OLYMPIAN2019
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29感じがちです。でも、オリンピアンも生まれた時から特別な人間だったわけではありません。好きなことが見つかり、オリンピックに出たいという夢が目標となり、日々努力した結果オリンピアンになれた。たまたま、私たちが戦う舞台はオリンピックでしたが、生活の中で何か目標を見つけてそれに向けて頑張ったり、その中で敬意や友情などの気持ちを大切にしたりすることは、皆さんきっと同じだと思っています。オリンピックの特別な価値——とはいえ、オリンピックには特別な魅力がありますよね。小口 現役時代は、自分の記録を伸ばし一つでも順位を上げるために精いっぱいやってきたので、オリンピックの良さについてあまり考えることはありませんでした。現役を退いてから、オリンピックを振り返ったり、2018年の平昌オリンピックにボランティアとして参加したりしてみて、世界中オリンピズムを伝える場——JOCが企画・運営する日本オリンピックミュージアム(JOM)が2019年9月にオープンします。オリンピック・ムーブメントを普段推進しているオリンピアンの皆さんにとって、このミュージアムがどんな役割を果たしていくと良いと思いますか。澤野 JOMをオリンピアンが集まる活動拠点にしたいと思っています。これまで、オリンピアンが自然と集まる場所はありませんでした。オリンピアン同士が気軽に集まることができ、また一般の皆さんがオリンピアンに会える場所になることを期待しています。——オリンピアンに直接会うことができるのは、たしかにうれしいですね。澤野 オリンピアンに会える機会は多くないですよね。子どもたちにとっても、オリンピックを身近に感じてもらうきっかけになれば私たちもうれしいです。 オリンピック教室(P35参照)をはじめ、オリンピアンが母校や地域の小中高校に呼ばれて自らのストーリーを話すことがありますが、JOMもそんなふうにさまざまなオリンピアンが一人一人のストーリーに基づいたオリンピックバリューを語れる場になるといいと思っています。伊藤 特別なパフォーマンスはないですけど(笑)。——皆さんは、いつもオリンピズムをどのように伝えていらっしゃるのですか。小口 私が経験してきたのはリュージュというマイナーな冬季競技ですので、競技のことを知ってもらうことからスタートします。オリンピックは競技成績がいいトップアスリートだけのものと思われがちですが、オリンピックの本質的な価値や感覚は、実は皆さんが生活の中で体験されていることと近い。そのことを、私たちオリンピアンが自分たちの経験をふまえながら伝えたいと思っています。伊藤 オリンピックが夢であり目標だったから頑張ることができました。失敗を恐れてチャレンジできない子どもたちも多いですし、大人の方々も、他人の評価を気にしがちです。努力する喜びを感じてほしいですし、自分らしい道を選んでほしい。そう考えて話をしています。 澤野 小口さんもおっしゃるように、オリンピックは特別なものにJAPAN OLYMPIC MUSEUM入口に設置されたオリンピックシンボル。フォトジェニックな写真撮影スポットとしてもおすすめ。中庭には1964年東京オリンピック、1972年札幌冬季オリンピック、1998年長野冬季オリンピックの聖火台モニュメントも。Photo/JOCPhoto/JOC

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