シドニー2000
がんばれ!ニッポン!シドニー大会レポート
高橋選手、日本女子陸上史上初の金メダルに笑顔
「このためにずっと練習して来たので、終ってしまってなんだか寂しい。また、明日から違う目標をもって楽しく走っていきたいと思います」過酷なはずの2時間23分14の走りを終えた直後の言葉は"ホッとした"でも、"悲願がかなった"でもなく、新たな挑戦への希望に溢れていた。
序盤、日本の市橋有里選手、山口衛里選手の一歩後ろについて、トップ集団の中でスタートした高橋尚子選手。ベルギーのレンダーズ選手が飛び出したが日本勢は一緒になってマイペースで進み、18キロ地点で市橋選手、高橋選手、ルーマニアのシモン選手の3人が飛び出した。そして22キロを過ぎた辺りからシモン選手と高橋選手の一騎打ちに。しかし先に仕掛けたのは高橋選手の方だった。
「シモンさんは手強いので並んでトラックに入りたくない」と思ったという高橋選手は33キロ辺りからスパートをかけて飛び出し、乱れのない走りを終始続けて、一途、大声援に沸くオリンピック・スタジアムへ。勝利の瞬間には顔一杯に笑顔を浮かべ、両手を広げた。
「これは、指導してくれた監督、助けてくれた方々など皆の力が結集して生まれた金メダル。私は選手の役割を受け持っただけ」と喜ぶ高橋選手との「金メダルを取ったら」という約束通り、小出監督は、髭を剃って、この記念すべき日を祝った。「楽しく走る」がモットーの、高橋選手の器の大きさが、日本陸上の壁を破った。
途中転倒した山口選手は7位入賞。また途中までレースをひっぱった市橋有里選手も15位に。「途中でお腹が痛くなってしまった。高橋選手との力量の差を感じた」という市橋選手だが、目標はもともとアテネ・オリンピック。今日の経験が4年後に大きく生きるはずだ。