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2026.07.09 Milano Cortina2026 Medalists’ Voices

絶対に転ばせない!
全色メダルを手にしたレジェンドと重圧を乗り越えた新星たちの真実(佐藤綾乃、野明花菜、堀川桃香)

スケート/スピードスケート 女子チームパシュート

レジェンド・髙木美帆選手とともに、スピードスケート女子チームパシュートで銅メダルを獲得した3人。平昌2018冬季オリンピックで金メダル、北京2022冬季オリンピックで銀メダルに続く、3大会連続メダルで「全色制覇」を達成した佐藤綾乃選手。オリンピック初出場を果たした野明花菜選手、2度目のオリンピックで初めてチームパシュートに挑んだ堀川桃香選手も重圧を乗り越え、役割を全うした。準決勝の悔しさ、3位決定戦のバトンチェンジ……、4人で勝ちとったメダル獲得までのストーリーに迫る。

三者三様、それぞれの思い

――TEAM JAPANとして銅メダル獲得、本当におめでとうございます。

<三人> ありがとうございます。

――佐藤選手は3大会連続でそれぞれ色の違うメダルを獲得、「全色メダル制覇」ということになりました。金メダルを狙っていたからこその悔しさはあると思いますが、改めて振り返っていただき、お気持ちをお聞かせください。

<佐藤> 金、銀、銅……、悔しさがなかったり、少しだけあったり、それぞれの色のメダルにいろいろな思いがあります。今回の銅メダルはうれしいのですが、正直なところ少し悔いが残ったメダルですので、複雑な思いが重なっています。ただ、自分としての役割を果たすことができ、今ある自分の力は出し切れたかなとも思います。それぞれの色のメダルを誇りに思っていいのかなという気持ちです。

――堀川選手は北京2022冬季オリンピックに続いて2回目、野明選手は初出場となったこのオリンピックで銅メダリストになりました。それぞれ、どのようなお気持ちですか。

<堀川> 金メダルを目標にしていたので、悔しい部分もあります。ただ、オリンピックメダリストになれたのはうれしい気持ちです。

<野明> 目指していた色とは違うのかもしれないですが、初めてのオリンピックでメダルを持って帰ることができるというのは、本当にすごく価値のあることだと思うので良かったなという気持ちです。

――初戦の準々決勝は各チームのタイム勝負でしたが、1位通過を狙ったレースだったと思います。最終的にはカナダチームにタイムを抜かれて2位通過ということになりました。レース中、そして、レースを終えてカナダチームの結果を待っている間のお気持ちなど、率直にお聞かせください。

<佐藤> 準々決勝は1位通過したいという気持ちでした。レース中は、最初から最後まで自分の役割としてやるべきことを一番に考えていました。カナダが滑り終えるのを見届けることになりましたが、その時点で自分たちが何かできるわけではなかったので、ただ「優勝したい」という思いで願っていました。

――準決勝では、1位と4位、2位と3位が当たることになります。あの場面では「なんとか1位通過させてくれ」と願うような気持ちでしたか。

<佐藤> はい。私たち日本と、カナダ、オランダはどの大会でも僅差で戦っていましたので、準決勝で少しでも余力を残して滑るためには、4位の国と滑るのがベターだねとは話していました。ですから、私たちにとって予選で1位通過というのはマストでした。結果的に2位のタイムとなり、準決勝で3位のオランダに当たることになって悔しさはあったのですが、そこは「やるべきことをやろう」とすぐに切り替えることはできたと思います。

――髙木美帆選手にお話を伺うと、準々決勝は「自分が引っ張らなくては」という気持ちが強すぎたので、準決勝では「後ろに任せる、自分はマシンになる」というモードに切り替えたというお話をしてくださっていました。

<佐藤> 決勝を終えてからはゆっくり話すことはできていないのですが、準々決勝から準決勝の間に、美帆さんがその話を私たちにも伝えてくれていました。その部分の共通認識はできていました。

