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2017.12.27 キャリア支援

JOCの就職支援「アスナビ」:渋谷区、東京商工会議所渋谷支部と説明会を共同開催

JOCの就職支援「アスナビ」:渋谷区、東京商工会議所渋谷支部と説明会を共同開催
プレゼンを行った6選手。左から島田選手、木村選手、来間選手、但野選手、本村選手、安江選手(写真:フォート・キシモト)
JOCの就職支援「アスナビ」:渋谷区、東京商工会議所渋谷支部と説明会を共同開催
左から星野一朗JOC理事、長谷部健渋谷区長、東京商工会議所渋谷支部の佐藤仁会長(写真:フォート・キシモト)

 日本オリンピック委員会(JOC)は11月22日、東京都の渋谷区商工会館で、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」の説明会を行いました。

 アスナビは、オリンピック・パラリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、企業の就職支援を呼びかける活動です。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに120社/団体180名(※来春採用内定選手含む。2017年11月22日時点)の採用が決まりました。

 今回の説明会は渋谷区、東京商工会議所渋谷支部との共催で行われ、37社44名が参加しました。

 最初に、主催者を代表して星野一朗JOC理事があいさつを行い、現在まで180名のアスリートがアスナビを通じて就職したことを紹介する一方で、「取り巻く環境に苦しみ、明日の練習もままならない選手は、残念ながらいまだに数多く存在しております」と、アスリートの厳しい現状を報告しました。そのことを踏まえ、経済的な観点からも安心して競技に打ち込める環境が必要不可欠であることを訴えると、「彼らを採用していただいた際には、最初は会社の中で異色の存在に映るかもしれませんが、彼らが人生をかけ、そして命をかけて1つの競技に集中してきた経験は、必ず皆さま方のお役に立つことができると思っています」と、アスリートは社会人としても優秀な人材であることを強調しました。

 続いて共催者を代表して、長谷部健渋谷区長が登壇し、「ぜひ、民間の皆さまのお力をいただいて、一緒になってアスリートを盛り上げ、新しいものを作る原動力になっていければと思います」と参加企業にアスリート雇用の協力を訴えると、同じく共催者を代表してあいさつに立った東京商工会議所渋谷支部の佐藤仁会長は「東京2020大会に向けて、多くの選手の皆さんが活躍できるように、そして安心して練習に励むことができるように、東京商工会議所はアスナビと協力してまいりました。今後も東京オリンピック、パラリンピックの成功に向けて全力で応援を続けていきたいと思います」と、引き続きアスリートを支援していくことを述べました。

 次に中村裕樹JOCキャリアアカデミー事業ディレクターが、資料をもとにアスナビの概要を説明。夏季・冬季競技それぞれの採用人数、採用された競技、アスリート採用後の雇用形態や給与水準、勤務スケジュール、選手活用企業のポイントなどを報告しました。

JOCの就職支援「アスナビ」:渋谷区、東京商工会議所渋谷支部と説明会を共同開催
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社の倉田秀道経営企画部次長スポーツ振興リーダー(写真:フォート・キシモト)
JOCの就職支援「アスナビ」:渋谷区、東京商工会議所渋谷支部と説明会を共同開催
杉山愛さん(写真:フォート・キシモト)

「アスナビ」採用企業の事例紹介では、アスナビを通じて2016年3月にパラ水泳の宮崎哲選手、同年4月にパラ水泳の小野智華子選手、17年4月に競泳の小林奈央選手を採用した、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社の倉田秀道経営企画部次長スポーツ振興リーダーが登壇。同社ではアスナビでの採用を含めて、オリンピック、パラリンピックを目指すアスリートを20名雇用しており、採用方針と活動方針、選手へのサポートなど、宮崎選手ら3名のほか、車いすバスケットボールの立川光樹選手を実例に紹介しました。その中で、ここ最近で一番力を入れていることとして挙げたのが、選手に『活躍の場』を提供すること。特に“地域”に力を注いでおり、選手が地域イベントや競技体験会に参加することで「選手自身のスキルアップになり、応援してくれる人が増え、会社にとっては地域密着になる。またその自治体にとっては市民にスポーツを知ってもらう場となり、みんながWin-Winになれる取り組みになると思います」と、選手に『活躍の場』を与えることの重要性を説明しました。
 そして、倉田次長はまとめとして「主役は選手だと思います。ですので、色々なスポーツの応援の仕方はありますが、やっぱりアスリートを雇用するということが究極の支援だと思いますので、ぜひ皆さま、ご検討いただければと思います」と呼びかけるとともに、同社としても今後さらにアスリートをサポートしていくことを誓いました。

