日本オリンピック委員会(JOC)は11月23日(水・祝)、先月引退を迎えた小平奈緒さん(スケート/スピードスケート)とともに、「未来につなぐスケートの輪 on NAO ice OVAL」を開催。本イベントは、長野県茅野市との共催で、TEAM JAPANシンボルアスリート ソーシャルアクションの一環で実施されました。
本イベントは、子どもたちが小平さんのスケートを愛する心を受け継ぎ、オリンピックを目指すきっかけになるとともに、真摯にスケートに打ち込み、世界の人々に愛された小平さんの人間性に触れることで、「たくましく、やさしい、夢のある子ども」に育つことを目指して実施され、長野県内のスケートクラブに所属する小・中学生の154名が参加し、プログラムを楽しみました。
冒頭、進行を務める結城匡啓コーチより、「自分の名前がついたスケートリンクで、スケートを頑張っている子供たちと交流したいという小平さんの願いからこのイベントが実現しました。今日は楽しい時間にしていきましょう」と開催に至った背景が述べられ、イベントが始まりました。
■講演会「唯一無二の自己表現」
はじめに、小平さんの競技生活を振り返る映像が流れ、小平さんが登場。今まで歩んできた足跡を振り返るとともに、小学5年生の時に長野1998冬季オリンピックを目の当たりにしたことが将来オリンピックに出場するイメージを持つきっかけになったことを明かしました。その後、高校生で親元を離れ、一人暮らしをすることになり、悩みを抱えていた時に母親から「必ず誰かが見てくれている」という手紙をもらい、一人ではなく、周りの助けも借りながら頑張っていこうと決意したことを語りました。
その後、平昌冬季オリンピックに出場した際、自身のレース後に会場の盛り上がりを抑えるポーズをしたエピソードを振り返り、「自国で開催されたオリンピックで代表として戦うイ・サンファ選手はどんな気持ちでレースに向かっているのかを考えました。たくさんの期待、応援を受けて緊張しすぎて実力を発揮できないのではないかと思い、あのポーズをしました」と述べました。「普段の練習から、みんなのためになることは自分のためになると考えています。誰かを蹴落としてトップに立つのではなく、あなたがいるから私が強くなれると思える関係を作ることがとても大事です」と語りました。
一方で、金メダル獲得や、自己ベスト更新、日本記録、世界記録を出したことで一時期、目標を見失ったことを明かすとともに、「今まで目標としていた世界記録や金メダル獲得は『唯一無二の自己表現』という大きな目的を叶えるための目標であることに気づくことができました」と語りました。
そして、参加した子どもたちへ向けて「目標だけではなく目的も考えてほしいと思います。それは人と比べようがないもので順位も付けることができません。人生を通して、自分がどのような人間になりたいかという目的を抱いてほしいと思います。それが私にとって『唯一無二の自己表現』でした。みんながこれから描く足跡は人それぞれの形でいいと思います。どんな未来を描くのかとても楽しみにしています」とメッセージが送られました。
■小平さんと瀧直也先生による交流会
次に小平さんの先輩で信州大学の瀧直也先生が登場。参加している子供たちを、様々な学年、所属クラブが混ざるかたちのグループに分け、「グループじゃんけん」「進化じゃんけん」というゲームを実施。瀧先生の進行のもと、小平さんと子どもたちが楽しく交流しました。
■小平さんと結城コーチによる「スケートのおはなし」
次に、小平さんと結城コーチによる「スケートのおはなし」が行われました。まずスタートラインに立つ時には「どのようなレースにしたいかをイメージし、どうすればベストを尽くせるか、どのように自分をコントロールすれば良いかを考えています」とレース直前の心境について語りました。また、スタート時の構えや、直線では「ブランコと同じように小さく動いて加速すること」、カーブでは「右の骨盤を下げることに意識を置くこと、ギリギリまで身体を右に残す」など、どのように動作すればうまく滑ることができるのか具体的な実技を交えた指導が行われました。そして、結城コーチからは、「まずはやってみてください。そして、次回、小平さんと会った時には、やってみた感想をぜひ教えてください。所属先のコーチにも相談してどうやったらもっと上手くいくのか、たくさん考えてみてください」とメッセージを伝えました。
イベントの終盤では、参加した子どもたちから小平さんへ「憧れてずっとスピードスケートを頑張ってきました。今日はすごく楽しいです」といった感想や、「競技を始めたばかりの頃は、小平さんも転んだりしたのか」「一番大変だった練習は何か」などの質問が寄せられ、最後には全員で記念撮影が行われました。
イベント終了後、小平さんから「悪天候で一緒にリンクで滑ることはできませんでしたが、スケートの話をしたり、私がこれまで歩んできた道のりをお話しできたことで、参加した子供たちに、自分たちが今後歩んでいく未来を想像してもらえたのではないかと思います。ソーシャルアクションという社会を豊かする一つのきっかけとして、JOCや茅野市の皆さんにご協力していただいて叶った私の一つの夢なので、これを機会にこういったイベントを今後もできるように私も成長していけたらと思います」とコメントいただき、イベントが幕を閉じました。
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