写真:杉本哲大/アフロ
マラソンスイミングは北京2008大会で初めて正式種目となった比較的新しい競技です。マラソンスイミング自体は1980年代前後からオーストラリアを中心に行われており、1991年のオーストラリア・パースでの世界水泳選手権で正式種目となりました。このときの種目は男女ともに25kmで、5時間を超える競技時間でした。その後、オリンピック競技となる10kmが国際大会に取り入れられたのは、2001年に福岡で開催された世界水泳選手権でした。
マラソンスイミングは予選ラウンドのない一発勝負です。男女ともに25人の出場選手が一斉にスタートするシングルレースとなっています。泳ぎ方に規定はなく、多くの場合はクロールで泳ぎますが、給水や疲労時などには背泳ぎをする選手もいます。海底に立っても失格にはなりませんが、歩いたりジャンプはできません。給水の際は監督やコーチが「フィーディングポール」と呼ばれる給水用の竿で飲み物を渡し、それを選手が泳ぎながら飲むのはこの競技特有の光景です。
10kmにわたる耐久レースにおいて、最も印象的な瞬間は、各選手が7km地点付近から始まるスパートの勝負です。しかし、実はその瞬間に至るまでの間に、自分の体力を無駄に消耗せず、最後のスパートに備えるためにどれだけ力を残せるかが、勝敗を分ける大きな要素となります。途中のスピードの変動による揺さぶりに対処できる力、それに伴う集団内での適切な位置取り、そして海や川の流れがある状況下で、どれだけ効率的なコース選択ができるかも、この競技で成功するための重要なスキルと言えます。特にコース選択は環境に大きく左右され、海の場合、潮の流れや波の大きさが時間とともに変わるため、これらを正確に判断する必要があります。近年では、競泳の長距離種目に出場する選手たちもマラソンスイミングに参戦。スピード化が進んでおり、前半からハイスピードで逃げ切るレースも見られるようになってきました。その影響もあり、特に最終ラップでの争いが激化し、タッチ差で勝負が決まるレースも多くなってきました。体力と知恵、環境の読み取り、そして10kmのレースでも屈しない精神力。まさに、心技体が備わった選手たちが世界一をかけて競い合うのが、このマラソンスイミングという競技なのです。
競技初回実施大会 | 北京2008大会 |
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TEAM JAPAN初出場大会 | ロンドン2012大会 |
競技別累計メダル数 |
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2024年1月1日時点
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