日本オリンピック委員会(JOC)は10月21日、味の素ナショナルトレーニングセンターウエストで、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」の説明会を行いました。
アスナビは、アスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、アスリートと企業をマッチングする無料職業紹介事業です。年間を通じて「アスナビ説明会」を複数回実施し、企業に対してトップアスリートの就職支援を呼びかけています。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに216社/団体355名(2022年10月21日時点)の採用が決まりました(内定者含む)。
今回の説明会ではJOC主催のもと、17社25名が参加しました。
最初に主催者を代表して田口亜希JOC理事が、アスナビ説明会が開催されることへ感謝の言葉を述べました。続けて「皆様のサポートが我が国のトップアスリートの明日を、未来を作っていくと思っております。お集まりいただきました皆さまは、オリンピック・パラリンピックを共に目指すTEAM JAPANの一員だと私たちは思っています。いろいろお話をして、選手を知ってください」とアスリートの採用を呼びかけました。
続いて、中村裕樹JOCキャリアアカデミー事業ディレクターがアスナビの概要ならびに、過去にアスナビを通じて採用されたアスリートと採用企業の担当者のコメント、アスリート採用を呼びかけるメッセージなどを動画で紹介。さらに資料をもとに、登録するトップアスリート、就職実績、雇用条件、採用のポイント、アスリート活用のポイント、カスタマーサポート、これからの進め方などを説明しました。
続いて、競泳の平井彬嗣選手と小松巧選手(ともに水泳/競泳、小松選手は競技を引退)を採用した郵船ロジスティクス株式会社の人事総務部人材開発課 宮澤知子氏より、トップアスリートを社員として採用する理由やアスリート社員の業務について紹介がありました。宮澤氏は、同社が両名の採用に至った理由について、引退後も社員として一緒に働いていきたいと思える人物であったと述べました。また、両名の業務内容として社内報や社内イベント、社会貢献活動の様子を話し、サポートを受けた小松選手、平井選手から登壇するアスリート、採用を検討する企業へのメッセージが紹介されました。
■小松巧選手(水泳/競泳・既に競技を引退し業務に専念)からメッセージ
「アスリートの皆さん、競技の結果はもちろん大切ですが、それ以上に競技で学べる人間力というものを大切にしてほしいです。採用を考えていらっしゃる企業様、アスリートは世界を舞台に戦っており、結果に辿り着くまでの課題解決能力は人一倍であると思います。現役時代はもちろん、引退後の選手の活動を見守っていただけるととてもありがたいです」
■平井彬嗣選手(水泳/競泳)からメッセージ
「うまくいっていない時、困難や試練に立ち向かっている時にどうか一緒に戦ってあげてください。アスリート時代の輝かしい栄光や功績とは違い、アスリート社員としての挑戦には、苦難や困難、挫折に苛まれる時期が必ず訪れます。そんなときにそばにいて、共に前を向き、景色を共有してくださることは、言葉に形容できないほどの力となり、私たちを救ってくれることと思います。競泳競技は泳ぐ時は、一人きりです。しかし、幸せなことに郵船ロジスティクスに入社をしてからは、一人ではありませんでした。だからこそ、2回のオリンピックを逃し、コロナ禍でくじけそうになっても、再び前を向き、2年後のオリンピックに向けて歩むことができていると思っております」
次に、オリンピアンからの応援メッセージとして、競泳で2008年北京オリンピック、2012年ロンドンオリンピックに出場し、現在は日本オリンピック委員会でアスリート委員を務める伊藤華英氏よりビデオで応援メッセージが送られたのち、就職希望アスリート5名が映像を交えた競技紹介やスピーチで自身をアピールしました。
■上田翔貴選手(バレーボール/ビーチバレーボール)
私は幼少期からたくさんのスポーツを経験し、高校ではバレー強豪校に入学、2年時からレギュラーとしてインターハイなどに出場してきました。しかし、高校3年時に挫折を経験し、一度スポーツを諦めました。大学に進学し、スポーツに関わっていない自分にもどかしさを感じた時、ビーチバレーボールと出会いました。その後、川崎ビーチスポーツクラブに所属し、コーチと共にトッププロを目指し努力し続けていきました。大学2年時にインドアとビーチの両立に挑戦し、伸び悩む時期もありましたが、課題に向き合い、喜びや悲しみを一緒に分かち合えるようなチーム作りに取り組んだ結果、大学3年時に出場したジャパンツアー沖縄大会で学生初の3位入賞という快挙、今年8月の全日本インカレでは目標としていた優勝、9月にはブラジルで行われた世界大学選手権に出場し、世界を知る良い経験となりました。次の目標は、パリ、ロサンゼルスオリンピックに出場し、メダルを獲得することです。皆様の企業にご採用いただけましたら、何事にも向上心を持って取り組み、自分の強みを活かし、将来的には人や組織を支え、大きな組織をマネジメントできる人材になりたいと考えております。スポーツと仕事のデュアルキャリアを目指し、どちらも一流になりたいです。上田翔貴をよろしくお願いいたします。
■岩元杏奈選手(自転車)
