OLYMPIAN2019
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10取材させていただいた妹・詩選手も東京2020大会を目指しています。兄・一二三選手にとって詩選手はどんな存在ですか。阿部 負けられない、頑張らないといけないと思わせてくれる存在ですし、自分自身が柔道と向き合う原動力の一部になっていると思います。この春、妹も同じ日本体育大学に入ってきたので、分からないことを教えるなど、できる限りのことはしてあげたいと思っています。——柔道中心の厳しい毎日ですが、同世代の大学生たちのような生活を送りたいと思うことはありませんか。阿部 小学生の頃は、周りの友達が公園で遊んでいる時に父とトレーニングをしていたので、「みんなと遊びたい」と思うこともありました(笑)。でも今は、とにかく柔道が大事で、ただただチャンピオンになりたい。毎日柔道するのは当たり前のことですし、そのことに誇りを持っています。周りのことは何とも思いませんし、楽しく過ごせているので本当に幸せだしい気持ちと同時に、「やっとここまで来たか」という感慨がありました。 小学3年の頃、女子選手に負けた経験があります。その時は、恥ずかしいというのではなく、本当に悔しい気持ちでした。そこから「どうしても負けたくない」、「どうしたらもっと強くなれるのか」と、柔道にのめり込んで生活する毎日が始まりました。海外にも強いライバル選手たちがたくさんいるので「彼らよりも強くなりたい」という思いで日々努力しています。——悔しい敗戦とうれしい勝利。どちらから学びを得ることが多いですか。阿部 勝って学ぶことも多いのですが、やはり、負けから学ぶことの方が多いですね。柔道を始めてから、たくさん悔しい気持ちを味わってきました。でも、悔しい思いがないと強くなれないので、そのことは忘れないようにしています。 良い結果が出ないこともありますが、そのような壁は、一回り大きな自分に成長するためのチャンスと思えばプラス材料だと思います。乗り越えられる人にしか壁は与えられないと思っているので、その壁を乗り越えるためにどうすればいいかをいろいろな人に相談しながら、必死に考えています。 淡々と練習しているだけでは成長しないと思い、常に課題を持って取り組むようにしています。逃げずに続けていられているのも、一番は夢や目標が自分の中で明確にあるからこそ。柔道のことが大好きな気持ちがあるから、嫌なこと、やりたくないこと、苦しいことにも向き合えていると思います。これからも、「自分が一番強い」と信じる気持ちを大切にしていきたいですね。自覚と誇りを胸に——阿部選手はよく「子どもたちに夢を与える選手になりたい」とおっしゃっていますが、小さい頃に影響を受けた選手は。阿部 ずっと言い続けていますが、野村忠宏選手です。物心ついた頃から、憧れている柔道家です。スタイルが似ているというわけではないのですが、オリンピックという舞台でも相手から一本をとる自分の柔道を貫き、実際に一本をとる姿を見た時に、「この人みたいになりたい。オリンピックの舞台で自分の技で相手を投げて一本勝ちして優勝したい」という気持ちになりました。——昨年度のOLYMPIANで
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