日本オリンピック委員会(JOC)は9月28日、「平成29年度JOCコーチ会議」を開催しました。JOCの役員、選手強化本部をはじめ各専門委員会の委員や、ナショナルコーチ・専任コーチ等、国内競技団体(NF)の関係者ら、強化に関わる320名が参加。会議は2部構成で行われ、第1部では「キーノートスピーチ・情報提供」と題して、山下泰裕JOC選手強化本部長、スポーツ庁の籾井圭子競技スポーツ課長らによる講演、活動報告、第2部では8つのグループによる分科会が開かれ、平昌オリンピック、東京2020大会等に向けたディスカッションが行われました。
■平岡JOC副会長兼専務理事「開会挨拶」
プログラムに先立ち、まず主催者を代表して平岡英介JOC副会長兼専務理事が開会の挨拶。7月から山下氏が選手強化本部長に就任し新体制となったことを報告すると、「JOCとしても平昌オリンピック、東京2020大会に向けて、山下本部長の大きな力と、皆さん方と一丸となって進める強化の力と、それらを合わせて進めていきたいと思っています」と意気込みを述べました。そして、選手強化には指導者の力が重要であることを強調すると、「この会議では競技間、種目間の枠を越えて、ぜひ活発な意見交換を行っていただいて、アスリートのために私たちに何ができるか、それをよく考えていただければと思います」と呼びかけました。
■山下選手強化本部長「JOC選手強化本部体制と活動について」
第1部「キーノートスピーチ・情報提供」では、最初のプログラムとして山下選手強化本部長が「JOC選手強化本部体制と活動について」と題しスピーチ。前選手強化本部長だった橋本聖子JOC副会長が掲げた『人間力なくして競技力向上なし』のスローガンを東京2020大会まで継続していくことを述べると、「まずは半年後に迫った平昌冬季オリンピックで持てる力を十分に発揮していただきたい。そして、その勢いを借りて、1年後のアジア競技大会、東京オリンピック・パラリンピックを盛り上げていきたいと思います」と決意表明しました。また、東京2020大会は4年に1度のオリンピックではなく「50年に1度、100年に1度のオリンピック」と思って取り組んでいく必要があると言葉に力を込め、「皆さんと一緒に力を合わせて完全燃焼したい」と明言。そのためにも山下選手強化本部長が一番大事にしたいこととして、「JOCと競技団体との連携、指導者の声に謙虚に耳を傾けながら現場に寄り添うこと」を挙げると、「東京2020大会はオリ・パラ一体です。オリンピック、パラリンピック双方の成功なくしては大会の成功とは言えません。この成功が日本のスポーツ界の将来にとって極めて大事です」と、パラリンピックを含めてチームジャパン一丸となって前進していく思いを述べました。
■籾井競技スポーツ課長「我が国における競技力向上施策」
続いて、スポーツ庁の籾井競技スポーツ課長が「我が国における競技力向上施策」について講演。スポーツ庁によるアンケートでも平昌オリンピック、東京2020大会に向けた国民の期待がますます高まっていることを示すと、「この機会に競技力の向上により一層取り組んでいただいて、スポーツの魅力を一人でも多くの方々に伝えることが非常に重要だと考えております。スポーツ庁としてもその観点から、各団体と連携しながらスピード感を持って、より一層選手強化の支援に取り組んでいきたいと考えております」と、今後の方針について述べました。その上で、昨年スポーツ庁が策定した競技力強化のための今後の支援方針(鈴木プラン)、スポーツ基本計画における第1期の成果と第2期の方針・施策について詳細を説明。また、これら以外にもスポーツ庁が取り組んでいる施策として、女性アスリートの支援、アスリートの育成・発掘プログラム「J-STARプロジェクト」について報告しました。
■村里国際局長、小林NOC/NPC部長「東京2020オリンピック・パラリンピックに向けた進捗状況」
