オリンピックデー・フェスタの10年
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特別座談会31︳オリンピックデー・フェスタの10年小野寺 そうですね。私も最初に田中さんの話にあった『スポーツから生まれる、笑顔がある。』っていう言葉の意味を、回を重ねるごとに痛感しています。自分が笑顔でいることで子どもたちから笑顔を返してもらえる、と、最近強く感じているんですよね。笑うことの大切さというか、それがスポーツで生まれる笑顔で、その表情の持つ力を感じてから、私、寝るときも笑うようにしているんですよ(笑)。そういう意味でいいますと、デー・フェスタに参加する前と後で何が変わったかというと、「表情」「笑顔」ですね。馬渕 それまではアスリートとして、スポーツは楽しむより、必死で毎日苦しみながらやるものでした。それがこのデー・フェスタに参加してから、やっぱりスポーツって楽しいんだ、と感じられるようになりましたね。といっても、やっぱり元アスリートとしての血が騒いで、真剣勝負にはなっちゃうんですけど(苦笑)。杉本 そもそも、オリンピアンって負けず嫌いの集まりですからね。たぶん、オリンピアンって遠い存在と思っている人が多いと思うので、大の大人が本気でスポーツで勝負をしている姿って衝撃だと思いますよ(笑)。もう見たくないとおっしゃるのは、やっぱり思い出してしまうからですよね。だから、先ほどの話に戻りますけど、やっぱりその現状を見て伝え、発信していくことも私たちの大切な役割の一つなんですよね。スポーツはなくても生きていけるでも、スポーツは人生を豊かにしてくれる――では、デー・フェスタに参加したことで、自分のなかでスポーツに対する考え方が変わったなどあるか、お聞かせください。中村 先ほどからみなさんの話に出てきているように、一生懸命やることで、それを見ている人が元気やパワー、勇気をもらったと喜んでくれる。私たちはアスリートという立場で参加させていただいていますけど、それぞれの競技やオリンピアンといったことを抜きにして、みなさんと一緒に同じ一つのことを一生懸命頑張ることが、大きな力や元気につながっているのかなって。それがスポーツの力ということなのかどうかわかりませんが、人間のパワーになるのだということを、デー・フェスタを通じて感じさせられましたね。本当に時が止まってしまっていて震えました。こんなに月日が経っても放射能の影響でここはこのままなんだ、と。ランドセルの持ち主たちのことを考えると、とても心がしんどくなりました。だからこそ、自分にできることはなんだろうって考え、この一瞬、一瞬、一緒に笑って、一緒に運動することで少しでも思い出とし、残してもらえたらって。それくらいしか私にはできないからこそ全力で楽しもうって、毎回改めて思わせてもらうんです。小学校の風景は、ちょっと衝撃で忘れられない思い出ですね。馬渕 私も見る必要がありますね。田中 もう一つ、福島・双葉町では震災前、毎年町の運動会があったということで、デー・フェスタと合同で復活開催(注3)した回があったのですが、このとき私もご一緒させていただきました。全国に避難されている方々が集まってこられ、あちらこちらでハイタッチしながら「久しぶりー」って涙を流し、再会を喜んでいる姿を見て、〝一緒になることでこんなにも笑顔が生まれるのだ〟と、スポーツの偉大さに改めて気づかされました。中村 やっぱりスポーツには大きな力があるってことですよね。 それにしても、被災地の人が(震災時の)映像は見られないとか、その場所は(注3)福島県いわき市にて開催された2013年10月6日 閖上(宮城)2019年6月29日 大槌(岩手)2017年10月8日 ふたば(福島)

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