日本オリンピック委員会(JOC)は3月7日、味の素ナショナルトレーニングセンター(味の素トレセン)で「令和2年度JOCエリートアカデミー修了式」を開催しました。JOCエリートアカデミーは、将来オリンピックをはじめとする国際競技大会で活躍できる選手の育成を目標に開校し、今年度で13年目。各競技団体から推薦された有望なジュニア選手を集め、味の素トレセンを拠点にして集中的な指導を行っており、令和2年度は7競技28名の選手が所属しています。
今年度は6競技9名が修了を迎えました。
最初に平野一成JOCエリートアカデミーディレクターによる修了生紹介の後、福井烈JOC専務理事が祝辞のあいさつに立ち、「修了生の皆さん、JOCエリートアカデミー修了おめでとうございます。ぜひ、JOCエリートアカデミーで学んだことを土台として、自信を持って次のステージに進んでください。そして、競技力だけでなく、JOCエリートアカデミーで学んだ『人間力なくして競技力向上なし』という言葉を心に刻んでいただき、勝利を大切にしつつも、周りの方々から愛され、尊敬されるアスリートとなって、その先にある人生の勝利者を目指していただきたいと思います」と修了生を祝福。そして、スポーツは決してアスリートだけで成り立つものではなく、多くの人の支えがあってこそ存在するものであることを伝えると、「この新型コロナウイルス禍で苦しんだ経験は、これからの皆さんの長い人生において必ず意味を持つものとなると思います。それぞれが今やりたいこと、やれること、やらなければいけないことを深く考えて、1日1日を大切にしてください」と激励の言葉を送りました。
次に、福井JOC専務理事が修了生9名に修了証を授与しました。
続いて、JOCエリートアカデミー在籍生を代表して瀬川咲新さん(ボート)が登壇。卒業生一人ひとりに向けて、一緒に過ごした日々の思い出や感謝の言葉を語ると、「これからの生活に皆さんがいなくなると考えると、とても寂しいですが、私たちはこれから先、皆さんがそれぞれの道に進んでいただくことを心から応援しています。そして、またいつか会える日を楽しみにしています。先輩方はいつまでも、いつまでも私たちの憧れの存在です。これまで本当にありがとうございました。本日は修了おめでとうございます」と送別の言葉を述べました。
次に修了生が一人ずつ決意表明を行い、JOCエリートアカデミーで過ごした日々を振り返りながら、お世話になった方への感謝と新たな道へと進む意気込みを語りました。
■尾﨑野乃香(おざき・ののか)
競技:レスリング
学校:帝京高等学校
進路:慶應義塾大学総合政策学部
主な競技成績:2019年世界カデットレスリング選手権女子61kg級 優勝など
「私は3年前、JOCエリートアカデミーに入校しました。この3年間で私は心も体も成長し、強くなったと思います。毎日のつらい練習でも笑顔を忘れずに耐え抜いたことは、私にとって一番の自信となっています。また、いつも一番に応援してくれ、一番の理解者である両親にも感謝するとともに、これからさらに成長し、活躍する姿を見届けてほしいと思います。私には2024年パリオリンピックに出場し、優勝するという最大の目標があります。ここから先、どんなに高い壁や試練が立ちはだかっても、絶対に乗り越え、自分で選んだ道を突き進みます。JOCエリートアカデミーで得たことを糧に、私はさらに飛躍していきます。3年間、本当にありがとうございました」
■長﨑美柚(ながさき・みゆう)
競技:卓球
学校:大原学園高等学校
進路:競技に専念
主な競技成績:2019年世界ジュニア卓球選手権女子シングルス 優勝など
「私はこの6年間で自主性と忍耐力を学ぶことができました。時には間違った判断や逃げてしまったこともありました。しかし、ここで出会えた仲間たちの存在が大きく、たくさんの刺激を受け、私自身、成長することができたと思います。ここで得た自主性と忍耐力を生かし、一人の選手として、そして一人の人間として、強く、たくましく、自分の夢に向かって、これからも成長し続けていきたいです。6年間、お世話になりました。本当にありがとうございました」
■安田舞(やすだ・まい)
競技:水泳/飛込
学校:帝京高等学校
進路:日本体育大学体育学部
主な競技成績:2018年世界ジュニア飛込選手権女子シンクロ3m 3位など
「東京オリンピックに出場するという目標を掲げ、ここで3年間頑張ってきましたが、新型コロナウイルスの影響でオリンピック、そしてワールドカップも延期となってしまい、今も目標に向けて日々練習を続けています。正直、3年前の私はオリンピックどころか、ワールドカップの代表にすらなれるなんて思っていなくて、競技に対する覚悟が本当に弱かったと思います。でも、ストイックに練習し世界で活躍する仲間と一緒に練習する中で影響をもらい、だんだんと貪欲に競技や目標に向き合うようになりました。私はこれから日本体育大学に進学し、4月にはワールドカップを控えています。まだまだ未熟な私ですが、これからもどうか応援よろしくお願いします」
■佐藤琳(さとう・りん)
競技:ライフル射撃
学校:成立学園高等学校
進路:早稲田大学スポーツ科学部
主な競技成績:2018年世界ライフル射撃選手権(ジュニアの部) 出場など
