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2016.05.02 キャリア支援

JOCの就職支援「アスナビ」:100名就職記念シンポジウムを開催

JOCの就職支援「アスナビ」:100名就職記念シンポジウムを開催
アスナビ100名就職記念シンポジウムが開催された(写真:アフロスポーツ)
JOCの就職支援「アスナビ」:100名就職記念シンポジウムを開催
竹田JOC会長はアスリートへのさらなる支援を呼びかけた(写真:アフロスポーツ)

 日本オリンピック委員会(JOC)は4月20日、アスナビ100名就職記念シンポジウム「アスナビ5年間の軌跡と今後のアスリートと企業の関係を考える」を味の素ナショナルトレーニングセンターで開催しました。

 JOCが行っているトップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」は、2010年10月にスタート。4月22日までに75社/団体104名の採用が決定しています。今回の記念シンポジウムには48社/競技団体70名が参加しました。

 シンポジウムの開会にあたり、最初に竹田恆和JOC会長が熊本地震に触れ「震災で犠牲になられた方々、そしてご家族に心からお悔やみ申し上げますとともに、被災にあわれた方にお見舞い申し上げ、1日でも早く復興いたしますことを心から祈っております」と述べました。その後、アスナビによる採用が100名を超えたことに対し企業関係者へ感謝の言葉を述べると、「トップアスリートが大舞台で活躍するためには、練習場、あるいは宿泊所、食事の施設などハードの面も必要ですが、選手の経済的な観点からも安心して練習に励むことができるのが必要不可欠です。そして、皆さまのサポートがトップアスリートの明日を築いていただいています。そうした意味でも本日お集まりいただいた企業の皆さま方も『チームジャパン』の一員であると私どもは考えています。今後もこれまで以上に選手の環境の整備、強化のサポートをよろしくお願い申し上げます」と、引き続きの支援を訴えました。

JOCの就職支援「アスナビ」:100名就職記念シンポジウムを開催
障がい者アスリートの魅力をアピールした高橋JPC副委員長(写真:アフロスポーツ)

 続いて、日本パラリンピック委員会(JPC)の高橋秀文副委員長が挨拶に立ち、パラ・アスリートが現在までに16社17名採用されたことへのお礼を述べるとともに、障がい者アスリートの魅力をアピールしました。さらに、共生社会の実現というJPCが掲げる目標のもと、「それぞれがそれぞれの個性を生かして活躍できるのが共生社会。社会の表裏一体である会社もそれぞれが活躍して初めて共生会社と言えます。今後とも共生社会の実現、そして共生会社の実現へ、アスリートだけではなくて障がい者のメンバーもぜひお仲間に加えていただきながら、ぜひ、いい社会を作ってまいりたい。そのためのお力をお借りしたいと思います」と呼びかけました。

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日本バレーボール協会の荒木田強化事業本部強化本部長(左)、北野建設株式会社の荻原スキー部GM(写真:アフロスポーツ)
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和光大学経済経営学部の原田教授(左)、経済同友会の岡野常務理事(写真:アフロスポーツ)

■創設メンバーがアスナビ創業期を語る

 竹田JOC会長、高橋JPC副委員長による開会の挨拶の後は、「アスナビ創業期を語る」と題して、アスナビ創設メンバーである経済同友会の岡野貞彦常務理事、和光大学経済経営学部の原田尚幸教授、日本バレーボール協会の荒木田裕子強化事業本部強化本部長、北野建設株式会社の荻原健司スキー部GMが、アスナビ創業時に苦労したことや、アスナビという名前の由来、また当時のアスリートたちの立場や考え、それに対する企業側の姿勢などを振り返りました。

 現在はアスナビ制度が軌道に乗り、6年目にして採用が100名を超えたことで「2020年、それ以降に向けて一緒に日本のスポーツ社会を築き上げていくという部分では、このアスナビは本当に重要な位置になってくると思います。また世界的に見ても、現役のアスリートが引退してからも安心できるサポートは1つもありません。私たちが世界に誇れるプログラムだと思います」と荒木田強化本部長。一方、岡野常務理事は経済界の立場から「アスリートの世界で大変良い成績を残しているだけでは採用は難しい。人間力のあるアスリートが会社に入ることで初めてアスリートと企業のWin-Winの関係が出来上がります。これまで以上に指導者の方には、一人の人間として社会的なしっかりとした能力を磨いていくことにもご指導いただきたい」と述べました。

 また、アスナビ命名者でもある原田教授は「世界を目指すトップアスリートはビジネスパーソンとしても優秀だと思っているのですが、アスリートの皆さんの多くがその価値に気づいていないと思います。ですから、すでにいる会社の皆さんの中にトップアスリートが入るとどのようなシナジーが起きるのかなど、引き続き見守っていきたいです」と期待を込めたコメント。最後に荻原さんは、長野県で独自のアスナビ説明会の開催が決まったことに触れながら「日本のスポーツ、オリンピックを応援することに対して第三者ではなく、当事者になっていただきたい。会社が一体になり、さらには社会が一体になっていく、そういう日本の社会を私もお手伝いしていきたいと思います」と、今後の活動への抱負を述べました。

