アテネ2004
アテネに向けて
——アテネオリンピックは、'01年4月に『JOCゴールドプラン』が完成して以来、初めて迎える夏季大会ですね。
福田 『JOCゴールドプラン』はオリンピックの全メダル総数における獲得率を10年間で3.5%まで倍増させるという計画です。アテネ大会での目標数は、25個。この数字は、何としてもクリアしたいと思います。
——昨年4月に本部長に就任されて以来、ゴールドプランを実現すべく、強化本部として取り組んでこられた主な施策を教えて下さい。
福田 大きく3つ挙げることができます。1つめは、政府の特別予算として頂いた『日本復活プロジェクト』助成金を強化費として各競技団体に配分し、国際大会への派遣や合宿などより積極的な強化を促進できたということです。
2つめは、'01年10月に完成したJISS(国立スポーツ科学センター)の活用です。集中してトレーニングに打ち込める環境を整備し、多角的分析によって導き出されたデータを現場に迅速にフィードバックできる体制を構築することができました。
さらに、各競技団体の強化現場とJOC強化本部が直結するようになったことも大きいと言えます。JOC強化本部の担当理事が予選会や合宿地を訪れ、直接激励することで、選手や指導者に刺激を与え、勝利への意識を高めることができました。
これらが有機的に重なりあった結果、世界大会における各競技団体の好成績やオリンピック出場権獲得に表れてきていると言えるのではないでしょうか。
——JISSの将来像については、どのような計画をお持ちですか。
福田 北京オリンピックの前年までに、JISSを拠点にして『ナショナル・トレーニングセンター』を設立したいと考えています。
ゴールドプランには、メダル倍増という目標と表裏一体で、日本のスポーツの底辺を拡大し、競技力を向上させるという狙いがあります。これを実現させるためには、一貫指導体制の構築が必要不可欠なのです。
各競技で世界のトップに立っている海外選手のほとんどがそうであるように、日本も、幼児からの継続した育成を図らなければなりません。同時に、指導者も育成し、コーチ学を確立する必要もあるでしょう。
ただ、その拠点となり得るJISSが、今の規模ではあまりにも小さすぎるのです。このことをスポーツ議員連盟の先生方に理解・賛同頂き、今年度の文部科学省予算でJISS隣接地の用地買収を進めていただける見通しが立ちました。
将来的には、500人規模の宿泊・食事施設と、各競技団体が男女別に専有できるトレーニング施設を整備していただきたいと考えています。コストがかかることは十分理解していますが、「経済大国、スポーツ貧国」と揶揄されないためにも、より完璧に近いものにして頂くことをお願いしたいと思っています。そうすれば、金メダルを獲る選手がさらに増え、マスコミの注目度もアップし、それを見聞きした子供達がスポーツ選手を目指す、という好循環のストーリーが生まれてくるはずですし、スポーツを通じた人間教育にも貢献できると信じています。
——『ナショナル・トレーニングセンター』と一貫指導体制の関係性については?
福田 私案ですが、『ナショナル・トレーニングセンター』の中に、全寮制のナショナル・エリート・アカデミーを創設したいと考えています。これは、各競技の優秀なジュニア選手を一ヵ所に集め、そこで学校教育を受けながら、かつ専門の指導者のもとで競技トレーニングに専念できるような環境を作りあげるというものです。その選手が、やがてはナショナルチームに入り、金メダルを獲得するという形が理想です。スポーツ強国といわれるオーストラリア、ドイツ、フランスなどはいうまでもなく、ここ数年は大韓民国もナショナル・トレーニングセンターを核にしたエリート選手の育成・強化に力を入れてきています。このままでは、日本は遅れをとるばかりです。
——そうなると、JOC強化本部の役割も拡大しますね。
福田 これまでJOC強化本部は、日頃の選手強化は各競技団体に委ね、オリンピックになるとその選手達を集めて「金メダルを獲れ」「勝て」と言ってきました。しかし、このアカデミーができることにより、各競技団体からのサポートを得ながらも、JOCとして直接的に選手の育成・強化に携わり、世界の舞台に送り出すという形に変わるものと思われます。
——そのなかで、今年度の位置付けは?
福田 ゴールドプランに弾みをつけるという意味でも、非常に重要です。『ナショナル・トレーニングセンター』の設立も本格的にスタートを切ります。アテネオリンピックも開催されます。スポーツというものの魅力と必要性を主張していくには絶好の好機であり、これを逃してはなりません。
——最後に、その具現者たる日本のオリンピック代表選手たちに、メッセージをお願いします。
福田 一人ひとり、それぞれの目標に向かって必死になって戦って下さい。その姿と精神は、自然と、観ている者の心にも何かしらの感動と力を与えることになるはずです。
2004年2月26日 インタビュー/中川和彦
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