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2020.10.15 選手強化

「令和2年度ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催

「令和2年度ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
高橋尚子JOCアントラージュ専門部会長

 日本オリンピック委員会(JOC)は9月27日、オンラインによるWebセミナー形式で「令和2年度ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催しました。

 このセミナーは、ジュニア期のアスリート(10歳~18歳)の保護者を対象に行われ、家庭で多くの時間を共有し、大きな影響力を持つと考えられる保護者が、ジュニアアスリートへの正しい関わり方、助言の仕方を学ぶことによって、親子がスポーツを通じて実りある人生を実現する可能性を高め、競技力の高いアスリートの育成を目指しています。

 はじめに、高橋尚子JOCアントラージュ専門部会長が挨拶し、アントラージュ(監督、コーチ、家族などアスリートを取り巻く人々のこと)の意味や本セミナーの趣旨を説明。そして、10代の選手の多くが保護者を精神的な支えと考えていることから、「ぜひ、これからどんどん強くなっていく選手たちの道しるべに、皆さん方がなっていただければと思います。今回のセミナーでは知識的なことはもちろんですが、スポーツと子育てにおいて何を目的として行うことがいいのかというマインド的なことも知っていただき、子供たちの未来につなげていただければと思います」と呼びかけました。

「令和2年度ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
大阪体育大学の土屋裕睦教授

■アントラージュとして保護者ができること

  次に本セミナーの最初のプログラムとして、「トップアスリートのアントラージュとして保護者ができること」をテーマに、JOCアントラージュ専門部会員である大阪体育大学の土屋裕睦教授が講義を行いました。

 この中で土屋教授は専門とするスポーツ心理学の観点から「スポーツとこころの成長」「アスリートを取り巻くアントラージュ」について説明し、子供たちがジュニアからアスリートとしての自律性を持つユース年代へと移り変わる時期にあたって、保護者でないとできないことがあると話し、「それはひと言で言えば、子供たちの成長の可能性を信じて見守るということ。おそらくこの時期までに折に触れて褒めてあげたことで、子供たちは有能感、やればできるんだという思いが強くなっていると思います。ここから先は彼ら自身がアスリートとして、あるいは人間としてのキャリアを築いていく段階で、保護者はそれを認めながら、見守っていく。子供たちができないことに対して色々と気になるかもしれませんが、成長の可能性にまなざしを向けて見ていくことが重要だと思います」とアドバイスを送りました。

「令和2年度ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
日本体育大学の杉田正明教授

■コンディショニングの最前線

 続いて、アントラージュ専門部会員である日本体育大学の杉田正明教授が「コンディショニングの最前線」と題した講義を行いました。

 まず前提として『体力』とは、筋力や持久力など体を使って起こす能力である『行動体力』と、外からの刺激・ストレスに対する抵抗力や適応力である『防衛体力』の2種類があり、「この行動体力と防衛体力が合わさって、スポーツパフォーマンスが発揮されます」と説明した杉田教授。特に防衛体力に着目し、これを高めるためには睡眠、マッサージ、入浴などでのリカバリーが重要だということを述べました。

 そして、かつて医科学の面からコンディショニングをサポートしたアスリートの現役時代の日々の体温、睡眠時間、脈拍などを記録したシートや、これまでの研究データを紹介するとともに、講義のまとめとして「日本だけではなく世界では、どんどんリカバリー方策の強化が進んでいます。毎日のちょっとした体のケアの積み重ねが、最終的にはいい状態を作り出して、いい練習が継続でき、いい競技成績につながると思います。理想的な状態というのは色々な要素がありますが、まずは防衛体力を含め、しっかりと自分のコンディショニングを高めることが大事だと思います」と話しました。

「令和2年度ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
田辺陽子JOCアントラージュ専門部会副部会長

■アンチ・ドーピングについて

 次に「アスリートの価値を守る ~ドーピング検査に向けた心構え~」と題し、田辺陽子JOCアントラージュ専門部会副部会長が、アンチ・ドーピングの目的とルール、日頃から注意する点の2つをテーマに講義を実施。世界アンチ・ドーピング規程の成り立ち、10のアンチ・ドーピング規則違反と制裁、また、薬の成分の検索方法やサプリメントと漢方のリスクなどについて説明しました。

「令和2年度ジュニアアスリート保護者向けセミナー」を開催
左から高橋部会長、田辺副部会長、小谷実可子JOCアントラージュ専門部会員

■メダリスト体験談と子育てQ&A

 休憩を挟んだ後は「メダリスト体験談」として、高橋部会長、田辺副部会長に加え、小谷実可子JOCアントラージュ専門部会員が参加し、現役時代の家族との関わりなどについてそれぞれの経験を共有しました。

 小谷部会員は土屋教授の講義の内容を受けて、「私の母も、私の試合の成績が伸びなくても『大丈夫よ、あなたは』と子供の頃から言ってくれていました。なんの裏付けもないんですけど、母がそう言ってくれたことで私も『今はつらくても、きっと上手くいく』とプラスに考えられるようにつながっていきました」と、母から自信をもらっていたエピソードを紹介。一方、田辺副部会長は杉田教授の講義にあった睡眠の重要性と自身の現役時代を照らし合わせて、「私も選手時代はどれだけ睡眠時間が取れるかを心がけていたので、睡眠は競技力を高める大きな要因になるんだと改めて思いました」と振り返りました。

 また、メインテーマとなる保護者との関わりについて高橋部会長は、「自分のことを初めて認めてくれた」という小出義雄監督の指導方法や、それによって記録が飛躍的に伸びた経験を例に挙げ、「保護者の皆さんにはぜひ、お子さんの方を見ていただきたい。そして良いところをすくい上げて、自信をつけてあげてほしいと思います」と述べました。

 引き続き「メダリストに聞く子育てQ&A」が行われ、保護者から事前に募集していた質問に多く含まれていた「試合のとき、親はどうしたらいいのか」、「けが、スランプへの対応」、「進路」、「その他(コロナ禍のモチベーションなど)」について、高橋部会長、田辺副部会長、小谷部会員がそれぞれの経験、体験をもとに保護者へアドバイスを送りました。

■高橋部会長がセミナーを総括

 最後にラップアップとして、高橋部会長が今回のセミナーを総括。「どんな形であれ、保護者の皆さんの思いは必ず子供たちに伝わっています。もちろん結果を出すことが全てではありません。だからこそ、そうした取り組みの一つひとつが人間性であったり感謝の気持ち、何事にも一生懸命取り組むといった、人間的な成長につながっていきます。周囲から愛される、応援される選手になるように多くの人たちからの思いや愛情を注いであげること、これによってまたその選手が同じ愛情や思いを多くの人たちに返していくという成長にもつながっていくのではないかなと思っています。ぜひ、皆さんのお子さんがそういった選手になって、お会いできることを楽しみにしています」と締めくくりました。

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