JOCの就職支援「アスナビ」:100名就職記念シンポジウムを開催
上田春佳さん(左)、桜井美馬さん(写真:アフロスポーツ)
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横尾千里選手(左)、宇城元選手(写真:アフロスポーツ)

■アスナビ採用アスリートたちの声

 次に行われた「採用企業からの声」では、2名を採用しているキッコーマン株式会社、5名を採用している全日本空輸株式会社グループが、アスリートの採用事例を紹介。勤務状況やアスリートのケア、大会での応援体制、これからの課題などを説明しました。その中で2企業ともに共通していたのは、アスリートを採用・応援することで社内に一体感が生まれたということでした。

 続けて、アスリート側の声として「就職アスリートの座談会」が行われました。引退したアスリートからは、水泳・競泳のロンドンオリンピック銅メダリストの上田春佳さん(キッコーマン株式会社)と、スケート・ショートトラックでバンクーバーとソチオリンピックに出場した桜井美馬さん(東海東京証券株式会社)、現役選手からは女子7人制ラグビーの横尾千里選手(全日本空輸株式会社)、パラ・パワーリフティングの宇城元選手(順天堂大学)が登壇。現在担当している仕事内容と勤務状況、採用による環境の変化、企業の応援の力などを語り合いました。

 そして、今後の社会貢献や仕事の目標として、上田さんは「私と(同じくキッコーマンに採用された)カヌーの竹下百合子選手とでキッコーマンアカデミーの出前授業をやっていきたい。水泳とカヌーは競技としても全然違いますし、食育をテーマにした授業もやってみたい」、桜井さんは「現在、私自身も採用の仕事をしているので、良い学生さんが少しでも多く入ってもらえるようにすることが、会社に対しての貢献だと思っています」、横尾選手は「アスリートはメンタルが強いイメージがありますが、実はそうではなくて、強くなろうと色んな勉強やトレーニングをしています。そうした経験を会社の仕事を通して伝えていけたらと思っています」、宇城選手は「22年前に下半身不随になって車いすに乗っていますが、パワーリフティングという競技で障がいを乗り越えてきたと思っています。ですので、障がい者の方にスポーツの素晴らしさを伝えられるように自分も競技を頑張り、そして障がい者の方たちを支援していければと思っています」と語りました。

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日本フェンシング協会の齋田専務理事(左)、日本アイスホッケー連盟の細谷さん(写真:アフロスポーツ)
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日本パラ・パワーリフティング連盟の吉田理事長(写真:アフロスポーツ)

■引退選手向けの就職支援サービス「アスナビNEXT」が新設

 アスリート座談会の後は、「競技団体からの応援メッセージ」として、日本フェンシング協会の齋田守専務理事、日本アイスホッケー連盟の細谷妙子さん、日本パラ・パワーリフティング連盟の吉田進理事長が登壇。フェンシング、アイスホッケー、パラ・パワーリフティングは、夏季競技、冬季競技、パラ競技の中で採用実績が現在までで一番多い競技団体です。

 アスナビに対する今後の期待として、齋田専務理事は「フェンシングは海外遠征が多い競技ですが、ジュニアの世界選手権で初めて金メダルを取るなど若い選手が育ってきています。ぜひ後押しして応援していただきたい」、細谷さんは「女子アイスホッケーは来年2月が平昌オリンピック最終予選となり、日本で開催されることが決まりました。どうか皆さまにご支援いただいて盛り上げていただき、何とかオリンピック出場を果たしたいと思います」、吉田理事長は「パワーリフティングの特殊なところは練習時間が非常に短い。大会に向けての練習でも2時間ぐらい。ですから企業人としての選手とパラリンピックを目指す選手というのは両立するスポーツです。また、長く競技をやっている選手は一瞬にかける集中力を仕事にも生かすことができる。集中力があり企業に対して働ける人が多いので、ぜひ今後ともよろしくお願いいたします」と、それぞれ呼びかけました。

 最後に、アスナビを活用して就職した選手で今夏のリオデジャネイロオリンピック日本代表に内定した古賀淳也選手(競泳・水泳)、丸茂圭衣選手(競泳・シンクロナイズドスイミング)、矢澤亜季選手(カヌースラローム)、パラリンピックの水泳日本代表に内定した津川拓也選手、小野智華子選、宮崎哲選手からビデオメッセージが送られ、それぞれオリンピック、パラリンピックでの活躍を誓いました。

 なお、シンポジウム閉会にあたり、司会を務めた八田茂JOCキャリアアカデミーディレクターから、引退選手向けの就職支援サービス「アスナビNEXT」の新設が発表されました。今後のスケジュールとして、今年7月・9月に「引退検討選手向けキャリアセミナー」実施、今年9月に強化指定選手向けの「セカンドキャリア意識調査」実施、今年10月以降に引退選手の就職マッチング開始をそれぞれ予定しています。

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