第5回 時代とともに変わるオリンピック憲章
前回、オリンピック復興の父クーベルタンと、オリンピック憲章の原点について学んだ女の子。今回は、時代とともに変わってきたオリンピック憲章の内容について勉強します。
監修:NPO法人 日本オリンピック・アカデミー
オリンピックと環境
日曜日、お父さんと女の子が庭の手入れをしています。
- お父さん、私、この間学校で環境のことを勉強したんだけど、東京が2020年に開催しようとしているオリンピックは、環境にやさしいオリンピックなんだって先生がいってたの。それって本当?
- ああ、本当だよ。東京は、1964年の東京オリンピックで使用した施設を今度も使うという計画だし、道路や電車、ホテルなども都市部にすでにそろっているから、オリンピックのために大規模な開発をする必要がない。そこをアピールしているんだ。
- オリンピックも、環境のことを考えて開催することが大事なのね。
- その通り。オリンピックは、開催に必要な施設をつくることが環境破壊につながってしまうこともあるから、環境への配慮が求められるようになってきたんだ。それで1990年代の初めに、「環境」もオリンピック・ムーブメントの大事な柱になったんだ。
- じゃぁ、オリンピック憲章も変わったの?
- ああ、変わったよ。オリンピック憲章にも、それまでなかった環境についての項目が、1994年に初めて加えられたんだ。
- 1994年ていうことは……クーベルタンさんがIOCを設立してからちょうど100年後だね!
- よく気がついたなぁ。その通りだよ。
- 100年のあいだに、地球の環境も、みんなの考え方も、変わってきたということね。
- まさにそうだね。オリンピック憲章は、そういう場合には時代に合わせて柔軟に変わっていくんだ。IOCはそれ以降、環境に対する取り組みを積極的に進めているんだよ。「スポーツと環境委員会」という組織を作ったり、「IOCスポーツと環境世界会議」を2年ごとに開いたり。オリンピック憲章もさらに変わってきているよ。
- どんなふうに変わったの?
- オリンピック憲章の「IOCの使命と役割」というところに環境保全について書いてある。2003年までのオリンピック憲章では、オリンピック競技大会やオリンピック・ムーブメントが必ず環境に関心を示すようにする、という内容なんだけど、2004年以降の憲章では:
- 環境問題に関心を持ち、啓発・実践を通してその責任を果たすとともに、スポーツ界において、特にオリンピック競技大会開催について持続可能な開発を促進すること。
- となっている。つまり、環境について関心を持ったり注意をうながしたりするだけでなく、実際に環境を守る取り組みを実践していきます、とさらに積極的な内容になったんだ。
- ねぇ、ほかにも最近になって変わったオリンピック憲章の内容ってあるの?
- もちろんあるよ。じゃぁ、庭仕事は一休みして、部屋に入って話すとしようか。