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2020.12.25 その他活動

「第16回JOCスポーツと環境・地域セミナー 兼 第1回JSPOスポーツと環境フォーラム」をオンラインで開催

「第16回JOCスポーツと環境・地域セミナー 兼 第1回JSPOスポーツと環境フォーラム」をオンラインで開催
「第16回JOCスポーツと環境・地域セミナー」をオンラインで開催(写真:フォート・キシモト)

 日本オリンピック委員会(JOC)は12月12日、オンラインで「第16回JOCスポーツと環境・地域セミナー 兼 第1回JSPOスポーツと環境フォーラム」を開催しました。

 JOCは平成13年度からスポーツ環境専門部会を設置し、スポーツと環境に係わる啓発・実践活動を推進してきた。その活動の1つとして例年、JOCパートナー都市で開催している本事業を、令和2年度は日本スポーツ協会(JSPO)、東京都とともに開催。スポーツ界一体となって環境保全の必要性について改めて考え、どのように実践に移していくかを学ぶことを目的にオンラインで実施し、東京都のスポーツ関係者、JSPO公認スポーツ指導者など336名が参加しました。

「第16回JOCスポーツと環境・地域セミナー 兼 第1回JSPOスポーツと環境フォーラム」をオンラインで開催
野端啓夫JOCスポーツ環境専門部会長(写真:フォート・キシモト)
「第16回JOCスポーツと環境・地域セミナー 兼 第1回JSPOスポーツと環境フォーラム」をオンラインで開催
延與桂東京都オリンピック・パラリンピック準備局次長(写真:フォート・キシモト)

 はじめに、主催者を代表して野端啓夫JOCスポーツ環境専門部会長が開会の挨拶に立ち、地球温暖化による近年の異常気象が、日常生活だけではなく夏季・冬季スポーツに大きな影響を与えている現状を説明。それらの課題を踏まえて「日常生活でできる小さな環境改善を積み重ねる努力を行っていく必要があるのではないでしょうか」と述べ、「本日は登壇者、参加者の皆さまとともに、スポーツと環境の関わり、そしてスポーツを通した環境の取り組みの観点から、スポーツに身を置く私たちの果たすべき役割と使命を明確にして、豊かな社会の実現を目指した環境保全活動を実践するための方策を模索したいと思います」と、本事業の目的を説明しました。

 続いて、東京都を代表して挨拶に立った延與桂東京都オリンピック・パラリンピック準備局次長は、東京2020大会のコンセプトである『Be better, together /より良い未来へ、ともに進もう。』を挙げて「東京都は持続可能な社会の実現に向け、課題解決のモデルを国内外に示していきたいと考えています」と話すと、試合会場に再生可能エネルギーを積極的に導入するなど東京2020大会に向けた東京都の具体的な環境問題に対する取り組み事例を紹介。また、環境問題と合わせて「新型コロナウイルス感染症対策に取り組み、安心・安全な大会を開催できるよう、国、東京2020大会組織委員会と連携して万全な準備を進めております」と述べました。

「第16回JOCスポーツと環境・地域セミナー 兼 第1回JSPOスポーツと環境フォーラム」をオンラインで開催
東海大学准教授でJOCスポーツ環境専門部会の大津克哉副部会長(写真:フォート・キシモト)

 全2部で構成されたプログラムを始める前に、コーディネーターを務める東海大学准教授でJOCスポーツ環境専門部会の大津克哉副部会長から、趣旨説明を含めたオープニングレクチャーを実施。スポーツと環境問題を考えるとき、スポーツは環境から『影響を受ける』被害者の側面がある一方、スポーツが環境に『影響を与える』加害者の側面があるという、2つの側面を認識することが重要だと説明。そのため、大津副部会長は「スポーツの現場での環境保全は必須です。イベントを主催する競技団体の社会的責任として、環境問題に対して最大限の取り組みが求められるようになっています。スポーツが環境と調和して発展していくためには、スポーツ界全体で取り組んでいく姿勢が求められます」と強調しました。

