日本オリンピック委員会(JOC)は2月26日、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」のパラアスリート採用企業交流会を開催しました。
アスナビは、オリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、企業の就職支援を呼びかける活動。平成22年度から実施しており、これまでに43社58人の採用が決まりました(2月26日時点)。平成26年度秋からは日本パラリンピック委員会(JPC)とも連携協定して、パラリンピックを目指すトップアスリートの就職支援も開始し、これまでに6社6人のパラアスリートの採用が決まっています。
今回の交流会は、パラアスリート雇用の現状と課題を浮き彫りにし、採用企業のより良い受け入れ体制作りや今後の雇用促進を目的としており、「アスナビ」採用企業、日本障がい者スポーツ協会・JPC加盟競技団体関係者の担当者らが参加して行われました。
まずは福井烈JOC理事があいさつに立ち、「JOCでは昨年8月にJPCと協定を結んでパラリンピックを目指すトップアスリートの就職支援をする取り組みを本格的に始めました。パラリンピックを目指す選手の採用は6社6人になります。私たちはこの数字を伸ばしていきたいと考えています」とパラアスリートのさらなる採用に向けた決意を述べました。
また、男子テニスのロジャー・フェデラーが「日本からはどうして世界的な男子選手が出ないのか?」という質問を受けた際に「何を言っているんだ、クニエダがいるじゃないか」と車いすテニスの国枝慎吾選手の名前を挙げたというエピソードを披露。「世界のテニス界ではオリンピック、パラリンピック関係なく、その情報を共有しているんです。その言葉が出たときにはスポーツの世界に壁はないんだなということを感じました。オリンピックだけでなくオリンピック・パラリンピックというくくりで応援していただきたい」と訴えました。
続いて中森邦男日本障がい者スポーツ協会・JPC事務局長からは、「スポーツで世界一を目指すということは、計画的な強化が必要です。栄養面、心理、海外への遠征だったりを選手自身が計画してクリアしていく。これを高いレベルでクリアすることでメダルにつながっていくと思っています。これは一般の企業の皆さんが普段仕事をされていることと通じると思っています」とトップアスリートの資質は企業でも生かせるものであると述べました。
国際パラリンピック委員会のパラリンピックPR映像が流された後には基調講演が行われ、初瀬勇輔日本パラリンピアンズ協会理事が自身の経験も踏まえつつパラアスリートの雇用についての説明を行いました。
パラアスリートの働き方には、業務優先型と競技優先型、その中間の業務調整型の3タイプがあり、競技レベルが上がってきている世界で勝つために、最近では競技優先型が増えてきたことを紹介。河合純一日本パラリンピアンズ協会会長と一緒に行った質疑応答では、世界で勝つためには業務優先では難しいが、一方でパラアスリートは選手寿命が長いために引退が高齢になり、その際に競技優先で仕事ができないとセカンドキャリアへの移行が難しくなるという話がありました。
アスリートプレゼンではパワーリフティングの宇城元選手が名古屋で長年務めた会社から現在の職場である順天堂大学に移った経緯などを説明。前職でやっていた経理に近い会計課の仕事を午後2〜3時までこなしたあと、大学の施設内でトレーニングを行っており、転職によってより競技に集中できるようになった事例として紹介されました。
その後は、採用実績企業と採用検討企業、パラリンピック実施競技団体の担当者が2つのグループに分かれて意見を交換し、パラアスリート採用に関する情報交換を行いました。
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