金メダリスト、阿部詩選手とは非常に仲が良いと伺っています。
小学生の頃から知っていて、お互いに高め合ってここまで来られたので、自分も負けたくないなって思います。そういう意味でも、やはり良い存在だと思います。
――二人そろってオリンピックの金メダリストとなりました。オリンピックの価値や素晴らしさを今後どのような形で伝えて行こうと思っていますか。
オリンピックで金メダルをとったという実感はまだあまりないのですが、柔道でも、私生活でも、しっかり自覚と責任と誇りを持って、オリンピックチャンピオンとしてふさわしい人間になれるように過ごしていきたいと思います。
――柔道は日本のお家芸と言われます。金メダルをとることが求められるなかで、素根選手はプレッシャーとどのように向き合ってきましたか。
試合当日はそれほど感じていませんでした。ただ一方で、試合の日を迎えるまでの方がプレッシャーをすごく感じていました。でも、プレッシャーを感じるのは仕方ないことだと思うので、それも全て受け止めた上で、力に変えて戦わねばなりません。そこは割り切った気持ちで戦っていました。
――オリンピックを目指す、これから先の未来のオリンピアンたちにメッセージをお願いします。
しっかりと自分の目標を持ち、その目標に向かって進んでいくなかで、苦しいことやきついことがたくさんあると思いますが、自分を信じて乗り越えていってほしいと思っています。
――3年後のパリオリンピックに向けて抱負を一言お願いします。
パリオリンピックに向けての戦いが始まるので、またオリンピックに出場して金メダルを取れるように、目の前の大会一つひとつを大切に戦っていきたいと思っています。
――次の「3倍の努力」は何をされますか。
やることは変わらないです。毎日継続していくだけだと思っています。
■プロフィール
素根 輝(そね・あきら)
2000年7月9日生まれ。福岡県出身。小学校1年の時に柔道を始める。高校2年時の、17年世界ジュニア選手権で優勝。17年、18年世界選手権では混合団体で金メダルを獲得。19年世界選手権では個人として初優勝を果たす。同年、柔道では男女を通じて最速となる11月に代表に内定。21年東京2020オリンピックでは78㎏超級で金メダル、混合団体で銀メダルを獲得した。パーク24(株)所属。
関連リンク
CATEGORIES & TAGS