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2026.07.09 Milano Cortina2026 Medalists’ Voices

雪山に刻まれた「一歩踏み出す勇気」
メダルをつかんだ若き3人のスノーボーダーが語る恐怖と向き合う流儀(木村葵来、木俣椋真、長谷川帝勝)

スキー/スノーボード ビッグエア・スロープスタイル

ビッグエアで金銀のワンツーを決めた木村葵来選手、木俣椋真選手、スロープスタイルで日本勢初の銀メダルを掴んだ長谷川帝勝選手。リヴィーニョの雪山で輝きを放った若き3人のメダリストたちが語る「一歩踏み出す勇気」の正体とは。

メダリストたちの実感

――木村選手は金メダル、そして、木俣選手と長谷川選手は銀メダル獲得、おめでとうございます。

<三人> ありがとうございます。

――木村選手と木俣選手はビッグエアでメダルを獲得してから少し時間が経ちました。SNSなどを通じてたくさんの祝福のメッセージをいただいていることと思います。改めてオリンピックメダリストになって、どんなお気持ちでしょうか。

<木村> いまだに、オリンピックで金メダルを獲得したという実感を持ち切れていない状況です。でも、たくさんの方々から温かいメッセージをいただいて、本当にうれしい気持ちでいっぱいです。

――他の国際大会とはまた違う感じはありますか。

<木村> プレーそのものに関しては、ワールドカップの時と変わらずに挑めたと思っています。ただ、周りのみなさんをはじめ、本当にたくさんの方々から「おめでとう」という感じでメッセージをいただきました。

――木俣選手はいかがでしょうか。うれしさと悔しさの入り混じる結果だったかもしれませんが、私たちは心から祝福しています。

<木俣> ありがとうございます。ビッグエアでのメダル獲得後は、(木村)葵来(選手)が言ったように、ワールドカップとは違い、久しぶりの人からもたくさんの連絡が来ました。スポンサーの方々など、自分と一緒に目標にしてきた舞台でのメダルだったので、自分だけではなく応援してくださった人たちも一緒に喜んでくださって、それがうれしいです。

――そして、長谷川選手はスロープスタイルで銀メダル獲得となりました。こちらはメダル獲得から間もないですが、改めてどんなお気持ちですか。

<長谷川> 一番は、ホッとした気持ちですね。今シーズンはケガや体調不良でなかなかいい結果を出せていなくて、いつになったら結果が出るんだろうと思ってきましたが、この舞台で結果を出せたことはすごく自信になりましたし、努力を続けてきて、滑り続けてきて本当に良かったと思いました。

ビッグエア、金銀フィニッシュの裏側

――それぞれの滑りを順番に振り返ってください。木村選手は今大会TEAM JAPANの金メダル第1号となりました。日本勢のメダルラッシュの起爆剤になったと感じますが、そのような実感はありますか。

<木村> いえ、その点については全く何も思っていないです。僕の金メダル獲得が勢いをつけたというよりも、各選手それぞれが自分のベストパフォーマンスを尽くせたからこそ、メダル獲得につながったのかなと思っています。

――予選は3位通過でした。あの時点ではどのような手応えだったのでしょうか。

<木村> 2方向の1800(5回転)を確実に決められれば予選は通るだろうと思っていたのですが、本番ではちょっとしたミスが出て、なかなか点数が伸びませんでした。3本目できちんと攻めて決めて得点も伸ばすことができたので、試合運びとしては結構いい感じに進められたと思います。

――冷静になって振り返ると、金メダルに手が届いた一番のポイントはどんなところだったのでしょうか。

<木村> ミスなく飛べたこと、着地も全く手をつかずに綺麗に決められたことが、今回の勝利の鍵になったのかなと思っています。

――続いて、木俣選手にお話を伺います。予選は10位通過でした。あの時点ではどのような気持ちだったのでしょうか。

<木俣> 決勝に向けての予選の技だったので、普段のワールドカップよりは少し難易度を落としていました。ギリギリで通過するであろうとは想定していたのですが、思ったよりも周りのレベルが高くて、想定よりちょっと下の順位で予選を上がる形になってしまいました。順位そのものは特に想定外ではなかったです。