次に、「東京2020オリンピック・パラリンピックに向けた進捗状況」について、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の村里敏彰国際局長がスピーチを行いました。組織委員会は「スポーツには世界と未来を変える力がある」という大会ビジョンのもと準備、運営を進めていると説明した村里国際局長は、山下本部長、籾井課長のスピーチを受け、「世界と未来をこの東京から変えていくんだという思いが一緒になったのではないかと思います」と感想を述べました。そのことを踏まえ、“都会の中で気軽に楽しめる”“若者向け”“ジェンダーバランス”をキーワードに実施競技が増加した背景、ヘリテッジゾーンと東京ベイゾーンからなる東京2020大会の各会場の概要、組織委員会と各NFをつなぐスポーツマネージャーの紹介、各競技スケジュールの進捗などを報告。続けて、同じく組織委員会の小林亨国際局NOC/NPC部長が、21の居住棟と4つのエリアで構成される選手村の概要と、選手村と各会場を結ぶ輸送について詳細を説明しました。
■石上東京歯科大学特任教授「歯とスポーツパフォーマンスの関係」
休憩を挟み、次に行われたプログラムは「スポーツと歯の関係―スポーツパフォーマンスに及ぼす影響」をテーマとした、日本歯科医師会の石上惠一東京歯科大学特任教授による講演。ここでは、マウスガードを正しく使用することの有効性から始まり、噛み合わせ(咬合)が及ぼす身体バランス能力や筋力への影響などが解説されました。実験・臨床動画やデータからは、噛み合わせが悪いとバランス能力や筋力などに悪影響を及ぼし、総じて運動パフォーマンスが落ちることが証明されており、石上教授はアスリートにとって正しい噛み合わせが重要であることを強調。そして、「どんな競技でも一つの試技の中に必ず咬合の関与が表れます。そこできちんとした咬合が提供されていなければパフォーマンスにも影響が出てくる。いかなる競技においても、咬合顎位の安定が競技成績に大きな影響を及ぼすということは決して過言ではありません」と参加者に訴えました。
続いて、JOCアントラージュ専門部会より、同部会の概要、これまでの活動並びに今後の活動方針などが説明され、第1部が終了しました。
■平成28年度JOCナショナルコーチアカデミー修了式
午後からの第2部は分科会が開かれました。参加者は夏季競技、冬季競技、非オリンピック競技など8つのグループに分かれ、それぞれのテーマに沿って強化現場の現状や大会に臨むにあたっての課題などについてディスカッションを実施。議論された内容、総括は、分科会の後に行われたクロージングセッション内で各グループの代表者が発表し、それぞれの競技が抱える課題、改善策などが共有されました。
クロージングセッションでは、分科会の総括発表後に平成28年度JOCナショナルコーチアカデミー修了式が行われました。37名の修了者のうちコーチ会議に出席していた16名が登壇。山下本部長より「ここでの学びを土台として、さらに自己研鑽に励まれ、それぞれの競技団体の枠を越えた連携を図っていただき、選手の育成、競技力の発展に尽くされることはもちろん、日本のスポーツ界の発展のためにご尽力いただきたいと思います」という激励の言葉とともに、修了者を代表して日本レスリング協会の井上謙二さんに修了証書が贈られると、井上さんは「ナショナルコーチアカデミーで学んだことを、2020年東京オリンピックで主役となる選手のため、またその後を目指す選手のため、またチームジャパンという絆で一丸となり無限大の力を生み出せるよう、今後強化・指導していく所存です」と抱負を語りました。
最後に、福井烈JOC選手強化副本部長が閉会の挨拶に立ち、平昌オリンピックまであと133日であることを述べると、2018年アジア競技大会、東京2020大会までを見据えて「まさにオールジャパン体制で取り組んでいかなければならないと思っています」と力強くコメント。そして、「JOC強化本部では引き続き『人間力なくして競技力向上なし』をスローガンに、これまで以上に競技団体へのサポートを充実させて、競技間連携をさらに深めて、選手の環境整備に努めてまいります。我々ができる最高の準備をして、平昌オリンピック・パラリンピック、ジャカルタ・パレンバンアジア大会、そして東京オリンピック・パラリンピックを迎えていきましょう」と参加者に呼びかけて、平成29年度JOCコーチ会議を締めくくりました。
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