――そして挑んだオランダチームとの準決勝。レースは終始リードを奪いながら、最終周で逆転されるという悔しい展開でした。堀川選手は3番手を滑っていましたが、後ろで滑りながらレースの状況は把握できるものですか。

<堀川> 滑っている最中は、私のポジションからはオランダとどちらが勝っているか把握できないんです。2番手・3番手の選手は、ラップタイムも見えていないので、ゴールしてから「どうなったの?」という感じでした。ゴールしてから0.12秒差と本当に僅差だったことが分かって、そこではじめてすごく悔しい気持ちになりました。

――3位決定戦は、堀川選手に代わって野明選手が滑りました。バトンをつながなければいけない中で、どんなお気持ちだったのでしょうか。

<堀川> 本当は勝って、野明選手に気持ちよくバトンを渡してあげたかったです。それができなかったのは本当に悔しくて……。でも落ち込んでいるわけにもいかないですし、野明選手なら大丈夫って分かっていたので、安心して見ていました。

トラブルを乗り越えて

――野明選手は、3位決定戦に出場することをいつ聞かされたのでしょうか。

<野明> 結構前でした。いつだったかな。

<佐藤> ワールドカップ第5戦が終わった後のミーティングだったよね。

<野明> ですから、オリンピックの3週間くらい前ですかね。もともと準々決勝は桃香さんで行くというのは聞いていたので、自分のレースは準決勝と決勝のどちらなんだろうと思っていたのですが……。ただ、最終的な確定情報として正式に言われたのは、準々決勝が終わった時でした。そのタイミングで、最後の決勝(3位決定戦)で滑るのが自分だと言われました。

――オリンピックでの初レースが、メダルマッチとなりました。3位決定戦は、負けたらメダルなしということで、決勝戦以上に勝ち負けの差が天国と地獄的な大きさになります。一段とプレッシャーも感じたのではないですか。

<野明> あまり緊張もしていなかったですし、自分は大丈夫だと……。そして、もう覚悟を決めてやるしかないと思っていました。ところが、実際にレースに出てみたら本当に緊張していたようでした……。まだ自分でもレースのビデオを見ることはできていないのですが、何回か転びそうなところもあったじゃないですか。あれでもし転んでいたら終わってしまっていたと思ったら、怖くてまだ見られていないんです。自分でも気づかないうちにいろいろなことを考え過ぎて緊張していたんだと感じます。

――それは、滑り出す前に「私、緊張しているな」と気づいたのか、それともゴールした後に振り返って気づいたのか、どちらだったのでしょうか。

<野明> レースが終わって、振り返ってみて「緊張していたんだな」と思いました。滑っている時はただただ夢中でした。

――先ほどお話にも出たように、スタート直後と最終周で野明選手がバランスを崩すシーンがありました。後ろから押していた佐藤選手は、その時どのようにサポートされていたのですか。

<佐藤> スタート直後のタイミングでは、想定していた以上にバランスを崩していたというか、これまでにも見たことのないつまずき方をしていました。まずは、できるだけ早く一つの隊列になることがすごく重要なのですが、美帆さんは通常通りのスタートを切っていました。そこで慌てて追っていって余計な脚を使ってしまうと、そこからまだ6周もあるため「後半スタミナがもたなくなるかもしれない」という心配が瞬時に頭をよぎりました。
 とっさに、後ろから美帆さんに「ちょっと待って」と声をかけました。美帆さんもそこですぐにコントロールして合わせてくれたので、あとは私が後ろからフォローしていきました。その部分はスムーズにリカバーできて、すばやく一つの隊列になれたと思います。
 終盤、野明がバランスを崩した場面も、もちろん想像していなかったところでした。でも、私もメダルをとるためにこの舞台に来ているつもりでしたし、「何色であろうとメダルが欲しい」という気持ちだったので、「絶対に転ばせない」という強い気持ちで後ろから支えていました。ただ、自分が何か大きくフォローする必要もなく、彼女一人で立て直すことができていましたし、残り半周というところでもあったので、「とにかく落ち着いて滑って」という気持ちで後ろからプッシュしていました。

