日本オリンピック委員会(JOC)は10月27日、オンラインで『第21回アスナビ採用企業情報交換会 社会人の育成〜アスリートの「競技現役期→引退検討期→ビジネス移行期→定着期」を考える〜』を行いました。
アスナビは、オリンピック・パラリンピックや世界選手権などを目指すトップアスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、アスリートと企業をマッチングする無料職業紹介事業です。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関などに向けて本活動の説明会を行っています。
今回の情報交換会では、37社54名が参加し、すでにアスリート採用をしている2社の取り組みと、採用企業への留意点が紹介されました。
はじめに、中森康弘JOC強化第二部部長が東京2020オリンピック競技大会、東京2020パラリンピック競技大会の開催に関する感謝を述べた後、「この経験をご自分の企業、社員だけではなくアスナビファミリーとして、今日お集まりいただいた皆様に共有して今後の活動に繋げていただければと思います」と述べました。
続いて、中村裕樹JOCキャリアアカデミー事業ディレクターは2021年度のアスナビ意識調査の結果から、選手が入社後に抱えている業務の不安などの課題を共有。「仕事のスキルが身に着けられているのか不安」「社会人としての成長が出来ているのか不安」「仕事のもらい方が難しい」という結果から、「現在・将来に向けて不安を持つのは当然。不安を放置せず、どのような対策・計画・行動を取るのかが未来のビジネスパーソンを創るのではないかと思います」と述べました。
■採用企業の選手活用事例紹介
次に、採用企業の選手活用事例として、2つの企業が発表を行いました。はじめに、競泳の渡邊一輝選手、矢島優也選手、自転車(BMX)の松下巽選手、スケート・ショートトラックの神長汐音選手、小池克典選手を採用した全日空商事株式会社より國分裕之取締役副社長が、トップアスリートを社員として採用する理由、現役中のアスリート社員の育成、引退後の業務について紹介。採用を後押しした背景には、「トップアスリートが、ANAグループの行動指針である『努力・挑戦』を体現している存在だということも背景になっている」と語りました。また、アスリート社員が行う社会貢献活動や、ANAグループ内社員交流、健康経営推進の取り組みなどを説明しました。そして、「アスリート社員には今所属している会社、社員を良く知ってもらい、そのための工夫を会社として仕掛けている。その活動によって、アスリート社員の存在がグループ会社、社員に知られるということにつながり、将来への基盤になる」と述べました。
続いて、陸上競技(400mハードル)の井上駆選手と、陸上競技(棒高跳)の石川拓磨選手を2020年4月に採用している株式会社東京海上日動キャリアサービスの市原寛明事業戦略部部長が現在の担当業務や育成・支援内容について説明。また、2人の自己認識におけるヒアリング結果を発表し、「現役中に少しずつでも社会人としての能力を向上させる取り組みを行うべき」という気づきがあったと紹介しました。加えて、「2人にとって会社が成長フィールドとなるように指導していきたい」と語りました。そして、田崎博道代表取締役社長が、アスリートを特別に扱うことはないという前提のもと、「トップアスリートが自分の最高を引き出すということは社会で活躍する力と全く同等であり、徐々に仕事に慣れていけるような仕組みを用意していきたい」と述べました。
■JOCキャリアアカデミー事業からの情報提供
続いて、JOCキャリアアカデミー事業の久野孝男プランニングディレクターが、引退後も同じ企業で働いている元アスリート同士の交流会の「アスナビアルムナイ(OBOG会)」について紹介。10月21日にオンラインで開催された第1回交流会では、先輩アスリート社員の講話や、互いの近況や現在の活動報告が行われ、アスリート社員から「現役中の競技活動費に300万円ほどかかっていたが、引退して営業活動をする中で300万円稼ぐことがすごく大変だということが初めてわかった。現役中にそのようなことを知っておくことは大事」という意見があったことが共有されました。また、アルムナイの目指すところとして、トップアスリートの経験を活かした人材の輩出であることも紹介されました。
最後の情報交換会では、「社会人としての育成について、工夫していること(仕事の与え方など)や課題は?」というテーマで情報共有が行われました。
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