日本オリンピック委員会(JOC)は11月26日、トップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」の説明会をオンライン形式により実施しました。
アスナビは、アスリートの生活環境を安定させ、競技活動に専念できる環境を整えるために、アスリートと企業をマッチングする無料職業紹介事業です。年間を通じて「説明会」を複数回実施し、企業に対してトップアスリートの就職支援を呼びかけています。2010年から各地域の経済団体、教育関係機関に向けて本活動の説明会を行い、これまでに204社/団体、325名(2020年11月26日時点)の採用が決まりました。
今回の説明会には12社19名が参加しました。
最初に、主催者を代表して星野一朗JOC理事が挨拶し、「アスリートがひたむきに頑張る姿、困難に打ち勝ち壁を乗り越えていく姿は、御社の皆さまにも勇気や感動を感じていただけているものではないかと思っています。毎日の練習の中で課題を見つけ、克服し、昨日の自分に勝つために努力を惜しまない彼らアスリートの経験や知見は、採用された後には必ず御社のお役に立つものであると確信しております。ぜひ彼らの背中を押していただき、我々といっしょにその可能性を高めていただくようお願い申し上げます」と、参加企業に向けてアスリート採用を呼びかけました。
続いて、中村裕樹JOCキャリアアカデミー事業ディレクターが、動画を用い、アスナビの概要と、過去にアスナビを通じて採用されたアスリートと採用企業の担当者のコメントを紹介。さらに資料をもとに夏季・冬季競技それぞれの採用人数、採用された競技などを説明しました。
次に、オリンピアンからの応援メッセージとして、ビーチバレーで2008年北京オリンピック、12年ロンドンオリンピックに出場した朝日健太郎さんがビデオメッセージを寄せました。
朝日さん自身も2011年にアスナビを活用して企業に就職したアスリートの一人。「当時、現役選手だった私が資金面で非常に苦労している中、おかげさまで企業に籍を置くことができました。最後のオリンピックまでの1年間、絶大なるバックアップをいただきましてオリンピックに出場することができました」と感謝の言葉を述べるとともに、オリンピック代表決定戦には多くの社員が応援に来てくれたことや、仕事を通じて社会性や社会との接点を学んだことなど、アスリート社員時代の思い出を振り返りました。
それらの経験から「スポーツを通じたネットワークは本当に価値があると思いますし、アスナビがスポーツの新たな価値を生み出しているのではないかと思います」と述べると、「新型コロナウイルスによる社会状況はまだまだ厳しいものがあると思いますが、アスリートたちの可能性は無限大です。アスリートの皆さん、今日は自信を持って企業の皆さんにPRして、素晴らしいご縁をここでいただければと思います。そして、企業の皆さま、どうか未来のアスリートのために力を貸してください」と就職を希望するアスリート、参加企業の双方に呼びかけました。
最後に、就職希望アスリート7名がそれぞれの場所からリモートで、または事前に収録したビデオメッセージでプレゼンテーションを実施。スピーチをはじめ、映像での競技紹介などで自己アピールしました。
■長谷川敏裕選手(レスリング)
「私は小学校1年生からレスリングを始め、小学校、中学校、高校、大学と各カテゴリーの全国大会で優勝でき、また、世界でもアジア選手権3位、アンダー23世界選手権1位という結果を残すことができました。しかし、昨年行われた東京オリンピック国内予選で敗れ、このままレスリングを続けていくか悩んだ時期がありましたが、昔の友人や恩師に会うことで、今まで色々な人たちに応援されてきたということに気づくことができました。そして、自分のためだけではなく、応援してくれた人たちのためにも頑張ろうと思えるようになり、この思いを胸に2023年、2024年の世界選手権で必ず優勝することを目標に頑張っていきます。そして、その目標を達成した先には必ずパリオリンピックのメダルが見えてくると確信しております。ご採用いただきましたら、社員の一員として競技活動ができることに感謝し、周りの社員の皆さまに応援されるような人物になれるように努めていきます」
■古旗崇裕選手(陸上競技)
「高校1年生からハンマー投を始めて、今年で9年目になります。先日行われました日本選手権大会におきまして70m23という記録を投げ、2位に入賞することができました。この結果から、自分の成長を強く実感し、日本のトップを狙うことができるという自信を持つことができました。採用していただけましたら、目標達成意欲や成長意欲を高く持ち、成果を挙げるために諦めず、根気強く挑戦する姿勢を崩しません。そして、今まで自身が培ってきた能力や経験を生かして、企業に貢献できるように努力していきたいと思っております。私は今の自分よりもさらに成長すれば、オリンピック出場も可能であると信じ、日々練習に励んでおります。幼いころからの夢、今の私にとってはそれが一番の原動力になっています。そのためには誰にも負けない粘り強さで、仕事と競技を両立し、社内外の誰からも応援される人間になれるよう日々努力してまいります」
