日本オリンピック委員会(JOC)は11月24日、日本スポーツ記者協会とともに2017年度「スポーツジャーナリストセミナー」を味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で開催しました。本セミナーはオリンピック・ムーブメント推進事業の一環として、メディアと国内競技団体(NF)の相互理解を図ることを目的に行われています。今回は「平昌冬季大会での情報活動の展望と、進化するNFのSNS発信」をテーマに、国内スポーツジャーナリストやJOC加盟団体などから約110人が参加しました。
はじめに日本スポーツ記者協会の吉形祐司会長があいさつし、「選手の活躍により報道が盛り上がり、その結果新しい支援者やファンが開拓されていき、金銭的な支えが出来、結果強化が進んで選手の活躍につながるといった好循環が生まれていくのではないかと思います。平昌大会まで2カ月となりましたが、本セミナーがそういったシナジー(相乗効果)の一助になればと思います」と呼びかけました。
第1部は、対談と事例報告が行われました。最初に、「オリンピック冬季大会での日本代表選手団を取り巻く環境とメディア対応」と題して、ソチオリンピック日本代表選手団の副団長を務めた古川年正氏と、JOC広報専門部会の竹内浩副部会長が、冬季大会におけるメディア対応の現状や課題などを対談形式で議論しました。竹内副部会長がメディアからのSNSによる取材について状況を聞くと、古川氏は「新聞、テレビの皆さんは長い年月をかけてその選手を取材されているのだと思います。その中で、人間関係が生まれて、初めてSNSで取材をしても相手に通じる関係性ができている。そういう方から連絡をいただいたら、選手によっては対応することがあると思います」と回答。その上で、現地ではNFが試合前に会見を行うなど対応している現状を踏まえて、「事前会見が終わったら、選手が試合に集中して臨めるよう静かにしてあげてほしいと思います」と、参加したメディア関係者に理解を求めました。
次に、日本陸上競技連盟事業部の高橋祐哉氏が登壇し、「SNSを利用した日常の情報発信について」をテーマに事例報告を行いました。同連盟では2年ほど前から積極的にSNSを活用しており、各SNSの特性に合わせた情報発信を行っています。高橋氏は、「日本代表、陸上の価値アップ」「ファン獲得、距離を縮める」「定期的な情報発信」「陸上界全体をカバー」の4つのキーワード(目的)に基づいて、ファンやメディア関係者らを意識し、動画などを積極的に活用した投稿を行ってきたことを、具体例をまじえて紹介しました。そして、限られたリソースの中では事務局員や選手、ファンを“巻き込む”ことが重要だと語り、2020年を見据えて、「陸上に特化した情報だけを提供していても、ファンの獲得には限りがあります。2020年はスポーツ団体の枠を超えて協力する良いタイミングです。まずはハッシュタグ連携からでもいいので、共に協力したいという団体があればぜひお声がけください」と、幅広い連携を参加者に呼びかけました。
第2部ではまず、竹内副部会長が「平昌冬季大会のメディア対応の特徴」をテーマに、来年2月に迫った平昌オリンピック冬季大会における、取材対応に関しての情報提供を行いました。
続いて、「オリンピック取材における報道の課題と展望」をテーマに行われたパネルディスカッションでは、毎日新聞社の石井朗生運動部デスク、読売新聞社の大野展誠運動部主任、共同通信社の田村崇仁運動部次長、スポーツニッポン新聞社の首藤昌史スポーツ部次長、報知新聞社の久浦真一編集委員、日本放送協会の房野一尊スポーツニュース部副部長が、竹内副部会長によるコーディネートのもと、過去のオリンピック取材での課題や取材時におけるSNSの活用実態などについて話し合いました。この中で、多くの人が課題に挙げたのは、試合後にミックスゾーンと呼ばれるスペースで行われるテレビ向け取材と文字媒体向け取材の時間配分。これについては、大野氏が「もう少しルールができればスムーズにできるのでは」と提案するなど、解決に向けた活発な意見交換が行われました。また、取材におけるSNSの使用状況については、取材手法としての使用例はほとんど挙がらなかった一方、田村運動部次長からは「世界的にトップ選手がSNSに発表したものを報道するというのは常識化している」と海外での事例が共有されました。
最後に、藤原庸介JOC広報専門部会長が「メディアと選手、そして競技の相乗効果があってこそのアスリートファーストなのではないかと思います。ですから、今度の平昌、東京、それ以外の世界選手権やワールドカップでも、そういった相乗効果をうまく生み出していければと思います」とコメントし、セミナーを締めくくりました。
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