 次に行われたオリンピアンからの応援メッセージでは、テニスで1996年アトランタ大会、2000年シドニー大会、04年アテネ大会、08年北京大会と、4大会連続でオリンピックに出場した杉山愛さんが、現役時代に企業から受けた支援、サポートをテーマに自身の経験を振り返りました。
 17歳からプロ選手として活動していた杉山さんは、アスナビでの就職を希望するアスリートとは「ちょっと形は違いますが」と前置きしつつも、企業からサポートを受けることは「経済的にも支えていただきましたし、アスリートにとっては地道な日々の積み重ねのために環境が整っていることも必要。そして、みんなに応援してもらえることが大きい」と、大きな助けになったと言及。特にオフシーズンにサポート企業の社員と直に交流することで「心が温まりますし、こんなに支えてくれる人がいるんだから、もっと、もっと頑張ろうという原動力にもなりました」と、企業の応援の力に改めて感謝の言葉を送りました。
 また、この日はコーチとしても支え続けてきた杉山さんの母・芙沙子さんも出席。指導者から見た企業の支援について「サポートを含めた真の応援が、選手にはすごく力になるということを私は身近で見てきました。杉山もそうしたサポートをしていただいたので、長く選手を続けることができました」と振り返り、「若いアスリートたちがアスナビを通して、そういうチャンスがあることは本当に素晴らしいことだと思います」と話しました。そして最後に杉山さんは、この日参加した就職希望アスリートに向けて「選手として結果を残す競技力も重要だと思いますが、やはり、みんなに応援されるような人間力を磨き、社会人としても人としても魅力的になってほしいと思います」とエールを送りました。

 最後に、就職希望アスリート6名がプレゼンテーションを実施。スピーチをはじめ、映像での競技紹介やデモンストレーションで自身をアピールしました。

JOCの就職支援「アスナビ」:渋谷区、東京商工会議所渋谷支部と説明会を共同開催
安江貴哉選手(写真:フォート・キシモト)
JOCの就職支援「アスナビ」:渋谷区、東京商工会議所渋谷支部と説明会を共同開催
本村嘉菜選手(写真:フォート・キシモト)

■安江貴哉選手(水泳/競泳)
「私は5歳から16年間水泳に取り組み、高校3年生のときにインターハイで個人優勝し、日本代表にも選出されて世界ジュニア選手権で優勝することができました。2016年に行われたオリンピック選考会を兼ねた日本選手権では3位という結果に終わり、あと少しというところでオリンピック出場を逃してしまいました。この結果はそれまで以上に“日本一になりたい”“代表入りしたい”“オリンピックに出場したい”という自分の気持ちを一層強くさせ、大学卒業後も現役続行することを決意しました。私の強みはひたむきさです。私自身が結果を残して企業のイメージアップに努めることはもちろん、私の競技に取り組む姿勢から会社の皆さまに刺激を感じていただきながら、また私自身も会社の皆さまから刺激を受け、お互いに向上していきたいと思っています。一人の選手として、また一人の社会人として会社の力になれるよう尽力させていただきます」

■本村嘉菜選手(バレーボール/ビーチバレーボール)
「私は小学4年生からバレーボールを始め、中学、高校は名門・八王子実践に進学、中学3年時にはエースとして全国大会準優勝に導きました。ビーチバレーとの出会いは大学1年のときに同級生が誘ってくれた夏の大学選手権でした。1年の冬にリオデジャネイロオリンピック選手選考会にエントリーし、二次選考でトップ選手と試合をして、もう一度何かに夢中になり挑戦したいという気持ちに火がつきました。東京オリンピックまで時間はありませんが、まずは来年のユニバーシアードに出場して金メダルを取ることを目標としています。東京大会にとどまらず、そのまた4年後と、世界に挑戦し続ける本村嘉菜を応援していただけないでしょうか。もしご採用いただけましたら、私が世界に挑戦することで社員の皆さまに活力を感じていただけるよう、努力してまいります。“常に全力、常に挑戦、常に笑顔をモットー”に頑張り続けることをお約束いたします」

JOCの就職支援「アスナビ」:渋谷区、東京商工会議所渋谷支部と説明会を共同開催
但野瑠勇選手(写真:フォート・キシモト)
JOCの就職支援「アスナビ」:渋谷区、東京商工会議所渋谷支部と説明会を共同開催
来間弘樹選手(写真:フォート・キシモト)