■石関玲於選手(トライアスロン)
「私の人生のテーマは、最後まで諦めず全力で挑戦することです。トライアスロンはとても過酷な競技ですが、どんな状況でも諦めず、最後まで全力で挑戦することで、ゴールした時の達成感は何事にも代えられないものとなっています。また、トライアスロンを通じ、多くの人と出会い、競技力だけでなく、人として己を磨き続けています。そんな私の目標はパリオリンピック出場です。コロナウイルスの影響で先が見えない中、私が夢に向かって挑戦する姿で、皆さんに元気や勇気や希望を持っていただける、そんな選手を目指します。また、競技引退後はトライアスロンに注いだ情熱を業務に生かし、チームを導いていく存在になりたいと思っております」
■渡部晃大朗選手(トライアスロン)
「私は今年の2月まで企業に所属しながら競技活動を行うアスリート社員として活動してきました。しかしながら、新型コロナウイルスの影響もあり、やむなく会社を離れることとなり、現在はアルバイトをしながら生活費、遠征費の工面をしつつ、必死に空いた時間でトレーニングをして、エリート強化指定選手として活動しています。私は競技を通じ、試合に向けて入念な計画・準備をすること、予想外のアクシデントにも臨機応変に対応し迅速な意思決定を下すこと、そして、どんな状況でも最後まで諦めずにやり抜くことを学びました。私はこの経験を生かして、仕事においても何事にも積極的に取り組み、最後までやり切り成果を出すこと、また、競技活動を通じて社員の方々の士気を高め、企業のイメージアップにもつなげられると確信しております」
■鈴木瑠奈選手(スキー/スノーボード)
「17歳でスノーボードを始め、20歳にしてプロ資格を取得しました。昨シーズンは国内ポイントランキング3位まで上り詰め、日本代表入り初年度にしてワールドカップ選考基準をクリアしました。現在はワールドカップ、およびオリンピック出場を目標に活動中です。競技歴7年の過程において一番に学んだこととは『一人では何もできない、人の力に助けられて生きている』ということです。スノーボード競技で培った経験、および知識を生かし、今後は社会にも貢献したいと思っております。日本社会から世界まで全てのエリアにおいて通用し、尊敬されるハイレベルな人間になることが社会人としての目標です。企業の皆さまにとって、今までなかった価値観や思考を与えられる人材になりたいです。小さいころから培ったバイリンガルとしてのバックグラウンドを利用し、他の日本人選手には負けない積極性、行動力で世界へ挑戦しています。どうぞご検討いただけますよう、よろしくお願いいたします」
■戸篠星願選手(パラ水泳)
「自由形と背泳ぎを専門としています。私は生まれつき脳性麻痺があり、左側に軽い麻痺があります。4歳の時に、母が働いていたスイミングクラブでリハビリの一環として水泳を始め、小学生のときに競技者として水泳を始めました。現在、私はオリンピックメダリストである松田丈志さんを指導された久世由美子コーチのもとでトレーニングをしています。東京パラリンピックには個人種目とリレー種目で出場を目指しており、来年の選考会で良い結果を出せるよう努力を惜しまず、ハードなトレーニングを行っています。私は競技を通して、最後まで諦めないという気持ちを身につけました。そして、挨拶や礼儀正しさを、競技を行う上で最も大切にしています。私は『自分に限界を作るな』という言葉を常に心に置いて過ごしており、就職しても自分に限界を作らずに仕事などを行っていきたいと思います。そして、パラ水泳をもっと多くの方に知っていただきたいと考えています」
■赤羽根康太選手(水泳/競泳)
「私は高校3年生の時にインターハイで準優勝し、オリンピックを意識し始めました。大学2年生のときに過去最大のスランプに陥りましたが、自分と向き合うことでオリンピック出場という明確な目標を改めて認識し、1つずつ着実に課題を乗り越えた結果、大学3年生時に出場したほとんどの試合で自己ベストを更新しました。さらに今年、新型コロナウイルスの影響でオリンピック選考会の中止が決定し、周りの選手が落胆する中でも、目標までの練習計画の立て直しを行い、常に課題を意識しながら地道に努力を重ねた結果、先月行われた日本学生選手権で日本ランキング3位の記録を出し、東京オリンピックに向けて着実に進歩しています。来年の選考会でオリンピック代表権を勝ち取るために、絶対に成し遂げるという強い気持ちを持ち、これからも自分の課題と向き合いながら、日々成長していきます。私を応援してくださる企業の方々には、その結果と姿勢が活力となり、ブランドイメージの向上に貢献できる存在になるとお約束します。これまでの困難を乗り越えてきたように、コロナ禍という逆境も皆さまとともに乗り越えていきたいです」
説明会終了後には、選手と企業関係者との情報交換会がオンラインで行われ、企業と選手がそれぞれ交流を深めました。
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