Enrico Calderoni/AFLO SPORT

複数ポジションをこなす大黒柱の存在

――堀川選手が加わる隊列では2番手で滑り、野明選手が加わる場合は3番手で滑るというように担当する役割がフォーメーションによって異なりました。佐藤選手にとっては本当に負担が大きかったのではないかと想像していたのですが、実際どうだったのでしょうか。

<佐藤> 他の国を見ても、このような入れ替わり方をしているのは私だけでしたし、正直なところ、ポジションごとの難しさは感じていました。ただ、プッシュすることや人の後ろで滑ること自体については、他の人たちと比較してそれほど難しさを感じていないと思っていたので、しっかり受け入れて、「どのポジションでも、どういう戦術でも、いつでも準備できている」と言えるようにしようと考えていました。ですから、その難しさをあまり大げさに考えることなく、自分の役割、やるべきことに集中することを心がけていました。

――堀川選手は、3位決定戦は託すしかない状況でした。どのような気持ちで3人の滑りをご覧になっていたのでしょうか。

<堀川> 自分も本当に緊張しながら見ていたのですが、ワールドカップ第1戦でこのメンバーで優勝していたので、「やってくれるだろう」という気持ちで見ていました。

――野明選手のご両親もともにオリンピアンなんですよね。現地まで応援にいらしていたようですが、何かお話はされたのでしょうか。

<野明> まだあまり話せていないんです。両親も観に来てくれていたのですが、すぐ帰ってしまったので会えてはいなくて、ゆっくり話はできていないんです。ただ、LINEを通じて「おめでとう」という言葉ももらいましたし、二人がインタビューを受けている記事を読んで喜んでくれていたことも分かったので良かったです。

――みなさん、本当にお疲れのところ、ありがとうございます。4人で戦うチームパシュートだったからこその難しさも、それを乗り越えたチームワークの良さも感じるお話でした。改めておめでとうございます。

<三人> ありがとうございました。

Enrico Calderoni/AFLO SPORT

■プロフィール

(写真左から)

堀川桃香(ほりかわ・ももか)/2003年7月10日生まれ。北海道出身。5歳からスケートを始める。白樺学園高校時代にはインターハイ1500m、3000mで2年連続2冠を達成。高校3年時に北京2022冬季オリンピックに出場。22−23シーズンからは女子チームパシュートの主力として活躍。ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックでは女子チームパシュート準々決勝、準決勝に出場、銅メダル獲得に貢献した。富士急行株式会社所属。

野明花菜(のあけ・はな)/2004年11月28日生まれ。長野県出身。元1500m世界記録保持者で長野1998、ソルトレークシティー2002冬季オリンピックに出場した父・弘幸さんと、アルベールビル1992冬季オリンピック、長野1998冬季オリンピックに出場した母・三枝さん(旧姓・上原)を両親にもつ。ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックで自身初のオリンピック出場を果たすと、女子チームパシュート3位決定戦に出場し銅メダル獲得に貢献した。立教大学スポーツウエルネス学部在学中。

佐藤綾乃(さとう・あやの)/1996年12月10日生まれ。北海道出身。小学1年からスピードスケートを始める。2017-18シーズンのワールドカップシリーズの女子チームパシュートで髙木菜那選手、髙木美帆選手とともに世界記録を更新。平昌2018冬季オリンピックで金メダル、北京2022冬季オリンピックで銀メダル、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックでは銅メダルと、女子チームパシュート3大会連続でのメダル獲得を果たし「全色制覇」を達成。今大会では入れ替えのあるフォーメーションで全試合に出場、メダル獲得に貢献した。26年3月、現役引退を発表。全日本空輸株式会社所属。

Naoki Nishimura/AFLO SPORT

注記載
※本インタビューは2026年2月21日に行われたものです。

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