■但野瑠勇選手(バレーボール/ビーチバレーボール)
「私はビーチバレーボールの聖地である神奈川県藤沢市で生まれ、この競技をとても身近に感じる環境で育ちました。小学校4年生でビーチバレーボールを始め、高校2年生で全国大会に出場し、卒業後も様々な大会で優勝したいと思いビーチバレーボールを本格的に取り組むことにしました。大学入学後の1年目は全国大会に出場することができませんでしたが、ひたむきに努力を重ねた結果、翌年に1つ上の先輩とペアを組んだことをきっかけに、大学選手権で優勝でき、世界大学選手権大会に日本代表として出場することができました。現在の目標はオリンピックでのメダル獲得ですが、まずは来年開催される世界大学選手権大会に出場してメダルを獲得することを目標に日々練習に取り組んでいます。企業様に入社したら、ビーチバレー同様に私がムードメーカーとして会社の良い雰囲気を作り、さらに大会で結果を出し、企業様のイメージアップに貢献することをお約束します」

■来間弘樹選手(陸上競技)
「私は中学1年生のときから10年間、棒高跳を専門にして競技に打ち込んできました。来年から社会人アスリートとしての一歩目を踏み出すわけですが、社会で仕事をする難しさを私はまだ知りません。ですが、言われたことに対し一生懸命に行い、自分の持っている能力を上げる努力をする自信が仕事面でもあります。もし採用していただけたなら、今持っている能力を伸ばす絶好の機会だと思いますので、仕事面でも結果が出せるよう精一杯精進していきたいと強く思っています。2020年東京オリンピックは出場、入賞だけでなく、メダル獲得という大きな目標を持って競技に取り組んでおり、2020年東京オリンピックの参加標準記録まであと15センチという、もう手の届くところまで来ています。どうか、この目標に対しお力添えしていただけないでしょうか。絶対に東京オリンピックに出ます。よろしくお願いします」

JOCの就職支援「アスナビ」:渋谷区、東京商工会議所渋谷支部と説明会を共同開催
木村毬乃選手(写真:フォート・キシモト)
JOCの就職支援「アスナビ」:渋谷区、東京商工会議所渋谷支部と説明会を共同開催
島田諒太選手(写真:フォート・キシモト)

■木村毬乃選手(フェンシング)
「私は高校の部活でフェンシングを始め、競技成績も一番上向きになっていた大学2年の冬、練習中に左足に大怪我を負い、1年半のリハビリ生活を余儀なくされました。ですが、復帰後、大学4年生時のインカレで個人、団体ともに優勝することができ、ナショナルチーム入りを果たすことができました。その後にロシアで今まで勝つことができなかったリオデジャネイロオリンピック金メダリストに、練習試合でしたが勝つことができ、私の中で大きな自信が生まれました。自分の強みとしては自己分析ができる能力と、何事も粘れる精神力、そしてリハビリ生活を乗り越えた自己コントロール能力です。最近、世界ランクも上がり、メディア露出も増えてきておりますので、採用していただけましたら、もっと頑張って企業様の広告活動の一部になりたいと思います。そして、皆様の応援の力で東京オリンピックに出て、必ずメダルを勝ち取りたいと思っています。どうかフェンシングに打ち込める環境を与えてください」

■島田諒太選手(体操/トランポリン)
「私は4歳のときにトランポリン競技に出会い、現在まで22年間トランポリン競技を続けています。トランポリン競技でオリンピックに出場できるのは、日本人では上位2名までとなっており、その中で私は現在、3番手から4番手に位置しております。私がオリンピックに出るためには、あと1つ、2つ順位を上げる必要性があります。そのために東京に進出して、今よりもさらに練習に専念できる環境に身を置きたいと考えています。私は3年前から現在まで、高校で体育教員の仕事をし、トランポリン部の顧問の仕事もしています。教員の仕事をする中で、人に指導する能力、部活を運営する能力が身につきました。今後、再就職する際にはそういった能力を生かしていければと思っています。オリンピックに出て金メダルを獲得することは、様々な方の支えがあって初めてなしえることだと思います。もし採用していただける企業様がありましたら、感謝の気持ちを持って、東京オリンピックで金メダルを獲得するという最大限の恩返しができるよう精一杯の努力をします」

 説明会終了後には、選手と企業関係者との名刺交換、情報交換会が行われ、企業と選手がそれぞれ交流を深めました。

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