公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)は6月12日、味の素ナショナルトレーニングセンターで、「第6回 アスナビ採用企業 情報交換会〜テコンドー編〜」を開催しました。
アスナビは、オリンピック・パラリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、企業の就職支援を呼びかける活動です。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに106社/団体155名(2017年6月12日時点)の採用が決まりました。
今回の情報交換会では、全日本テコンドー協会から3名、テコンドー選手を採用した企業から4社7名が参加し、それぞれ情報を交換、交流しました。
はじめに主催者を代表して、八田茂JOCキャリアアカデミー事業ディレクターが挨拶し、情報交換会の趣旨、この日のプログラムなどについて説明しました。八田ディレクターは、アスナビを通じた昨年1年間の採用が、今回参加した3社に入社した3名を含む約50名にも上ったことを報告。そして、「今日作っていただいたご縁で、競技団体さんや他の企業さんにいろいろご相談いただき、選手活用のケアをしていただけたらと思います」と述べました。
■競技団体による企業へのサポート
次に「競技団体による現状紹介」として、全日本テコンドー協会アスリート委員会の高橋美穂さんが、競技団体から企業への情報共有について説明しました。高橋さんは、主な国内大会のスケジュールやキョルギ(組手)種目のシニア選手の強化事業に関する資料を用いながら、採用企業に対してメールを使うなどして定期的に情報共有を行っていることを紹介。そして、「私が聞いた限り、テコンドー競技と知って採用いただくというよりも、人となりを気に入って採用いただいている企業が多かったのですが、皆様には選手だけではなく、テコンドーのファンになっていただきたい」と、参加企業に対して競技へのさらなる理解・普及に期待を寄せました。
■採用企業の活用事例を紹介
続いて、採用企業の選手活用事例では、2016年4月に採用された山田美諭選手をはじめ、5競技7選手が所属する城北信用金庫人事部の大利久美さんが登壇。同社がアスリートを採用する理由、採用形態、支援体制、選手の活動実績を紹介しました。
金融機関である同社は、競合との差別化を図るのが難しいという金融機関の特性を踏まえ、非金融事業で地域や顧客とのつながりを作り、還元することを目指しています。自らも陸上女子20キロ競歩で2012年ロンドンオリンピックに出場したオリンピアンでもある大利さんは、マネージャーとして選手の講演やスポーツ教室などの活動をサポートする中で、社内や地域でアスリートの認知度が向上し、つながりが生まれてきたことを実感しているといいます。しかし、それだけでなく「(選手には)人として成長することの必要性を訴えています。そうすることで、結果的に競技力も上がり、地域のお客様からも職員からも愛される選手になってくれると信じています」と、一人の人間としての成長も重視していることを説明。そして、参加企業に「本日ご参加いただいている企業様それぞれに合ったアスリートのご活躍、活用の仕方があると思います。本日お話させていただいたことが少しでも参考になれば幸いです」とアドバイスを送りました。
■選手が抱える問題、心理サポートについて
次に、「選手が抱える問題 企業アスリートのメンタルケアのポイント」をテーマに、国立スポーツ科学センター(JISS)の立谷泰久さんが登壇。世間が抱くアスリートのイメージと実際のギャップ、アスリートの悩みの実態、トップアスリートの心理的問題・課題などを、実際の事例をもとにした仮想事例を用いながら講義しました。立谷さんは、明るく元気など世間的にポジティブなイメージのあるアスリートは、一方でなかなか弱みを見せられない部分があると説明。そして「例えば企業の方が選手に直接話を伺っても、もしかしたら、『大丈夫です』『是非やらせてください』と、とても良い答えが返ってくるかもしれませんが、それが本音かどうかは分からない部分もあります」といい、第三者である外部機関に心理サポートを依頼するなど、「お互いが思ったことを言えるような環境づくりが大事になります」と訴えました。
最後に、JOCキャリアアカデミー事業スタッフが進行役となり、情報交換会を実施。「A.労務関係(選手の業務内容、評価や賞与、活動の経費精算、キャリアプランなど)」、「B.応援体制(場所やチケット確保、会社補助、社員の巻き込み方など)」について、参加企業同士で活発に意見や質問が交わされ、アスリート採用に関する知見、交流を深めました。
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