――ご自身の想定以上に、周りが攻めてきている感じだったのでしょうか。

<木俣> 8位通過くらいかなと自分の中では思っていたのですが、結構ギリギリでの通過となってしまいました。普段のワールドカップと比較しても、みんなのレベルが少し高かったかなと感じます。

――決勝では1本目、2本目とハイスコアで着地を決めてトップに立ちました。それまでの手応えと、3本目に挑んだ時の気持ちを教えてください。

<木俣> 1本目、2本目の自分の滑りは、100%の力を出す滑りができたので、3本目はもうやる技がなく、最後はやったことのない技に挑戦するという形でした。失敗してしまいましたが、それは仕方がないかなと思います。

――結果として、木村選手とワンツーで表彰台に上がりました。トップをとりたかった気持ちもあったかと思いますが、振り返ってどのようなお気持ちですか。

<木俣> 欲を言えば優勝が良かったです。妥協しても、上が外国人選手だったらまだ救われるような気持ちはありました。1位が日本人だったことについては、悔しい気持ちの方が少し大きかったかな……。でも、自分が最大限の力を出せたとしても、周りが最大限の力を出し切ったら4位か5位くらいで終わるだろうという読みもあったので、意外といい順位で終われたというのが実感です。

――いろいろな気持ちが入り混じっているのですね。

<木俣> 自分より本当に上手な選手が多いのがビッグエアです。だから、自分のやることは最大限を出して、あとは周りに関して祈るだけ。全員が最大限を出したら1位をとれるだけの技を自分は持っていないので、まさに「やれることをやった」という感じです。

――こういう競技だからこそ悩ましいところでもあるかなと思うのですが、ライバルに対して「失敗してほしい」と願う気持ちがあるものなのでしょうか。

<木俣> 普通に「失敗してくれ」と思っていますよ(笑)。失敗してくれとは思いつつも、着地したからといって「なんでだよ!」と思うわけではなくて、「良かったね!」という気持ちになります。ただ、「みんな立ってくれ!」と本気で思っている人はいない、これは勝負の世界なので仕方ないことだとも思います。

Naoki Morita/AFLO SPORT

スロープスタイル、フル替えで掴んだ銀メダル

――長谷川選手もビッグエアから振り返らせてください。お二人のメダリストが誕生して、しかも日本人ワンツーになったわけですが、どのような感想を持っていたのでしょうか。

<長谷川> ジャンプ台が小さかったので、自分が今持っているすべての技を出せないなという感想を持っていました。その中でベストを尽くそうと頑張ったのですが、思うように1本目から点数を出せず、2本目、3本目は転倒してしまいました。それでも、やり切った感覚はあったので、そこまで引きずることはなかったです。
 二人が表彰台に乗ったのはうれしい気持ちもありましたし、悔しい気持ちももちろんありました。ただ、遠征を通して二人の苦労、努力、葛藤を間近で見てきたので、その努力が報われたことはうれしかったですし、祝福したい気持ちの方が大きかったですね。

――スロープスタイルの試合に向けては、どのように気持ちを切り替えていったのでしょうか。

<長谷川> ビッグエアはもうすでに終わったものでしたし、スノーボーダーとしての自分はスロープスタイルが本番という思いがありました。終わった瞬間から切り替えて、コンディション調整をしっかりして大会に臨めるよう滑り込んで準備していきました。

――予選は9位通過。決勝1本目で高い得点が出ました。素晴らしいランでしたが、ご自身の感触はいかがだったのでしょうか。

<長谷川> 予選では「思ったより点数が出ないな」というのが正直な感想でした。ただ、ジャッジの傾向を見て「ルーティンを替えた方がいいな」とか「技の完成度が見られているな」ということはすごく感じていました。そこで、賭けではあったものの、ジャンプのルーティンをフルに変更するしかないと、コーチとも相談して決めました。自分の板も結構走っていましたし、この調子ならいけるだろうと思い、決勝1回目から自分の滑りに集中することだけ考えました。気持ちよく、楽しく滑れば、おのずとランが完成していい結果がついてくるだろうと。それがうまくはまったことが結果に結びついたと思います。

