トリノ2006
トリノオリンピックに向けて Vol.2 情報・医・科学編
第20回オリンピック冬季競技大会(2006/トリノ)まであと6カ月。 |
左より村里敏彰、石毛勇介、大西祥平各氏。 |
・トリノ冬季大会での情報・医・科学サポートとは |
トリノ冬季大会での情報・医・科学サポートとは --情報戦略ではどのようなサポートを行っているのでしょうか。 村里:まずひとつに「ラグ」をなくすということです。選手達を情報の部分で他国からマイナスになることなく強豪国と同じ土俵の場にしっかり立たせてあげたいし、できればさらに心・技・体のすべてにおいてアドバンテージを持たせてあげたい。選手にいかに自信を持ってその場に立ってもらうかというサポートだと思うのです。 特にスキーの場合、スカンジナビアと中央ヨーロッパが中心になっている傾向があり、ファーイーストの日本にとっては、今ヨーロッパで何が行われているのか、という不安もでてきます。ルール改正の問題でも、できるだけ早く選手に情報を入れてあげなくてはならないのです。例えば今年、トリノ冬季オリンピックのジャンプ用スーツの選定を6月にドイツで他国チームの選手とコーチが集まって確認・検討しているなか、日本からは行けていないのです。 そういうところからすでにラグがあるわけです。こうしたことに対応するために、ヨーロッパにコーディネーターを1名置いています。今はインターネットで公平に情報が流れてくるようになりましたが、大会の場に行ってみないと把握できないこともあります。逆に情報の氾濫になってしまうこともありますから、リアル・インフォメーションをしっかり掴んでいかないといけないと思っています。 チーム・ジャパンに所属する外国人コーチからの情報も戦略のひとつです。外国人コーチは他国のことに幅広く精通しているため、情報密度が高いのです。この積み重ねも大切なことです。 --海外に長期間滞在している選手達のケアはどのように行っているのでしょうか。 村里:以前、4年間ヨーロッパでひとり暮らしをさせて、言葉や習慣など生活環境に慣れさせるということを行ったのですが、その選手の体質が偏食気味に変わってしまいました。必ずしも海外にいることがいいとは言えないわけで、その良し悪しの、悪しの部分をこちらで早く把握して計画を立ててあげるということが必要なのです。 石毛:ひとり暮らしは最初は新鮮でいろいろトライしていくのでしょうけれど、慣れてきてしまうと気付かないうちに体力的に落ちてしまったのでしょう。これは私達の反省でもあるので、今後も気をつけていきますが、離れている選手をどのように指導していくのかが大切ですね。 --科学サポートでは具体的にどのようなことをされているのでしょうか。 石毛:科学と呼ばれる人達は大きく分けて2つのことに関わっています。 もう1つは、バイオメカニクス的なもので、これは種目によって差があると思うのですが、よりよいパフォーマンスのために動きを分析することもそうです。アルペンスキーの場合、数年前からスキー板がカービングスキーに替わったことで、身体の使い方も変化しました。カービングスキーの特性をうまく引き出すために骨盤やハムストリングスに重点がおかれるようになったのです。それを選手にモーションキャプチャーを使って説明します。 バイオメカニクスには、ケガの予防ということもあります。これは医学的なこととオーバーラップするのですが、先ほどのアルペンスキーでいえば、膝の前十字靭帯損傷という大きなケガを起こさないために様々な力学的な実験を行い、身体が後ろに遅れて、無理に身体を立て直そうとすると、ひざの角度が90度近辺になった時に靭帯が切れてしまうので、その時は耐えないで、しゃがむように選手に伝えるなどしています。 |
- Vol.1 スピードスケート&ノルディック・コンバインド編
- Vol.2 情報・医・科学編
- Vol.3 勝つための大会直前コンディショニング