私は小学校の時にトライアスロンを始め、中学校の時から自転車競技に専念してきました。高校入学当初は全国大会で優勝することができませんでしたが、体格や体力が違う男子選手と一緒に練習に励んだ結果、インターハイと全国ジュニア選手権ロードレースで優勝、ジュニア代表としてアジア選手権や世界選手権などにも出場しました。その後、大学入学してすぐにインカレの500mタイムトライアルトラック種目で優勝、アジア選手権ロードでは銀メダルを獲得することができました。大学2年生からジュニアU23のカテゴリーに上がり、頑張ろうと思った矢先に新型コロナウイルス感染症が拡大。体調不良、大学3年生の時に落車し、鎖骨骨折をするなどの挫折も経験しました。苦しい時期が続く中で、プレッシャーを感じながら競技をしていることに気づき、成績を求めるよりも競技を楽しくやることを優先して取り組んでいこうと考えました。その結果、復帰戦の全日本選手権トラックのスクラッチ種目で3位入賞、現在はU23ロードの全日本強化指定選手になっております。これから先も日常生活や社会においていろんな壁が立ちはだかると思いますが、競技経験を活かし、諦めずに自ら行動して社会に貢献できるように頑張っていきたいと思っています。私の競技活動や成績において企業の皆様に貢献できるよう、2024年のパリオリンピックを目指して頑張っていきたいと思います。岩元杏奈をよろしくお願いいたします。
■中島恒選手(フェンシング)
私は中学校の部活動でフェンシングを始め、今年で競技歴が十年目になります。高校での週6日の練習や大学との合同合宿によって実力を伸ばすに連れて、勝つ楽しさや喜びを知ることができました。高校では全国制覇を目標に日々練習していましたが、全国準優勝とあと一歩届かず、大学でこそ、と強く決心しました。大学では体育会に所属し、伝統やプライドをかけて戦う経験は今までにない、わくわく感と高揚感がありました。しかし、新型コロナウイルスが猛威を振るいました。その中で実力を伸ばすために自宅での筋トレや動画分析を行ない、自分のスタイルを追求していきました。その取り組みが実を結び、昨年の大会で結果を残して国内ランキング3位を達成し、社会人になってもフェンシングを続けるという決断をしました。私の目標は、オリンピックで優勝することです。ご縁があった企業様と共に新しいわくわくした未来を紡いでいくことを楽しみにしております。私はスポーツを通じて企業の皆様、ステークホルダーの皆様、そして日本の皆様に感動を届けられるような存在になってきたいと考えております。フェンシングの中島恒をどうぞよろしくお願いいたします。
■宮脇花綸選手(フェンシング)
高校生になるまでスポーツの世界をハイリスクローリターンだと思っていた私ですが、高校一年生の時に北京オリンピック男子フルーレ金メダリストの太田雄貴さんに出会ったのをきっかけに世界一を目指せる価値に気がつき、フェンシングに人生を賭ける決意をしました。そして今、世界一を目指しているからこそ確信したことが二つあります。一つ目は、才能だけで人生は決まらないということです。これは、自身よりも優れた選手達から代表権や表彰台の座を勝ち取ってきた経験から学びました。二つ目は、己を知れば全てが長所になるということです。私は背が小さかったり、何事も計画通りに進めたがる性格を逆手に取り、戦術を考え自己コントロールの要素を取り入れてきました。世界を知り、自身の強さと弱さに向き合ってきたからこそ、才能だけで人生が決まらない、己を知ればすべてが長所になると自信を持って言えるのです。そして、この二つの確信を全力で頑張る人たちを勇気づけるエネルギーに変えたいと思います。皆様の企業に入社した暁には、『正しい努力と向上心は誰にも成長をもたらす』ということを体現し、社を活気づける存在になることを期待いただければと思います。お手元のエントリーシート、競技紹介動画、今回のスピーチのどれか一つでも興味・関心を抱くものがございましたら、是非お声掛けいただければと思います。ご清聴ありがとうございました。
■森山和佳奈選手(カヌー)
私は高校2年生でユースオリンピックに出場し、世界一の選手に会ったことでオリンピックに出場するという絶対的な目標を持ちました。現在の目標はご採用いただいた会社の応援を受けて、オリンピックに出場することです。私はたくさんの人に応援される選手になるために大切にしていることがあります。それは小林正観さんの本に書かれている『そ・わ・か』の法則です。『そ』は掃除、『わ』は笑う、『か』は感謝です。この三つを毎日欠かさず行っています。まず『掃除』ですが、自分の心をすっきりさせるだけでなく、地域の方とのコミュニケーションの場でもあり、カヌーのことを知ってもらうきっかけにもなります。次に『笑う』ですが、うまくいかないことが続いていても、笑顔でいれば必ず運が味方してくれると信じていますし、私の笑顔パワーで周りにいる方々を元気づけたいという思いがあります。最後に『感謝』です。私がカヌーに取り組んでこられたのはたくさんの方々がサポートしてくださったからです。応援してくださる方への感謝の気持ちを忘れず、コツコツと努力して行きたいと思います。皆様の企業にご採用いただけましたら、この思いで競技、仕事ともに全力で取り組ませていただきます。目標に向かって突き進む私の存在が、社員の皆様の活気や感動に繋がればと思います。
プレゼンテーション終了後には、企業の皆様へ向けて、アスリートたちに一言アピールをしてもらいました。
説明会終了後には、選手と企業関係者との名刺交換、情報交換会が行われ、企業と選手がそれぞれ交流を深めました。
関連リンク
CATEGORIES & TAGS