――銀メダルが決まった瞬間は、どのような気持ちでしたか。

<長谷川> 銀メダルが決まった瞬間以上に、表彰台が決まった時の方がドキドキしていました。最後から2番目のマーカス・クリーブランド選手がかなりいいランをしたので、どこの順位につくかも気になりましたし、さらにもう一人いい選手がいたため、ひょっとしたら4位、圏外になる可能性もあったので、そのことが気になってドキドキしていました。ですから、それを乗り越えて表彰台が確定した段階でホッとしました。あとは2位でも3位でもどちらでもいいと思っていたので、そこからは冷静で、まあ2位で良かったなという感じでした。

――表彰台に乗れるかどうか、というところが一番大きかったのですね。

<長谷川> はい。そこは雲泥の差ですから、しっかりメダルを手にできたということはすごく大きかったと思います。2位か3位の差はそんなにないですが、1位と2位の差、3位と4位の差は大きい。だから、2位か3位だったら、別にどちらでもいいなという感覚でした。

Naoki Morita/AFLO SPORT

TEAM JAPANの強さを支える「一歩踏み出す勇気」

――みなさんは日頃から一緒に転戦されていて、お互いをよく知る仲だと思います。日本のスノーボード勢、ハーフパイプも含めて、今大会で日本が最も多く金メダルを獲得した競技がスノーボードでした。それぞれの目から見て、日本スノーボード界の強さの理由はどこにありますか。

<長谷川> 世界トップレベルの選手たちが多いことが一番の要因でしょうか。他の国だとトップの選手たちがそこまで身近にいるわけではありません。日本人選手の場合は、練習環境が限られることもあって練習場所が一緒だったり、場所が違っても情報が入ってきたりするので、そういう中でお互いに切磋琢磨できることが大きいと思います。
 あとは、象徴的な存在の力ですね。ハーフパイプであれば(平野)歩夢君、スロープスタイルとビッグエアであれば角野友基君が、もともと象徴的な存在として世界トップにいてくれました。自分たちより先に世界の頂点で戦っている選手が身近にいたことで、おのずとその人を目指すようになり、世界一を目指すようになります。そういう環境の差、身近にトップ選手がいるということが、一番大きいと思っています。

――お三方とも雪が降らない地域のご出身ですよね。そういう中でスノーボードという競技に、しかも巨大なジャンプ台や巨大なレールに乗るビッグエアやスロープスタイルという種目は、素人目には怖さを感じることも多いと思います。みなさんはそんな競技に楽しみながら向き合っているように見えますが、恐怖心とはどのように向き合っているのでしょうか。今大会のTEAM JAPANコンセプトは「ともに、一歩踏み出す勇気を。」でしたが、みなさんはそんな勇気をどのように生み出しているのでしょうか。

<木村> 僕は練習でも基礎練習をすごく丁寧に行うようにしています。基礎に時間を使うことで新しいことをやる時に応用させやすいと感じています。恐怖心もありますが、ベースができているからこそ「ここまでできれば、これだってできるだろう」といった自信になる。そうやって「一歩踏み出す勇気」を出せるのだと思います。

――子どもたちにも届きそうないいメッセージですね。木俣選手はいかがでしょうか。

<木俣> 子どもの頃よりも、今の方が断然怖いです。ただ、自分の最終目標がオリンピックだと考えると、その時には怖くても、その過程で絶対にやらないといけない瞬間がやってくるんですよね。1年後なのか、2年後なのか、今なのかはわかりませんが、時が経っても怖さは同じです。今やっても、1年後、2年後にやっても結局は一緒。それなら早いうちに乗り越えてしまう方がいいというマインドで、僕は怖さを取り除くようにしています。「どうせいずれ向き合う恐怖なのだから、先に乗り越えておく」というイメージです。