「修了後についてコーチと話し合う中で、自主性と主体性について考えさせられました。ここでの環境は与えられるものが多く、とても恵まれた環境だと思います。その中で自主性を持って練習に取り組んでいました。しかし、恵まれているが故に、十分に主体性を持つことができなかったと感じました。新しい生活では、自分で決められることが増え、その分の責任もあります。これから待っている新しい環境で競技力を向上させていくためには、自分自身をマネジメントしていく力がよりいっそう大切になってくると思います。競技も、競技以外のことにも主体性を持って、学び続けていきます」
■高木葵(たかぎ・あおい)
競技:ライフル射撃
学校:成立学園高等学校
進路:中央大学文学部
主な競技成績:2018年第3回ユースオリンピック競技大会 出場など
「3年前、JOCエリートアカデミーに入校して以来、想像を大きく超える様々な経験をしてきました。特に、高校3年度はキャプテンを務めさせていただいたことで視野が広がり、それぞれの思考や能力の多様性というものを実感することができました。私自身もこの学びを生かし、これからの時間を過ごしていきたいです。4月より私は中央大学文学部で心理学を専攻しながら、競技を続けていきます。今後の大学生活を通して、競技力を向上させるだけでなく、自分にできる社会貢献の形を見つけたいと思っています。時間がかかったとしても、その社会貢献をもってお世話になった方々への恩返しをしたいと考えています」
■中條扇之介(なかじょう・せんのすけ)
競技:ボート
学校:成立学園高等学校
進路:明治大学商学部
主な競技成績:2019年世界ジュニアボート選手権 出場など
「私は3年前、親元を離れ、ここJOCエリートアカデミーに入校しました。競技はもちろん、普段の寮生活やたくさんの行事を通し、とても成長できたと感じています。競技では国内外の試合を多く経験させていただきました。私は勝ちも負けも未来の自分につながる過程だと思っています。負けた後の行動が自分を強くしてくれると、3年間を通して感じました。オリンピックを目指していく上でその考えを忘れず、強い気持ちを持ち、困難にも屈せず頑張っていきたいと思います。私は春から明治大学に進学し、競技を続けます。そして、将来は国際貢献ができる人材になりたいと考えています。そう考えるようになったのもボートを通してたくさんの国に行き、ボートに出会えたからだと思っています」
■上野美歩(うえの・みほ)
競技:ボート
学校:成立学園高等学校
進路:中央大学法学部
主な競技成績:2019年世界ジュニアボート選手権 出場など
「この3年間、競技、生活をする上で多くの方々に支えられ、競技に打ち込むことができました。私は入校式の際に『本気になれば自分が変わる。本気になればすべてが変わる』という、松岡修造さんの言葉を大切にしたいと話しました。何事も本気で取り組んだことで、自分に多くの変化がありました。ここでは競技力だけではなく、人間力も大切だということを学びました。大学へ行っても、競技力だけではなく人間力も大切にできるアスリートとなっていきたいです。ここで多くのことを学び、成長できたことを感謝し、私の目標であるオリンピックでメダルを獲得することを目指します」
■渡邉麻央(わたなべ・まお)
競技:アーチェリー
学校:東京都立足立新田高等学校
進路:日本体育大学体育学部
主な競技成績:2019年世界ユースアーチェリー選手権 出場など
「私は中学3年生の時にJOCエリートアカデミーに入校し、たくさんの人に出会い、たくさんのことを学ぶことができました。監督やコーチに出会い、試合やトップ選手との交流など、色々な経験をすることができてとても幸せでした。また、同じ目標に向かう仲間がいたから、きつい練習にも耐えることができたと思います。本当にありがとう。進学後もアカデミー生活で学んだ競技力、人間力、生活力をさらに伸ばし、もっともっと成長していきたいと思います」
■園田稚(そのだ・わか)
競技:アーチェリー
学校:東京都立足立新田高等学校
進路:早稲田大学スポーツ科学部
主な競技成績:2019年世界ユースアーチェリー選手権女子個人 2位など
「私は中学生3年生の時にJOCエリートアカデミーに入り、4年間をここで過ごしました。最初は親元を離れ、すごく不安でした。いざ生活をしてみると、私は朝から夜までアーチェリーをしたり、栄養バランスを考えて食事をしたりしたことがありませんでした。正直、私が来る場所ではなかったと思いました。練習でも監督やコーチに申し訳なく、悔しい気持ちでいっぱいでした。それでも、私がここにいるのは仲間がいたからです。ここは私の青春の場所です。4月から早稲田大学に進学します。ここで学んだことを生かし、学校、アーチェリー、生活をより充実させていきたいと思います」
最後に、星野一朗JOC理事が閉式のあいさつに立ち、「修了生の皆さん、本当にお疲れ様でした。今日は修了式でしたが、皆さんの活躍はむしろこれからで、今日からがスタートなんだと思います。これからは皆さん自身が自分で考え、自分で判断し、そして自分で行動していくということが増えていくと思います。決意表明にあった皆さんのこれからの覚悟、そして責任、これらを大切にしてください」とメッセージ。そして、人は困難を乗り越えることで成長するという意味の『艱難汝を玉にす』という言葉を修了生に送った上で「これからさらに色々な困難があるかもしれません。でも、その時こそ失敗を恐れず、未来に向かって進んでいただければと思います」と述べ、修了式を締めくくりました。
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