オリンピックデー・フェスタの10年
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2014年2月19日 ソチ(ロシア連邦)2014年2月19日 ソチ(ロシア連邦)55︳オリンピックデー・フェスタの10年 初めて参加したのは、震災から3年後の2014年、宮城県多賀城市で行われたデー・フェスタでした。たいへんな状況を見聞きし、何か力になれることがないだろうかと参加させていただきました。最初に強く感じたのは、開会式で下を向いている子どもたちが多かったことです。緊張もあるのだと思いますが、どこか参加者と私たちオリンピアンの間に壁のようなものがあるような気もしました。そんな姿を見て、震災からまだ3年、無理もないかもしれないと感じました。ところが、一緒に体を動かしていくうちに、壁がなくなって気持ちが通じ合うようになり、イベント終了の頃になると、逆に子どもたちの方から話しかけてくれました。「楽しかった!」「また来てね!」そんな言葉にとても嬉しくなり、やって良かった、と心から思いました。 また、イベントの多くは、同じ場所を同じ人が何度も訪問することはありません。それを知っていて、〝この人もきっと1回で終わりなんだろうな〟と思って寂しく感じているところもあるようでした。「一度だけじゃないよ、また会いに来るよ」というメッセージが伝わると、さらに笑顔が輝いていく。それも私にとって嬉しいことでした。 私がこのデー・フェスタでモットーとしたのは、『みんなで気持ちを一つにし、頑張ることで得られる達成感を感じてもらう』こと。毎回現地の人とチームをつくって競技を行いますが、チームメイトの年齢はさまざまです。みんなで一緒になって時に頑張り、時に応援する。そうしてやがて気持ちが一つになる。年齢の差を超え、やる人、見る人、一緒に盛り上がって、一体となって、そこから笑顔が生まれていく。デー・フェスタを通じ、スポーツの持つ力を非常に感じました。 一方で、地元の語り部のみなさんのお話には、これまで経験したことのないような衝撃を受けましたし、お話を聞くたびに、本当にどうにかしなければいけないという思いを強くしてきました。 これまで17回参加しましたが、どの回も楽しく、私の方が被災地のみなさんからパワーをいただいてきました。一つひとつが私にとって、かけがえのない財産です。10年一区切りといいますが、復興はまだ道半ばです。またこの間、日本のあちらこちらで自然災害が発生しています。今後は、これまで得たデー・フェスVoice オリンピアン・インタビュータでの経験を生かし、全国の被災地にこうした活動を広げていけたらいいのではないでしょうか。スケート/スピードスケート アルベールビル1992大会(500m)銅メダル、リレハンメル1994大会、長野1998大会黒岩 敏幸みんなで気持ちを一つにし、頑張ることで得られる達成感を感じてもらいたい

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