――夏休みの宿題も最初にやる派ですか。

<木俣> たしかに、最初にやります。夏休みが始まる前に宿題を終わらせるくらいの勢いでやっていました。まさにそういうことです。どうせやらなくてはいけないわけですから。
 ただ、僕の場合はやらなくていいことは本当にやりません。最近は新しい技を覚えることに関しても、必要な技しか取り組まなくなっている傾向にあります。新しいことを覚えること自体に楽しさはないのですが、やらなくてはいけないことはやろうという感じです。それでも最終目的地がしっかりと定まっているのであれば、どうせやらなくてはならないことは、やろうと思った時にやるのがベストなんじゃないかと思いますね。

――ありがとうございます。これもいいメッセージですね。長谷川選手はいかがですか。

<長谷川> 年齢が上がっていくにつれて経験値も増していきますが、さまざまな経験がゆえに恐怖心は絶対に大きくなっていきます。体も疲れやすくなりますし、疲れも抜けにくくなる。だから、自分は、慣れるまでは慎重にやることを一番大切にしています。慣れたら本当にもう好き勝手にできるようになりますから、それまでは慎重にやって、もういけると思ったタイミングで挑戦するという感じです。葵来や椋真が言ったことが基本的には正しいと思うので、そういう乗り越え方がいいと思いますが、自分は慣れるまで慎重にやり、慣れてからは早いので楽しみながらやっていくというスタイルです。

――経験を積んで恐怖心がなくなっていくのかと思っていましたが、むしろ時間や経験とともに恐怖心が増していく面もあるのですね。

<三人> はい、そうですね。

――そろそろお時間となりますが、あまり質問されないけれど、本当はこういうことを伝えたかったというようなことはありますか。

<木俣> 昔、スキージャンプの日本代表が「日の丸飛行隊」と呼ばれていましたよね。「俺たちだったら何になるかな」と荻原(大翔)選手と話していて、その時「日の丸ベイブレード」がいいという話になったので、これだけ伝えておければと。

――荻原選手ご本人にもお話を伺えたら良かったですね。みなさん、今日は本当にお疲れのところありがとうございました。

<三人> ありがとうございました。

Naoki Morita/AFLO SPORT

■プロフィール

木村葵来(きむら・きら)
2004年6月30日生まれ。岡山県出身。小学6年でオリンピックをテレビで観戦したことをきっかけにスノーボードを始める。中学2年でプロ資格を取得。23年1月に初出場したワールドカップでいきなり表彰台に上がる。23-24シーズンFISポイントリストランキングでビッグエア年間王者に輝く。ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックの男子ビッグエアでは、自身初のオリンピックで金メダルを獲得した。ムラサキスポーツ/中京大学所属。

Naoki Morita/AFLO SPORT

木俣椋真(きまた・りょうま)
2002年7月24日生まれ。愛知県出身。3歳でスノーボードを始め、小・中学生時代はFIS大会を国内で転戦。20年ローザンヌ冬季ユースオリンピックのビッグエアで優勝。23年世界選手権スロープスタイルで日本人男子初の銀メダルを獲得。25年世界選手権ではビッグエアで金メダルを獲得。ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックの男子ビッグエアでは銀メダルを獲得した。YAMAZEN所属。

Naoki Morita/AFLO SPORT

長谷川帝勝(はせがわ・たいが)
2005年10月23日生まれ。愛知県出身。4歳でスノーボードを始め、小学3年で競技会初出場。21年世界ジュニア選手権ビッグエアで優勝。22年にはワールドカップ初優勝を飾り、同年世界選手権ビッグエアでは日本人男子初優勝を果たした。ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックのスロープスタイル決勝1本目に82.13点をマークし、銀メダルを獲得。TOKIOインカラミ所属。

MATSUO.K/AFLO SPORT

※本インタビューは2026年2月20日に行われたものです。

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