また、スポーツ愛好家が個人的にできる取り組みとして日常生活における「3つのR(リデュース、リユース、リサイクル)」の実行を挙げた大津副部会長は、一方でアスリートや指導者に対してはロールモデルとしての役割を担う必要があると説明。「特にアスリートは自らが手本になり、ファンの方たちに環境メッセージを発信し、環境の大切さを伝えていくことが重要です。もちろんコーチ、指導者におかれても、技術的な向上を指導するだけでなくて、教育者としての役割が求められます」と、環境問題への積極的な取り組みを呼びかけました。

「第16回JOCスポーツと環境・地域セミナー 兼 第1回JSPOスポーツと環境フォーラム」をオンラインで開催
石塚創也JSPOスポーツ科学研究室研究員(写真:フォート・キシモト)
「第16回JOCスポーツと環境・地域セミナー 兼 第1回JSPOスポーツと環境フォーラム」をオンラインで開催
神山一東京都環境局地球環境エネルギー部次世代エネルギー推進課長(写真:フォート・キシモト)

 続いて、第1部のプログラムである2つの基調講演が、JSPOと東京都により行われました。
 はじめに、石塚創也JSPOスポーツ科学研究室研究員が「スポーツの環境史について」と題し、オリンピックにおける環境問題として初めて批判が挙がった1932年レークプラシッド冬季大会、環境保護対策の初事例となった1972年札幌冬季大会、その後も冬季大会を中心に相次いだ抗議運動などとともに、国際オリンピック委員会(IOC)が行ってきた環境保護活動の歴史を紹介した。環境に関する内容が初めてオリンピック憲章に記載された1991年以降、IOCはオリンピック・ムーブメントの3つの柱として「スポーツ」「文化」とともに「環境」を掲げ(1994年)、「第1回スポーツと環境世界会議」の開催(1995年)、「スポーツと環境・競技別ガイドブック」の発行(2008年)、「オリンピック・アジェンダ2020」(2014年)でさらに踏み込んだ環境保護活動を提言したほか、各オリンピック大会で様々な対策が実践されており、その事例を石塚研究員が解説。これらを踏まえて今後スポーツ界がすべきこととして、国連環境計画(UNEP)などの専門機関とさらなる連携強化・情報共有を行うほか、CO2排出量や資源利用を最小限に努める事務局運営、カーボン・オフセットの導入などを挙げる一方、個人に対しては大津副部会長と同じく「3R」を心がけることが重要だと述べるとともに、このような事業をきっかけとして環境問題について学び、周りの人たちと共有することが大切だと伝えました。
 続いて神山一東京都環境局地球環境エネルギー部次世代エネルギー推進課長から、「ゼロエミッション東京に向けた取組について」と題し、2050年までにCO2排出実質ゼロを目指す「ゼロエミッション東京」に関して、戦略の3つの視点や2050年までの道筋、具体的な取り組みを進める6つの分野(セクター)・14政策とそれぞれのロードマップなどを説明。また、すでに東京都が実施している取り組みとして、特に東京2020大会に関しては会場施設への再生可能エネルギー設備の設置とその利用、カーボン・オフセットの導入、東京2020大会を契機とした水素エネルギーの活用、東京2020大会における暑さ対策とテストイベントにおける実践例などを紹介しました。
 最後にゼロエミッション東京の実現に向けたまとめとして、神山課長は「我々も日々悩みながら取り組んでいる課題であり、東京都だけでは実現できるものではありません。スポーツ関係者の皆さんにもこの問題についてぜひ共感していただければと思います。スポーツの発信する力は非常に大きなものだと思っていますので、ご一緒に取り組みを進めさせていただければありがたいです」と呼びかけました。

「第16回JOCスポーツと環境・地域セミナー 兼 第1回JSPOスポーツと環境フォーラム」をオンラインで開催
上田藍選手はリモートで参加(写真:フォート・キシモト)
「第16回JOCスポーツと環境・地域セミナー 兼 第1回JSPOスポーツと環境フォーラム」をオンラインで開催
宮下純一さん(写真:フォート・キシモト)

