日本オリンピック委員会は8月25日、TEAM JAPANシンボルアスリートの上野由岐子選手(ソフトボール)をゲストにお招きし、オリンピック強化指定選手に認定された選手を対象にオンラインで、「令和4年度JOCインテグリティ教育事業 第3回基礎研修プログラム」を開催しました。
本プログラムは、オリンピック強化指定選手としての資質、インテグリティ(誠実さ、真摯さ、高潔さ)を高め、自らの価値、オリンピックの価値を守る知識と手段、正しい倫理観や道徳心を有するアスリートを育成し、アスリート自らがあるべき姿に気付き、なりたい姿を描き、必要なスキルを求め習得し、自ら行動変容を起こすことを目的に実施します。第3回目のプログラムには、オリンピック強化指定選手に選ばれた55名が参加しました。
■尾縣貢JOC選手強化本部長からメッセージ
プログラム実施に先立ち、尾縣貢JOC選手強化本部長から「スポーツは決してアスリートだけでできるものではなく、様々な人の支えの上に存在します。この事実をしっかりと胸に刻み、感謝の気持ちのもと、日本を代表する選手としての行動が求められています。本研修を通じて、改めて自分の人間力と向き合っていただき、日本を代表する選手に求められているものを手に入れていただきたいと思います」と、激励のビデオメッセージが寄せられました。
続いて、オープニングセッションとして本研修の司会を担当する上田大介JOC選手強化本部インテグリティ教育ディレクターが、研修の目的やインテグリティの意味、日本代表選手団の編成方針など解説。「既に社会から信頼を得ているアスリートの言動から学び、そこからヒントを得て行動に移していくことで、皆さんの人間力が向上し社会から信頼を得ることができると思います」と呼びかけました。
■上野由岐子選手「諦めなければ、必ずゴールに辿り着ける」
次に、「Chat with Champions」と題し、2004年アテネオリンピック銅メダリスト、2008年北京オリンピック、2020年東京オリンピック金メダリストの上野由岐子選手(ソフトボール)がゲスト出演。上野選手がオリンピックを意識したタイミングやオリンピックの舞台ならではの経験を振り返り「アテネオリンピックでは『いつも通りの自分』がわからなくなってしまい、まさにオリンピックの魔物に飲まれたなと。そして、アテネオリンピックで一番悔しかったことは大事な試合で監督から名前を呼ばれなかったこと。だからこそ北京オリンピックまでの4年間は、大事な試合で任される選手になることを1番の目標に実力、結果、そして人として認めてもらえるように取り組みました。アテネオリンピックでの失敗があったからこそ、次の北京オリンピックでの金メダルだったと思っています」と語りました。さらに、オリンピックを目指す選手たちに向けて「道は一本道ではなく、壁があったり険しかったり、ガタガタだったり、いろいろな道があると思います。ただ、ゴールに辿り着けるまで諦めないことが何よりも一番の近道です。自分自身が掲げた目標を諦めさえしなければ、必ずゴールはあります。そのゴールに向かって、どんなことがあっても、どんな試練があっても諦めずに頑張ってほしいと思います」とメッセージを送りました。
続いて、アスリートディスカッションと題し、各グループに分かれて、「(1)どんなアスリートになりたいか」「(2)それをどうやって実現するか」「(3)それはなぜか」をテーマに、選手同士のディスカッションを実施しました。
最後に、クロージングセッションと題し、上田JOCディレクターが社会からの信頼を確保するための行動として、アンチドーピングへの意識向上や、成人年齢の引き下げに伴う注意点を説明。さらに、リスクマネジメントの徹底として「自分の判断基準を持つ」ことの重要さを述べた上で「いつか皆さんがその競技に憧れたように、また皆さんを通じてその競技に憧れを持つ人を生み出していかなければなりません。それがトップアスリートに求められる一つの大きな使命です。その行動は夢を与えられる行動かをしっかりと考えながら判断していただきたいと思います」とアドバイスを送りました。
■研修を終えた感想
基礎研修プログラムの終了後、上野由岐子選手に研修に参加した選手に向けてのメッセージ、また研修に参加した3名の選手に本日の学びや今後の目標を語っていただきました。
■上野由岐子選手(ソフトボール)
「目標達成の一番大事なポイントは、やはり自分自身がその夢を諦めないこと。 私自身、アテネオリンピックが終わってからの4年間がすごく苦しかったので、北京オリンピックで金メダルを首にかけてもらった時のあの感動は今でも忘れられません。 初めて自分の夢が達成された時、本当に心の底から、諦めなくてよかった、諦めなければ夢は叶うんだと感じましたし、これから目標に向かって頑張っていく選手には諦めない気持ちが大きな力になるということを知ってもらいたいと思います。各選手が抱いた夢が本気で叶えたい夢かどうかというのは、その諦めない心が必ず誘導してくれると思うので、これからを担う若い選手達には諦めない心を大事にして突き進んで欲しいと思います。
私自身もまだ一選手として、もっともっと自分を進化させていきたいと思いますし、体が動かなくなるまで突き詰めていきたいと思います。 また、これからは成功体験を含め、自分が経験してきたことを周りの選手や若手選手に伝えていく側の立場として、しっかり伝授していきたいと考えています」
■矢作大河選手(水泳/水球)
「研修会を通して、金メダリストの上野選手をはじめ、トップアスリートの方々と交流できたことは嬉しく、励みになりました。スポーツの話だけではなく、上野選手がおっしゃっていた『遊びも心の栄養素』という言葉が印象的で、オフの時間の使い方や考え方については新しい気付きがありました。 研修内のグループディスカッションでは、ダンス競技をされている方が、まず自分自身が一番楽しみ、パフォーマンスを通じていろいろな人々を勇気づけ、笑顔に繋げていきたいと話していたことが印象的でした。 今回の研修を通して、素晴らしい選手の方々とお話することができ、より一層、オリンピックに出たいという気持ちが強くなりました。いつの日か皆さんと選手村で会えるよう、日々の競技力向上に向けてもっともっと頑張っていきたいと思います」
■太村成見選手(体操/トランポリン)
「研修会の中にあったリスクマネジメントの徹底については、日本代表としての判断基準で、行動一つ一つに責任を持たなければならないと改めて感じ、身の引き締まる思いでした。 グループディスカッションでは、マイナー競技を普及させるためにはどうしたらいいか、という議題で、カーリング、アイスホッケーの選手らとディスカッションしました。競技で結果を残すことはもちろんですが、体験会をしたり、いろいろな場所でその競技の楽しさを多くの方に伝えていくことが大事だと話し合いました。
私自身、たくさんの人から応援されるような選手になりたいと思いますので、自分の競技でしっかり結果を残し、もっともっとたくさんの人に知ってもらえるよう頑張っていきたいと思います」
■小泉聡選手(カーリング)
「これまで上野選手の活躍はテレビを通して見てきましたが、あの上野選手でさえもオリンピックの魔物に飲まれたという話が印象的でとても驚きましたし、自分自身もオリンピックという舞台を体験したいという思いがますます強くなりました。
私はこれまでにいろいろな方に仕事や競技環境の面で支えていただいて、ここまで来ましたので、これからも感謝の気持ちを忘れずにやっていきたいと思います。 また、私自身、競技を続けながら、ジュニア世代の指導もしていますので、今日上野選手が仰っていたよう、どこにいても恥ずかしくないような振る舞いを心がけていきたいと思います。 そして、道は一本道じゃないけど、ゴールに辿り着くには決して諦めないことが大事だという上野選手の言葉を胸に、これからもまだまだ諦めずに上を目指していきたいと思います」
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