■スポーツと環境についてオリンピアンがディスカッション

 第2部のプログラムではパネルディスカッションが行われ、オリンピアンでJOCスポーツ環境専門部会員の宮下純一氏(水泳/競泳)、同じくオリンピアンでJOCスポーツ環境専門部会員の上田藍選手(トライアスロン)、第1部で講演を行った石塚研究員、神山課長が参加。大津副部会長の進行のもと、「スポーツと環境の関わり」「未来に向けて今自分たちができること」の2つのテーマについて、オリンピックや競技活動を通しての経験談を交えながら議論を深めました。
 まず「スポーツと環境の関わり」に関して、自然環境と密接に関係するトライアスロンのトップアスリートである上田選手は、エリート競技者も参加する「世界トライアスロンシリーズ横浜大会」と、小学生から気軽に参加できる「横浜シーサイドトライアスロン大会」の2大会で、海底でCO2を吸収するブルーカーボンに注目した「横浜ブルーカーボン・オフセット制度」を実施している例を紹介。実際に参加した経験として上田選手は「私自身、レースに参加するときにはビーチのゴミ拾いや、自分で出したゴミの分別などクリーンにしていくことを心がけていますので、横浜大会に出場するたびに改めて目の前の環境問題を実感しています」と感想を述べました。
 一方、室内競技である競泳競技のオリンピアンである宮下氏は「恥ずかしながら、現役時代は環境問題について考えていなかった」と振り返り、競泳のジュニア選手に環境問題について話をする機会がある現在も「子供たちは自分のことというよりも別の競技の話という意識。これからのスポーツと環境の関わりと捉えている選手が少ない。一人ひとりの意識を改革しないと大きな力にはならないと感じています」と課題を挙げた。そのような現状と新型コロナウイルス禍での経験を踏まえ「今年はコロナの影響もあり、当たり前にスポーツに取り組むことができる喜びを子供たちがすごく感じた2020年だったと思います」と述べると、コーチ・指導者に向けて「ウイルスだけではなく、環境破壊によってもスポーツができなくなってしまう、という考えを伝えていけば、これまでより更に子供たちに伝わるのではないかと思います」とアドバイスを送りました。
 続いて上田選手が「未来に向けて今自分たちができること」に関して、「今はエコバッグ、マイボトルを使っていますが、私自身はこの2つぐらいしか日常生活に落とし込めていません。これを機にもう一度勉強し直して、身近にいるチームメートや一緒にトライアスロンをしている愛好者の方たちとゴミ拾いをするなど、小さなことからコツコツとやっていきたいと思います」と話し、小さなことから続けていくことが大切だと語った宮下氏は「選手の意識が根本から変わってくれば、自然に行動ができると思います。小さい時から指導者の方が根気強く、熱量をもって伝えていくことが大事なのではないかと思います」と、改めてジュニア選手に対する指導者の発信が重要であることを強調しました。
 また、宮下氏は初めて本事業がオンラインでの開催となったことに触れ、「この形式ですと、色々な場所から参加できるのでいいなと思いました。やはり、たくさんの方が考えるきっかけの場になってほしいですし、次回はどのような形になるかは分かりませんが、特に自然環境と関係のある現役アスリートの方々をもっと呼んで、切実な声をもっと聞いてみたいと思いました。横のつながり、やり取りができたりすると、気が付かなかったところも見えてくるのではと思います」と総括。これを受けて、上田選手も「皆さんの活動や考えを聞くことで、改めて私も環境のために考えることの大切さを感じさせてもらいましたし、しっかりと伝えていく存在になっていかないといけないという自覚も生まれました。まず身近な方から伝えていって、そこから人数、知識を増やして、環境にやさしい活動をしてもらえるような流れを作っていくようにしていきたいと思います」と今後の活動への抱負を述べました。

 最後にJOCスポーツ環境専門部会からのメッセージとして、大津副部会長より「スポーツが楽しめる環境を10年後、100年後の子供たちに残すために、まずは環境に対して興味を持つこと。そして、自分のできることから行動すること。次世代、また次の世代に今の環境や、もっといい環境を正しくバトンタッチしていけるように、スポーツ界に関わる皆さんが一緒になって取り組んでまいりましょう」と伝え、本事業を締めくくりました。

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